27話 前と後の対称性 [앞과 뒤의 대칭들]
27話 前と後の対称性
960年3月16日
ノエマはバスレムの侵攻に抗し、城壁を背に彼らを阻んでいた。
城壁の上では兵士が鐘を鳴らしており、
城壁の外では悲鳴と剣がぶつかる金属音、ノエマの兵士たちの叫び声だけが響いていた。
「防げ!!」
「城壁に近づかせない!!」
突然の侵攻で十分な準備ができていなかった
ノエマの兵士たちは数で劣勢に立たされていた。
遅れて駆けつけたドルバンは状況を把握しようとして城壁の上に登り、
見下ろした光景は、バスレムの兵士たちが様子をうかがうように少しずつ進軍していた。
彼らは一度に全兵力を投入して城壁を破壊するのではなく、
ノエマ兵士の数をかき分け、進撃の準備をしているようだった。
「何をしているんだ!!」
「今すぐ城壁に近づけ!!」
「攻城戦に対応しろ!」
ドルバンの命令に従い、兵士たちは慌てて動き始め、
城壁の上に弓と矢、投石機を運び始めた。
城壁外の平原には、既に多くのノエマ兵士が彼らを阻もうとして戦死した姿が見え、
バスレムは部隊を分割して少しずつ前進していた。
ドルバンは、これが単なる侵略ではなく、最初のステップを踏み出す作業だと判断した。
「物資を節約せよ!」
「できるだけ生き延びろ!殺すより耐えることが重要だ!」
城壁外の兵士たちは一斉に城壁に張り付き、彼らの侵入を注視していた。
城壁上には弓兵が待機し、投石機を全て準備していた。
城壁内の城門には騎兵が即座に飛び出す準備を整え、
ドルバンの指示に従い、全員が息を殺していた。
「彼らの動きが少し変わりました、パルマー団長!」
「大丈夫だ、すでに一定数の兵力は消耗させた。」
「全員突撃準備!」
バスレムのシルバン騎士団団長パルマーは彼らの動きに気づき、
待っていたかのように全兵力を投入した。
「恐れているのか!?」
「お前たちは誇り高きバスレムの兵士たちだ!」
「あの奴らが恐ろしいのか!!?」
「いいえ!!!」
「いいえ!」
パルマーは隊列を整える兵士たちの前に進み出て、士気を高めるような演説を始めた。
兵士たちは、興奮と緊張が混じり合ったような感覚に襲われ、
視界が次第に明るくなるような感覚に包まれ、周囲の音が敏感に聞こえてきた。
「死んでも構わない!!!」
「お前たちの隣に同じ仲間が復讐してくれるだろう!」
「殺されても構わない!!」
「お前たちの隣で互いを守るのだ!!」
「はい!その通りです!!」
「分かりました!!」
パルマーの響き渡る声に、兵士たちの声も次第に大きくなり、
何の動機や理由もなく、躊躇いを抑える演説だった。
「お前たちの姿は誇りだ!家族のことを考えろ、守るんだ!」
「証明するんだ!準備は不要だ!躊躇するな!」
「はい!!!!」
「躊躇しない!!!!」
パルマーはすぐに後ろの遠くを見渡し、頷くと、
ノエマの方へ言葉を向けた。
「プゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」
「突撃!!!!!!」
バスレムの兵士たちは、後ろから聞こえるラッパの音を一度、
パルマーの叫び声を一度、考える間もなくノエマの城壁に向かって突撃し始めた。
ドルバンは一斉に突撃してくるバスレムの兵士たちを見て、タイミングを待つように右手を上げ、
激しく鼓動する心臓を背に、瞬きもできず突撃してくるバスレムの兵士たちだけを見つめた。
「待て..!」
「まだ.. まだ..」
弓兵と投石兵は照準を合わせたまま、ドルバンの指示を待っていた。
手が震えながらも、集中することにだけ力を注いだ。
「今!!!」
「発射!!!」
「ドクッ… トン!」
「トン! トン! トン!!」
ドルバンの命令に従い、投石機が発射音を響かせ、弓兵たちも一斉に矢を放ち始めた。
ドルバンは、彼らを城壁に張り付けて攻城戦を展開するか、
それとも待機中の騎兵を投入すべきか悩んだ。
城門が破られることは絶対に防がなければならなかった。
高城戦は数的不利でも兵士の安全と勝利の可能性があるが、資源の消耗が激しかった。
騎兵の投入はリスクが大きいものの、城門の確保に重点を置けるという利点があった。
「騎兵たち、進撃!!!!」
「ドドドド…」
ノエマの城門が開き、騎馬兵が左右に分かれて進撃を開始した。
ドルバンは一斉に進撃してくるバスレム兵が城門に全て張り付く場合、
周囲が分散して城門の確保が危ぶまれ、
結局リスクを冒しても城門を優先した。
「殺せ!!」
「止めろ!!」
「投石機を装填しろ!!」
「止まるな!」
「早く動け!」
「梯子をかけさせない!!」
兵士たちの叫び声が響き渡り、混乱した状況の中、ドルバンは下を見下ろした。
ノエマの騎兵がバスレムの騎兵と戦いながら、
城門が閉まりかける中、ドルバンの目には見慣れたシルエットが映った。
「何だ…
「あの男、なぜ… ここに…」
ドルバンの目に入ったのはバルネルで、
一人で足を引きずりながら城門を背に歩いていっていた。
ドルバンは首を伸ばし、下に向かって叫んだ。
「誰が解放したんだ!?」
「お前は頭がおかしいのか!!ここがどこだと思ってここに来るんだ!!」
「ドールバン!」
「お前も随分変わったな。」
バルネルは城壁の上からドールバンを見上げ、一瞬微笑みを浮かべて叫んだ。
騒がしい戦場の真ん中でバルネルの声はよく聞こえなかったが、何と言っているかは分かった。
バルネルが見たドルバンは、以前の戦場で逃げ出した時とは異なり、
他の者たちを率いている姿だった。
「陣形を維持しろ!!」
ドルバンは我に返り、再び戦場に集中して叫び、
バルネルは次第に大胆に前へ進み出していた。
戦場に現れた老人に、皆の注目が集まった。
バスレム兵士たちは一瞬躊躇し、目を離した。
そのタイミングでノエマ騎兵たちが加勢し始めた。
バルネルは地面に落ちている長剣を一つ拾い始めた。
「何だ…あれは…」
「剣に光…光が…」
「今だ!! 突撃!」
バルネルが剣を手に戦場に入ると、彼の剣からは青い光のオーラが巻き付いていた。
バスレム兵士たちは初めて見る光景に混乱に陥り、
城門の上でドルバンの叫びに反撃が始まった。
「あの老人から狙え!!」
「これは… くっ!!」
「ああああ!! 腕が、腕が!!」
「うああああ!!」
バルネルは躊躇いなく敵を切り裂き始めた。
剣に包まれた青いオーラに触れると、バスレム兵士の腕と足は豆腐のように切り裂かれていき、
鎧の有無を問わず、バスレム兵士たちは次々と倒れていった。
「やめろ… やめろ!!」
「悪魔だ!あれは悪魔だ!!」
「私の足… 足が… ない… 動けない…」
「医兵… 医… 医… ぐうぐう…」
バスレム兵士の絶叫が戦場を埋め尽くし始めた。
彼らの目にはバルネルが恐怖の対象として染まり、
地面には血が飛び散っていた。誰かは切り落とされた自分の腕を探してうろつき、
誰かは血が噴き出す腹を押さえ、血が逆流して声が出なくなるまで医療兵を探した。
「はあ… はあ…」
「来ないで… 来ないで!!」
「ああああああっ!!」
バルネルは荒い息を吐きながら、一人の兵士にゆっくりと近づいた。
兵士は恐怖に震えながら剣を大きく振り回した。
その姿は脅威を装った抵抗のようだったが、バルネルは躊躇いなく兵士を切り裂いて殺した。
「ふう……はあ……」
バルネルは老人の体で剣を使うことが体力的に限界を感じ始め、
バスレム兵士たちは後退しながら固まったままバルネルを見つめていた。
軽率に動けず、ノエマの騎兵たちは勢いを増し、突撃を止めなかった。
「あれが……英雄……」
城壁の上でバルネルの姿を見ていたトッドは、混乱した感情を感じた。
自分たちのために戦ってくれるバルネルは英雄だったが、
敵にとっては殺人鬼に過ぎなかった。
トッドは生まれて初めて見た戦争の光景があまりにも陌生で、
バルネルの姿は敵を殺すことがあまりにも慣れたように見えた。
「私は何をしたのだろう…」
バルネルの背中は堅固な番人のようだった。
トッドはそんな背中を見ても、喜ぶべきか悲しむべきか混乱していた。
バルネルの顔は堅固な殺人鬼だった。
トッドはそんなバルネルの顔を見ることができなかったが、ただ悲しく感じた。
「きっと…やりたくないんだ…」
「きっと…殺したくないんだ…」
「きっと…守りたいものが大きすぎるんだ…」
トッドはバーネルのことを知っていたため、彼が味方として活躍していることをただ喜べなかった。
数多くの戦争を経験した彼が、
一秒たりとも国を守ることを喜ばしく感じなかったことを悟った。
殺したくないという気持ちは、死にたくないという気持ちに押しつぶされ、
戦場に参戦したくないという気持ちは、守りたいという気持ちに押しつぶされていた。
「ドルバン…」
トッドは首を回し、横を見た。ドルバンは喉を裂くような声で指揮を執っていた。
トッドはドルバンの気持ちが少しは理解できた。
逃げる恥辱よりも、彼はただ生きたかっただけだった。
正面から向き合って戦うべきだったのに、背を向けるほど弱かっただけだった。
「止まった…」
トッドは再び正面を見据え、遠くでバルネルが立ち止まっていた。
どこか微かに動いているように見え、彼の輝いていた剣が光を失い始めた。
トッドは城壁から急いで降りようと走り出し、愚かな頭に胃がむかつき、吐きそうになった。
「何だ…突然止まった…」
「どこを見ているんだ…」
「今がチャンスか…?」
バスレムの兵士たちは、剣を構えたまま動かないバルネルの姿にささやき合い、
誰も先に動く者はいなかった。
バルネルが見つめている方向は一定で、まるで焦点を失ったように空虚に感じられた。
「バルネルさん…」
「ウィル…」
バルネルが剣を止めた理由は、ただウィルだけだった。
ウィルは左手に握っていた剣をゆっくりと下ろし、バルネルは右手に持っていた剣をゆっくりと下ろした。
バスレムに囚われていた時、自分を救ってくれたウィルに剣を向けることはできなかった。
ウィルも同じだった。自分が救ったバーネルに剣を向けることはできなかった。
二人は互いにしばらく見つめ合い、どちらも涙が頬を伝い始めた。
ウィルの右頬から涙が流れ、地面に一滴落ちて湿らせ、
バーネルの左頬から涙が流れ、血の溜まりに落ちて血と混ざった。