第12章 - 空から落ちてきた観客
雨の日…
王国の南に位置する「不変の劇場」、ペレリアの街にて。
ただならぬ雷鳴が響き渡り、それと共に一人の奇妙な人物をもたらした。
その人物はしばし思索にふけっていた。
???:「ふむ… なんだこれ…」
オレンジ色の少しボサボサした髪、色白でかなり蒼白な肌の若者のようだった。体つきはどちらかといえばきゃしゃで、中肉中背、細いレンズの眼鏡をかけていた。
彼はゆっくりと眼鏡を拭った。
???:「眼鏡の問題じゃないみたいだな… 明晰夢の中にでもいるのかな… なんで夢の中でも俺は眼鏡をかけてるんだ?」
少年は行き交う人々、商品を運ぶ商人たちの隊列、露店などを目の端で観察した。
???:「まるで中世にでもいるみたいだ… (それにしても凄まじい土砂降りだな… あのテントの近くで雨宿りさせてもらおう。)」
彼は果物売りのテントの下に身を寄せた。
店主:「おい! 誰に断ってそこに突っ立ってんだ!」
???:(なんて失礼な奴だ…)「実在もしない奴のくせに、いい度胸だな!」
店主:「ああん!?」
???:「夢の中でまで俺をコケにしやがって。」
店主は彼を気味悪そうに見つめた。狂人に違いない…
???:「おい、俺は狂人じゃないぞ! それを証明してやる。俺を殴ってみろ…」
店主:(変な奴だな。よし、落ち着け、プロとして対応しろ。)「おい、頼むから俺の店から離れてくれ… 客が怖がってるだろ。」
???:「いいから殴れって言ってるだろ! ここが俺の夢の中だって証明してやるんだよ! そうすれば目が覚めるはずだ。」
店主:「いやだね…」
???:「殴れよ!!! 一発ぶちかましてみろ!!!」
店主:「はいはい、分かったよ、そこまで言うなら…」
少年は顔を突き出した。商人は拳を握り締め、勢いをつけて…
*ポンッ*
一時間後。
雨は依然として降り続いていた。
???:「痛っ… 痛えな。」
店主:「やっと目が覚めたか。」
???:「ここ… ここはどこだ?」
店主:「俺のベンチの上だよ。お前、気絶してただろ…」
???:「…」
店主:「ハハハ! まさか一発でノックアウトできるとは思わなかったぜ!」
???:「笑い事じゃないだろ… (この痛み、本物だ…)」
商人は銀貨を一枚彼に差し出し、言った。
店主:「まあいい、坊主、面白かったぜ。だがもう二度と俺の商品に近づくんじゃないぞ。ほら、失せな!」
少年は立ち上がり、歩き去った。
???:「フン… 商品が聞いて呆れるぜ… たかが一枚の硬貨でどうしろってんだ… (今思えば、この妙な場所に来る前… 俺は漫画でも読んでたっけ? いや、何か別のものを…)」
彼は自分を打ちつける雨を完全に無視して歩き続けた…
???:「ハクション!!」
*グスッ グスッ*
彼は突然立ち止まり、しばし微動だにしなかった。
???:(あのバカな商人、この雨… あの衝撃、この痛み… 間違いなく夢なんかじゃない… となると、残された唯一の可能性は…)
???:「異世界転生したんだーーー! ウヒョー! やったぜ!」
周囲の誰もが好奇と警戒の入り交じった視線で彼を見ていた。
???:「あっ… すみません、すみません、静かにします…」
彼は急いで逃げ出し、走っている最中に妙な店を目にとめた。
???:(俺のオタク知識がようやく役に立つ時が来たか… ありがとう、スバル。)
彼は急いで店の中に入った。
そこはかなり奇妙な場所だった。異様な生物が入ったビン、散らかり放題の珍品、そしてカウンターでは一風変わった男が声をかけてきた。
店主:「いらっしゃいませ、新しいお客様! この悪天候にもかかわらず、お客様の一日が輝かしいものでありますように!」
男は高い声でまくしたてた。
少し怖気づきながらも、少年はこっそりとカウンターへと近づいた。
???:「ええと… とにかく、ここには何があるんですか…」
エキセントリックな声で、店主は答えた。
店主:「何でもありますよ!」
???:(異世界に来たからには、装備と武器が必要だな。)「武器とかはありませんか?」
店主:「ほうほうほうほう… お客様は法の裏側にいらっしゃるタイプのようですね… ではお客様だけに、特別にこれをお見せしましょう。」
彼はカウンターの下から大きな箱を取り出した。
刃のこぼれた短剣。
あるいは錆びついた剣。
そしてそこには…
???:「何なんだよ、このガラクタは? (価値のない物ばかりじゃないか、ハメようとしてるのか!?) 聞いてください… こんな古くさいものには興味ありません。魔法のアイテムとか、杖みたいなものはありませんか?」
店主:「魔法のアイテム… ふむ、加護に浸されたアイテムのことでしょうか?」
???:「ん?」
店主:「そういった品々は平民の手には滅多に渡りませんが… しかし、一つだけ所有しておりますよ…」
???:「マジですか!? 見せてください!」
店主:「まあ… そこまでおっしゃるなら…」
彼は新しい箱から、今度は少し小さめの小箱を取り出した。それは鉄の鎖と巨大な南京錠で厳重に縛られていた。
???:「うわあ!」
しばらくして、最後の鎖が外され、彼が静かに小箱を開けようとしたその時、突然バタンと箱を閉じた。
店主:「お聞きしますが、お客様はこの土地の出身ではありませんね?」
???:「え… ええ、なんでそんなことを?」
店主:「いえいえ、何でも… 確認ですが、お支払いの準備はお済みですか…?」
少年は慌ててポケットを探った。
???:(何かあったはずだ。)
彼はチューインガムの箱を取り出した。
???:(へへへ、ビンゴ。)
店主:「冗談なら、非常に悪趣味ですよ。」
???:「違いますって… 物物交換は受けてくれますよね? このアイテムは異世界のもので、超レア物なんです!」
店主:「当店では物物交換は行っておりません…」
???:(くそっ…)
店主:「何もお持ちでないなら、お引き取りください!」
???:「分かったよ、分かった… 出て行くよ。」
果物売りからもらった銀貨が、少年のポケットから突然落ちた。
???:(あ、忘れてた…)
店主:「銀貨一枚ではかなり少ないですが… しかし、私の寛大な心に免じて、特別に取り引きに応じて差し上げましょう。」
???:「本当ですか!?」
店主は再び小箱を開けた。中には紙幣の形をした、完全に黄ばんだ紙が一枚入っていた。
???:「紙幣…?」
店主:「お手に取ってご覧なさい。この黄ばんだ紙切れは加護に浸されており、その真の所有者は絶大な力を授かると言われております。さあ、その銀貨と、先ほどポケットから出された品をお渡しください。」
???:「取引成立だ! (へへっ! ついに運が向いてきたぞ…)」
少年は銀貨とチューインガムの箱を渡し、商人は開いた小箱を彼に差し出した。
店主:「お取り引きできて光栄です、お客様…」
???:「サクライ… サクライ・アラタだ。」
彼の瞳は興奮で輝いていた。
吸い寄せられるように、彼は小箱の中へと手を伸ばした。
だが突然、扉が耳をつんざくような破壊音と共に激しく開いた。
女性の声が轟いた。
――それに触るんじゃない!!!
そして外の雨は、これから訪れる混沌を際立たせるかのように、さらに激しさを増した。
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