第12章 - 空から落ちてきた観客
雨の日――。
王国の南にある都市ペレリア。そこは「不変の劇場」と呼ばれる場所だった。
突然、轟音のような雷鳴が鳴り響き、新たな観客が空から現れた。
観客はしばらく考え込んだ。
> 「いってぇ……俺、何読んでたんだっけ? いつものように……マンガか。
まさか……」
そして突然叫んだ。
> 「――俺、異世界に来たのか!? サイコーじゃねぇか!!!」
彼は大笑いしたが、すぐに周囲の人々の視線に気づき、
慌てて口を両手で塞ぐと、近くの路地へと駆け込んだ。
> 「落ち着け、桜井アラタ……目立っちゃダメだ。
異世界モノの定番を思い出せ……主人公は転生して、それから……」
彼の口元に不敵な笑みが浮かぶ。
> 「……可愛いヒロインと出会うんだよな! よし、そうだ!」
再び声を上げた。
> 「未来のワイフを探すしかねぇ! よーし、行くぞ! でも……どこにいるんだ?」
その瞬間、彼の腹が鳴った。
> 「あーもう、腹減った……」
アラタは路地を出て、何か食べ物を探した。
雨宿りを兼ねて入った建物を、彼はレストランだと思い込んでいた。
> 「いらっしゃいませ、新しいお客様! こんな天気でも、あなたの一日が輝きますように!」
甲高い声で店主が叫んだ。
> 「最高の一日ですよ!」アラタはシャツでメガネを拭きながら答えた。
「ここの名物料理をお願いします!」
店主は肩をすくめた。
> 「念のため言っておきますが、ここはレストランじゃありません。
うちは“バザール”です。珍しい品物なら何でもありますよ。」
アラタはメガネを掛け直し、周囲を見て口をあんぐりと開けた。
そこには、クマほど大きな蜘蛛や、形容しがたい怪物たちが檻に閉じ込められていた。
> 「落ち着けアラタ、異世界じゃ普通のことだ……」
> 「すみません、魔法の剣とか杖とか……アーティファクトはありませんか?」
> 「もちろんありますとも。ただし、お金はお持ちですか?」
アラタは引きつった笑みを浮かべ、ポケットを探った。
> 「物々交換でも大丈夫ですか?」
> 「ええ、品次第ですがね。」
> 「よしっ! これが俺の最高のお宝だ!」
誇らしげに取り出したのはスマートフォンだった。
「この世界には存在しないアイテムですよ! しかも写真も撮れる! すごいでしょ?」
> 「全然すごくないですね。」店主は即答した。
「私も同じものを持っていますよ。」
アラタは固まったまま口を開けていた。
> 「実を言うと、この世界の人々は皆、似たような機械を持っています。
ただし、王都の近く――王城の周辺でしか使えません。」
すると店主は古い引き出しを開け、五百円札を取り出した。
> 「あなたにお勧めできるのは、これくらいですね。“超強力な紙”です。」
> 「は? ただの紙切れじゃ……」
> 「侮るなかれ。王様自らがこの札に祝福を与えたと伝えられています。
真の持ち主には、計り知れない力が宿るとか。」
アラタの目が輝いた。
まるで催眠にかかったように、彼は手を伸ばした。
> 「それ、もらいます!」
だが突然、ドアが激しく開き、雷鳴のような声が響いた。
> 「――それに触るな!!!」
外では雨がさらに強まり、
まるでこれから起こる混沌を告げるように、街全体が震えた――。




