復讐者の誕生 (Birth of the Avenger)
氷のように冷たい絶望が、アレンの魂を底なしの沼の底へと引きずり込んでいくようだった。
彼は全てを失った——「太陽の子」と謳われた肉体、山をも揺るがす聖なる力、知らぬ者のない「勇者」の名、そして……かつて彼と肩を並べ、しかし今や彼のことを知るはずもない仲間たちを。
彼は石像のように、死体の山の中でどれほどの時間、呆然と座り続けていただろうか。やがて、夜明けの最初の光が朝霧を突き抜け、彼のその「他人」の顔を照らした。
暖かいはずの陽光が、しかし、ほんの僅かな暖かさももたらさない。
彼は力任せに地面を殴りつけ、この身体から伝わる、あまりに微力な反動を感じた。痛みが、彼を混乱した思考から引きずり出す。
彼は自分の両手を見下ろした。そこには薄いタコと傷跡があり、一介の兵士のものであることを示している。そして、彼はゼルを思い出した。毒を塗られた短剣を、あの冷たい「君の役目は、ここまでだ」という言葉を思い出した。
「まだ……」
歯の間から、二つの言葉が絞り出された。
「まだ……終わっていない……」
絶望の灰の下で、復讐の炎が再び燃え上がった。
ゼル、これで終わりだと思ったか?俺の全てを奪い、お前のその歪んだ野望を何の憂いもなく実現できるとでも思ったか?
お前は間違っている。
俺は全てを失ったかもしれないが、力や身分よりも遥かに価値のあるものを持ち帰った——「未来」に関する、血塗られた記憶を。俺はお前の次の一手も、王国に仕掛けた駒も、その偽善の仮面の下にある全ての秘密を知っている。
アレンは、よろめきながらも立ち上がった。彼は辺りを見回し、死んでいった同胞たちに視線を送る。彼の心にもう迷いはなかった。
「アレン・クリストファーは、魔王城で死んだ」彼は夜明けに向かって、自分だけが参加する葬儀を執り行うかのように、そう囁いた。「今日から、俺はノアだ」
古の伝説に曰く、大洪水の後に「新生」をもたらしたというその名を借りた。
彼は傍らの兵士の死体から、まだ使えそうな制式長剣を手に取った。剣の刃に映ったのは、もはや勇者のものではない、しかし以前のどんな時よりも遥かに固い決意に満ちた、彼の瞳だった。
復讐の亡霊が、夜明けの微光の中、静かに産声を上げた。




