アウトオブあーかい部! 79話 偽物
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!
趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!
同じく1年、青野あさぎ!
面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!
独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河!
そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
……ではなく、あさぎの家
……でもなく、その隣室に住むモーラの家。
『キャットハウス鶸田』で居合わせたおばさん改め教頭先生と、その親友であり白ちゃんとモーラの母、雪と邂逅したひいろの足は、モーラの部屋に向かっていたのだった。
「やあやあいらっしゃい、ひいろ。」
インターホンを鳴らすと、さっそく玄関でモーラに迎え入れられた。
「お邪魔するよ。」
「大丈夫?尾けられてない?」
「みどり先輩が阻止してくれてるよ。」
「いっやぁ〜、にしてもひいろって行動派なんだね?電話してそのままうちまで来るなんてびっくりだよ。」
「電話?」
モーラの部屋に訪れたひいろは2人きりで雪について話を聞こうとしていたが、奥の部屋から当然のようにあさぎがひょっこりと出てきた。
「本当に同棲してるんだな……。」
「やだなあひいろ、半分だよ半分。私とモーラさんとでハーフアンドハーフ。」
「よし、つまり半同棲と半同棲で同棲のできあがりだな。」
「ひいろがうちじゃなくてこっちに来るなんて珍しいね、モーラさんに用事?」
「ああ、そんな所だ。」
「ごめんあさぎ、ちょっと部屋で待ってて?」
「はーい。」
モーラが手を合わせてお願いすると、あさぎはまっすぐ、奥のモーラの寝室に向かって歩き出した。
「待て待て待て待て……!」
モーラがあさぎの腕を引っ張って止めた。
「?」
「いや、『?』じゃないんだよ、『自分の』部屋で待っててね……!?」
「はーい。」
「……よし行けっ!」
モーラが手を離すと、あさぎは再びモーラの寝室へまっすぐと
「待て待て待て待て待てぇぇえい!!」
モーラが全力疾走で追いつき、再びあさぎの手を引っ張って止めた。
「?」
「『?』じゃないんだよ、そこは『私の』部屋なの?OK?」
「うん。」
「……よし!」
モーラが手を離すと、あさぎはモーラの寝室のドアの部に手を
「待て待て待て待て待てぇぇえい!!」
モーラが再びあさぎの手を鷲掴んで止めた。
「え、なになんなの!?こんなに『お前のものは俺のもの』を地でいく人初めて見たわ!?」
「お前……の?」
「もう私の部屋だとすら思われてねえ!!??」
「……あさぎ。」
見かねたひいろがあさぎの方に手を置いた。
「ひいろ?」
「これからワタシとモーラさんがどんな話をするのか、わかっているのか……?」
「まさか、シリアスな話……?」
「そう。と〜っても真剣。」
モーラも便乗した。
「シリアスって、
「いい?あさぎ。……これから私とひいろがするのは、…………あさぎが可愛いって話なの。」
「は?」
「ゲームしてると構ってほしくて襟足でくすぐってくるとか、
「あさぎが襟足をくるんくるんしてる所は一日中見ていられるとか、
「うちでお風呂入った後襟足に残ったシャンプーの匂いスンスンしてる所とか
「私の本体襟足なの……?」
「……『本体』の話を聞きたいのか?」
「なっ……!?//////」
「ほ〜れ語るぞ語るぞ〜?」
「語り明かすぞ?」
「うわ〜〜〜ん!///」
あさぎは顔を真っ赤にして玄関に逃亡した。
「「あいたっ!?」」
あさぎが玄関のドアを開け飛び出すと、勢いよく額をぶつけその場にうずくまった。
「あ〜あ……。」
「大丈夫……って、きはだ?」
モーラとひいろがあさぎを心配して近づくと、外できはだも額を抑えてうずくまっていた。
「ぐおぉ……あれぇひいろちゃん……珍しいねぇ……、」
「モーラさん、きはだと予定あったのか?」
「いんや?なんか不定期で『来る』。」
「これ、どぞ……。」
きはだは額を抑えながら、もう片方の手で持参した大入りのおかきを差し出した。
「律儀だなぁ。」
「やれやれ。な〜んかみんな来ちゃったし……部活すっかぁ!」
こうしてひいろとモーラの話し合いはお流れとなった……。
あーかい部!(偽)(4)
モーラ:点呼ぉ!
あさぎ:いち
モーラ:いちは私だ馬鹿者ぉ!!
きはだ:理不尽で草ァ!
あさぎ:なんで怒られたの
ひいろ:よん……ってことでいいのか?
モーラ:というわけでこの部活は名誉顧問と愉快な部員3人でお送りします
ひいろ:いいのか乗っ取っちゃって
モーラ:番外みたいなもんだし気にしなーい
きはだ:おかき食べた手はいちいち拭くのにねぇ
モーラ:すみ姉とは違うのだよすみ姉とは……!フキフキ
ひいろ:白ちゃんがさつな所あるからなぁ
あさぎ:モーラさんいっつもウェットティッシュ持ち歩いてるんだって
ひいろ:流れるように借りるな
きはだ:み〜んな集まってるのに喋らないのシュールだねぇ
モーラ:いつもこんな感じでやってるんじゃないの?
ひいろ:やったことはあるけどいつもじゃないぞ
あさぎ:なんだっけ、タイピング強化月間?
きはだ:だったかねぇ
ひいろ:主催者だろ
モーラ:じゃあいわばここはあーかい部の『秘密の修練場』って訳だね?
ひいろ:(偽)だけどな
モーラ:おんなじ名前にしたらみんな誤爆するじょん
きはだ:どうも『誤爆するジョン』です
モーラ:きはだぁ!
ひいろ:洗礼だな
モーラ:みんな程PINE廃人じゃないんだよあたしは
あさぎ:でもモーラさんよく誰かとメッセージしてるよね
あさぎ:ありがと
ひいろ:口ぐらい自分で拭けよな
きはだ:1人で歯磨きできなそう
あさぎ:できるもん!
きはだ:だってあさぎちゃん、15歳なんだもん!
モーラ:しょげないでよベイベー
あさぎ:それはあと10年若い子に言うやつなんだよ……
あさぎ:モーラさん?
きはだ:背後から撃たれてて草ァ!
ひいろ:もう少し自立することだな
あさぎ:してるもん!
きはだ:そういえばモーラさんがメッセージやりとりしてるの誰ぇ?
モーラ:ここでお仕事の話する?
ひいろ:みんなモーラさんの仕事知らないんだよな
あさぎ:モーラさん働いてたの?
モーラ:おい
ひいろ:でもモーラさんが労働してるところって想像つかないよな
モーラ:ちょっとぉ!?
きはだ:ゴリラが漢字ドリルやってるところくらい想像つかない
モーラ:するかもしれないじゃん!?
あさぎ:多分そこじゃないと思う……
モーラ:いいもん!そんなに言うなら私の仕事、見せてやるもん!
ひいろ:おお
あさぎ:これは
きはだ:なるほどイラストレーターか……
モーラ:これならタブレット1つで働けるし、夜逃げもお手のものって訳よ♪
ひいろ:手につけるな手に
モーラ:ちゃんと拭いてるよ
きはだ:おかきじゃないんだよなぁ
あさぎ:そうこう言っているうちに最後のひとつ
モーラ:もーらい♪
ひいろ:あさぎの目の前で頬張りやがった……!?
きはだ:これは惨い、大人の所業とは思えないねぇ……
あさぎ:モーラさんのばかばかばかばかばかばかばかばか!
ひいろ:一番食べてたのあさぎだからな?
モーラ:しょーがないなぁ……
きはだ:おーっとモーラさん!おかきを1つ、隠し持っていたーー!
モーラ:ほら口開けて?
モーラ:ここは歯医者じゃないんだが?
きはだ:辛辣すぎて草草の草ァ!
ひいろ:鬼か
あさぎ:ばかばかばかばかばかばかばかばか!
きはだ:あさぎちゃん、お顔を真っ赤にしてモーラさんを殴る殴る……
ひいろ:ちゃんと歯磨きしてたんだな
ひいろ:おい、やめ
ひいろ:ろいたい
ひいろ:黙って叩くな
きはだ:おーーっと!ひいろちゃんに飛び火したーー!
ひいろ:ちょ
ひいろ:あさぎいたい
モーラ:これ食って落ち着け
あさぎ:落ち着いた
きはだ:結局あげるんだぁ
モーラ:いや〜あさぎ揶揄うの楽しすぎるわ
あさぎ:素直にくれればいいのに
モーラ:え?やだ
あさぎ:次やったら手ごといく
モーラ:ちょっ、私の食い扶持!?
ひいろ:ああ、だからウェットティッシュ常備してるのか
きはだ:繋がった……!
あさぎ:じゃあきはだも絵描きさんなの?
きはだ:きはだちゃんのは女子力だから
モーラ:さて、と
ひいろ:もしかして用事があったか?
モーラ:ないけど、みんな夕飯食べてくでしょ?
きはだ:いいでやんすかモーラ姉!?
ひいろ:女子力マウントしてる奴が使う語尾じゃないんだよなぁ
モーラ:Now you're family……!
きはだ:ま〜た家族増やしてるよこの人
ひいろ:血ぃ繋がってないけどな
モーラ:偽物上等♪ハートが繋がってりゃ家族なんよ
ひいろ:ここ、(偽)だしな
モーラ:ひいろも家族にならないか……!?
あさぎ:そうか……!?家庭的な一面をアピールすることで更に女子力格差を……!
モーラ:あさぎはおかきでお腹いっぱいだから夕飯3人前でいっか
あさぎ:モーラ姉の手で我慢しとくよ
モーラ:食いしん坊め
ひいろ:なるほど『姉力』か
モーラ:ひいろも呼んでくれてもいいんだぞ?
ひいろ:はいはい
「早くいくぞ、モーラ姉。」
「おうよ♪」