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第25章 — 西のバザール


二人は激しい砂嵐の中、よろめきながら進み、ようやく揺らめく灯りが並ぶバザールの姿を捉えた。


風は唸り、砂は容赦なく顔に叩きつける。


エファは目を細めながら言った。




「ねえリン、このバザールって、そんなに危険な場所なの?」




ロボットであるリンの金属音の混ざった声が、風にかき消されそうになりながら答える。




「ここは、ドリームデザートのならず者があつまる場所だよぉぉぉ。


 詐欺師、盗賊、密売人……違法で危険なモノばっかり売ってる、いわゆる闇市だねぇ。」




そう言い終えた頃、二人は最初の露店が並ぶ一角へと足を踏み入れた。


嵐の中でも、ひとつだけ明かりが灯った建物が目に入る。――酒場だ。


エファはためらわず中へ入り、リンも続いた。




店内はアルコールと汗の匂いが充満していた。


笑い声、怒鳴り声、喧嘩の音……。


だがエファが扉を開いた瞬間、空気が凍りつくように一気に静まり返った。




立ち上がる巨漢がいた。


肩幅は扉より広く、顔には不敵な笑み。


指の骨を鳴らしながらエファの前に立ちふさがる。




「おいチビ。迷子か? ここは保育園じゃねぇぞ。」




酒場中から笑い声が湧き上がった。




「ハハハハ!」


「ちっさ!!」




エファはテーブルをバンッと叩いた。


乾いた音が響き渡る。




「うっさいのよ!! こっちは叫んでも聞こえないくらい五月蠅いんだけど!!」




巨漢を――どうにかして――押しのけると、そのまま椅子にどかっと座った。




「外は嵐よ。こんなアホみたいなゴリラ集団の中に来るなんて、本当は絶対イヤなんだから。」




再び静寂。


巨漢がゆっくりと近づいてくる。


殴られる――誰もがそう思ったが、エファは微動だにしない。恐怖は一切ない。ただ冷たい眼差しだけ。




巨漢は手を上げ……エファの背中をバシィッと叩いた。


牛でも倒れそうな勢いで。




そして豪快に笑った。




「ハハハハ!! ガキのくせに根性あるじゃねぇか!


 気に入った! 酒を出してやれ! 俺のおごりだ!!」




笑い声が再び店内に響き、今度はエファへの賞賛が混じっていた。




エファは顔を赤らめ、髪をかき乱した。




「……ちょっと黙ってよ。」




巨漢は肩をすくめ、真顔でエファを見つめた。




「嬢ちゃん。嵐が止むまでの時間つぶしじゃねぇよな?」




静寂が戻る。


エファは冷たい声で答えた。




「察しが良いわね。情報を探してるの。」




「どんな情報だ?」




「私、あの――」




「はぁ?! あの壊れた列車の乗客か!? 二日前に墜ちたやつだろ?!」




「二……日?」


エファは額に指を当てた。


「まさか、二日も気絶してたの……?」


息を吸い込む。


「他に生存者は……?」




巨漢は首を横に振った。




「望みは薄い……だが、列車の残骸を見たって話はある。


 エンズカイ――ドリームシティに向かう途中の街だ。」




エファの瞳が光った。




「じゃあ……まだ、生きてる可能性がある!」




その瞬間、嵐が嘘のように止んだ。


外が静まり返る。




「リン、行くよ!!」


エファは出口へ駆け出した。


「ありがとーー!!」




巨漢が声を張り上げた。




「おい! 待て!」




エファは振り返る。




彼は腕を組み、重い声で言った。




「幸運を祈るぜ、嬢ちゃん。


 ……向かう先は、簡単な場所じゃねぇ。」




エファはうなずき、嵐の去ったバザールを後にした。

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