第36話 : 天より響く銃声
アラタの隠れ家を出たエファは、砂の街を一人歩いていた。
「……みんなをどうやって見つければいいの……。
ねえリン、どうしてドリーム・シティなの?
行き先は他にもたくさんあったはずでしょ?」
エファのフードの中で丸まっていたリンが、間延びした声で答える。
「それはですねぇ〜……
ドリーム・デザートのどこかに、センサーが存在するからですぅ……」
エファはその場で立ち止まった。
「……センサー?
それって、監視官のこと?」
「せいかぁ〜いです。
正確には、人口管理用コントローラー。
この群島全体の“人の数”を数える存在ですぅ」
その瞬間、エファの体が小刻みに震え始めた。
「……なに……?
急に……力が……」
足元がふらつく。
「エファさん……?
様子がおかしいです……」
リンは彼女の瞳を見て息を呑んだ。
「……瞳孔が……開いてる……」
リンは必死に転がり、ハーヴィのいる方へ向かおうとした。
だが――
「おい、レン。
見ろよ、倒れてるぞ。ずいぶん可愛いお嬢ちゃんだ」
「本当だな、マル。
相当疲れてるみたいだ。
……長い間、眠ってない顔だ」
レンはエファの髪を掴み、乱暴に持ち上げた。
「若そうだな」
「関係ねぇ」
リンが叫ぶ。
「やめてくださぁぁぁい!!」
次の瞬間、リンは蹴り飛ばされ、砂の上を転がった。
「消えろ、鉄クズ」
二人は乗り物へ向かう。
「……本当に綺麗だな」
――その時。
影が落ちた。
鈍い衝撃音と共に、マルの頭部に何かが叩きつけられる。
「ぐあっ!!」
「な、なにが――」
言葉を言い終える前に、レンの顎に強烈な一撃が叩き込まれた。
二人は吹き飛び、砂の上に倒れる。
続けて、何者かが砂を一振りする。
二人は即座に眠りに落ちた。
エファの体が地面に崩れ落ちる。
その人物は静かに近づいた。
リンが顔を上げ、月明かりに照らされた姿を見て叫ぶ。
「……ア、アラタ!?!?」
アラタは静かに言った。
「……約束する。
俺たちは、生きる」
そう言って、エファにそっと夢砂を振りかけた。
彼女の表情が穏やかになり、深い眠りへ落ちる。
「リン」
「……はい?」
「君たちは、どこへ向かうつもりだった?」
「……センサーのもと、です……」
アラタはエファとリンを持ち上げ、二人の乗り物――砂漠用の獣に乗せた。
そして自らも跨る。
「案内してくれ」
低く、落ち着いた声だった。
「……街の外へ……」
獣は勢いよく駆け出した。
最初は戸惑っていたアラタも、すぐに感覚を掴む。
「……案外、簡単だな。
ラクダってやつは」
だが、獣は一軒の店の前で急停止した。
ハーヴィが働く店だった。
エファをそっと降ろし、再び走り出す。
ハーヴィが異変に気づき、駆け寄る。
アラタは振り返り、呟いた。
「……彼女は、君のそばの方が安全だ」
そしてリンを見る。
「君の名は?」
「……モデル……いえ、
リン、です」
「そうか」
夜の砂漠は冷たく、静かだった。
獣の足音だけが世界を刻む。
進み続け、幾つもの砂丘を越えた。
まるで永遠が続くかのような夜――
その時。
巨大な砂嵐が立ち上がった。
銃声のような、凄まじい轟音が空を裂く。
「……っ!?」
アラタは目を細める。
嵐の中心――
そこに、巨大な影があった。
「……あれは……鳥……?」
リンが震える声で叫ぶ。
「ち、違います!!
あれは――
ナイルワニバシ(シュービル)!!
しかも……超巨大ですぅぅぅ!!」
天を裂くような轟音が、再び鳴り響いた。
――それは、天より放たれた銃声だった。
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