第32章――魂の色を探して
七日目の朝日が、いつもより早く昇った。
しかし日の光よりもすでに先に動き始めていた者たちがいた。
――バンとハストゥル。
二人はそれぞれ離れた場所で静かに座り、深い瞑想に入っていた。
ベンケイは腕を組み、満足そうに頷いた。
ベンケイ:
「見事だ。ここまで到達できる者は滅多にいない。胸を張れ。」
バンはゆっくりと目を開け、額の汗を拭う。
バン:
「うん……アニマが体の中を巡るのがはっきり分かる。
内側にも外側にも動かせるようになった。
でも……なんか変なんだ。何かが足りない気がする。」
その瞬間、伝達トンボが震え、ハストゥルの声が響いた。
ハストゥル:
「分かるよ、同じだ。アニマを使うたびに、胸の奥が空っぽになる感覚がする。」
ベンケイは薄く笑う。
ベンケイ:
「当然だ。お前たちはアニマを“扱う”段階には来たが――
今感じているアニマは、まだ“色のない画布”にすぎん。
アニマはお前たちを主人と認めた。
だが今度はアニマが、お前たちの本質を学ぶ番だ。」
ハストゥルが眉をひそめる。
ハストゥル:
「つまり……アニマが俺たちを“読む”ってことか?」
ベンケイ:
「そうだ。だが、お前たちの魂の性質がアニマに気に入られなければ、決して開かれることはない。」
バンはうーんと唸りながら首を左右に振る。
バン:
「じゃあ……魂の本当の姿って、どうやって見せればいいんだ?」
ベンケイは獰猛な笑みを浮かべた。
ベンケイ:
「自分を知る一番の方法は――“死”と向き合うことだ。
覚悟しろ。」
バン:
「はあ!? ちょ、待っ――」
次の瞬間、ベンケイの姿が消えた。
現れたのはバンの目の前。
すでに斬撃が振り下ろされていた。
バンは本能で“亀の構え”を取る。
斬撃が迫る。
バン(心の声):
(あ、人生が走馬灯みたいに……
いや、でもなんか別に大したことなかった!!)
しかし、その一撃は届かなかった。
ベンケイが刃を寸前で止めていた。
ベンケイ:
「殺すつもりはない。少なくとも今日はな。」
するとベンケイは片手でバンの脚をつかみ、そのまま肩に担ぎ上げた。
そして伝達トンボに向かって言った。
ベンケイ:
「ハストゥル。お前も自分の本質を見つけろ。
そこにいても成果は出ん。森の奥深くへ入れ。」
ハストゥルは拳を握りしめる。
ハストゥル:
「分かりました、ベンケイさん。もうここには留まりません!」
一方で、逆さに担がれたバンが呻く。
バン:
「ね、ねえ……そろそろ下ろしてくれない?
血が全部頭に行ってるんだけど……」
ベンケイは再び笑った。悪い顔だ。
ベンケイ:
「もちろん下ろしてやる。
……ただ、もっといい方法がある。」
彼は投げの構えを取り――
ベンケイ:
「いくぞ。」
バンはまるで野球のボールのように森の奥へ吹っ飛ばされた。
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◆ ハストゥル側
ハストゥルは遠くから聞こえる絶叫に肩をすくめた。
ハストゥル:
「まあ……自業自得だ。忠告したのに。」
彼は森の奥へと進む。
ハストゥル:
「さて……やってみるか。」
アニマを放ち、複数の方向へ凝縮させた。
その瞬間――
ドンッ!!
ドドン!!
鼓動のような、戦の太鼓のような音が響いた。
木々の上には巨大なゴリラたちが現れ、ハストゥルを包囲している。
さらに、影の中からひときわ大きなゴリラが姿を見せた。
ドォンッ!!
着地と同時に地面を両腕で叩く。
大地が跳ね上がり、波打つ。
ハストゥルはアニマで身体を軽くし、跳躍して木にしがみついた。
額に汗がにじむ。
ハストゥル:
「これが……俺の試練ってわけか。
こりゃ、簡単じゃなさそうだな。」
――作者コメント――
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