20話 空転するカンガルーたち [공전 속 캥거루들]
20話 空転するカンガルーたち
960年3月12日
カナトゥ族の住処に到着したノバクと家族、エルノール一行は、
カイルアの案内に従って族長と対面することになった。
周囲の部族民たちは、彼女が連れてきた外部の者たちを不思議そうに、
警戒を交えた目で見ていたが、意外にも彼らを制止しなかった。
彼らは木でつながれた橋を渡り、かなり大きな家に到着し、
エルノールは周囲の部族民を見回しながら尋ねた。
「でも、外の人たちが来たのに、挨拶や反発がほとんどないね?」
「それは私がこの部族の長の娘だから。
私が連れてきたということは、すでに保証されているからだよ。」
カイルアの簡潔な答えは、彼らの疑問を解消するのに十分だった。
周囲の部族民たちはささやき合いながら見守るだけで、
誰一人として簡単に近づこうとしなかったことが理解できた。
「それでも、あまりにも静かに受け入れているんじゃない?」
「おそらく長老たちと戦士たちが狩りに出かけたからだろう。
今頃戻ってくるはずだ。彼らがいたら大騒ぎになっていただろうに。」
カイルアは家のドアを開け、彼らを招き入れながら説明し、
一人また一人と家の中に入っていき始めた。
家の中も木でつながっているように、木の枝が少し見えていた。
温かい雰囲気に包まれ、天井の中央が広々と開いており、
夜は火を焚き、昼は日が差し込むようだった。
「ここが族長の家なんだね~」
「ここに座って少し待ってて。
待っていれば父が来るから。」
エルノールは探るように周囲を見回しながら言った。
ノバクと家族たちは家の中で立ち尽くしており、
カイルアは座る場所を案内してくれた。
「あの…差別みたいなのはないですか…?」
「私たちの家族に一つ事情があって…」
「それは心配しないで、お前たちは私の客人だから。
もちろん、慣習は守る必要があるかもしれない。」
リセタは慎重に尋ねた。
以前長く知り合いの村人たちも一瞬で変わり、
危険が迫ってきた記憶があり、まだ不安そうだった。
「慣習ならどんなもの…?」
「カイルア!!」
リセタが慣習について慎重に尋ねた瞬間、
その瞬間、家外からカイルアを呼ぶ大きな声が聞こえた。
足音が次第に近づくように大きく聞こえ、
皆は息を殺し、玄関のドアだけを見つめていた。
「ガチャン」
すぐにドアが開き、大柄な体格に伝統的な文様が全身に刻まれた男が入ってきた。
「カイルア、外の人を連れてきたと聞いたが、
この人たちがか?」
「はい、この方たちです。
この方たちは住む場所が必要で、
この二人は族長様に伝える用件があると言っています。」
カイルアは最初は少し緊張した様子だったが、
責任を持ってできるだけ簡潔に用件を説明した。
母娘の関係に見えたが、少し厳しい雰囲気が漂い、
やや率直な口調だった。
「理由は?」
「この人たちを連れてきた理由。」
「取引をしたんです..
私が強くなりたいから。
この人たちが助けてくれることになったんです。」
カイルアも遠回しに言わずに理由を答えた。
カイルアの父親は彼女の言葉を聞いて額を押し、ため息をついた。
「カイルア、まだ未練があるのか?
とりあえず、お前が責任を持って取引したのだから、それは信じる。
私はこの村の族長、タカンだ。」
カナトゥ族の族長タカンは、ノバクの家族を見ながら自己紹介をした。
厳格に叱責するだろうという予想とは異なり、カイルアを一族の一員として、
尊重を示す態度だった。
「あ…私はリセタです。こちらは私の夫カルレプ、
そして私たちの子供たち、ユリとノヴァクです…」
「私はエルノール!こちらはアルベレト!」
それに合わせてリセタはカイルラの目を盗みながら慎重に紹介し、
エルノールは堂々と自己紹介をした。
「まずは部屋で少し話しましょう。」
タカンは礼儀を重んじるような態度で、
家の内部の部屋の方へ歩みを進めた。
すぐにカイルアがタカンの後を追い、次々と後を追った。
「ご家族の住処は私たちが保証できます。
ただし、伝統的な儀式は行わなければなりません。」
「それは何ですか…?」
「何をすればいいですか?」
部屋に入ると、会議室のような空間が見え、
タカンはすぐに席に着くと、本題を切り出した。
カルレプは頷きながら尋ねた。
カルレプもタカンの意図を大体理解していた。
部族の特性上、外部の者が偏愛を示すと反発が生じ、
差別を受ける生活が繰り返されるだろうと考えていた。
慣例という名目のもとで承認を得なければ、他の者たちも納得しないだろう。
「家族のうち、誰か一人が3日以内に獲物一つを捕獲してくれば結構です。」
「どんな動物でも構いません。」
「父上…!」
予想より簡単な慣例に、家族の表情は一様に和らいだ。
彼らはここに来るまでずっとノバクが狩りを続けてきたため、
ノバクなら十分だと判断した。
しかし、その中ではカイルアだけ表情が暗かった。
カイルアは後ろからノバクに囁いた。
「君の能力を試すんだ、ノバク。」
「伝統的な成人式の慣習だよ。」
「どんな獲物を捕るかで、その人の真価を見るんだ……」
ノバクはカイラが言っている意味を理解できないよう、ぼんやりと立っていた。
家族たちは少し心配そうな表情でノバクを見た。
その時、カルレプが口を開いた。
「あの、私がやります、その儀式……」
「お前はダメだ、カルレプ。父親としての責任感はいいが、」
「資金じゃない、ノバク、信じて。」
カルレプは息子に頼ってきた父親として、
心の片隅が重かった。
この儀式を通じて、重かった心を少しは軽くしたいと思っていたが、
エルノルが断固として彼を制止した。
「私が言っただろ、ボールみたいだ。」
「村の中ではお前がノバクを守ってくれ。」
「今はただ守られていなさい。」
皆はエルノルの言葉に沈黙に包まれた。
時々エルノルが吐く助言は現実的で、
アルベレットだけが、これが誰に似ているのか知っていた。
「では、儀式は3日後に執り行うことにしましょう。」
「他の二人は私に用件があるそうです。」
「ああ、そうでした。」
タカンが次の用件に移ると、
アルベレットが前に進み出て、慎重に答えた。
カイルアは話が長引くことを予感し、
ノバックと家族を外に案内した。
960年3月13日
トッドは鍛冶屋から得た情報を基に、ノエマの山の中を登っていた。
バルネルの無罪を証明してくれるブリックではなかったが、彼の息子なら、
何かを突き止められるかもしれないと信じていた。
「山の中は本当にきつい…」
「毎日登れるものか、これ…」
トッドは荒い息を吐きながら独り言を呟き、
頂上が目前に迫っていたが、小屋のような建物は見えなかった。
足は休むことなく山を登り続け、
リュックから水筒を取り出そうと前へ移動していた。
「日没前に見つけないと…」
やがてトッドは山の頂上に到着し、
周囲を見回した。
周囲には木々が立ち並び、空には鳥が飛んでいた。
「なぜ人の痕跡がないんだ。」
「もっと奥に入ってみるか。」
トッドは周囲の木に近づいた。
人が住む場所なら火を焚いた跡や、
木を切った跡を探し始めた。
ササササという音に、特に考えず頭を音の方向へ向けました。
「何だ?動物か?」
「?」
トッドが頭を向けた方向には、大きな籠を背負い、
しゃがみ込んでいる人の後ろ姿が見えた。
トッドはその人に向かって近づき、口を開いた。
「あの、」
「えっ?誰だお前!?」
男性はキノコを摘んでいたのか、手にはキノコを一つ持ちながらトッドを見つめ、
すぐにトッドが説明を始める前に、トッドにキノコを一つ投げつけながら走り出した。
「ああっ!何だ、どこに行くんだ!?」
「待ってくれ!聞きたいことがあるんだ。」
「追いかけるな!お前は何者だ?」
二人は山の中を勢いよく走り始めた。
男性はトッドから逃げようとして走り続けた。
トッドは突然逃げ出す男性を追い始めた。
「違う、ブリックという人の息子を探しているんだ!!」
「なぜ逃げるんだ!?」
「来ないで、来ないで!」
「追いかけるのをやめろ、またドルバンあの野郎を呼ぶのか!?」
「なぜ俺を探してるんだ!」
男性は自分の住処には行けず、木々の間を隔てて対峙し、
トッドを避けながら逃げ回った。
トッドは山を登る間に体力が少し減っていたが、荒い息を吐きながら追いかけた。
「お前か!?」
「部下じゃない!個人的に聞きたいことがあるんだ..」
「シルバーエン創設の騎士が戻ってきたから聞きたいことがあるんだ..」
「何..??」
「それって何のことだ?」
男性はついに止まり、トッドを振り返り、
疑いの色濃い表情をしていた。トッドも止まり、息を整えながら言葉を続けた。
「やっと止まったな、この野郎…」
「シルバーエン出身だという…老人がエンブレムを持って来たんだが…」
「そのエンブレムを…ブリックという男が作ったそうだ…」
「だから鍛冶屋を探しに行って…あれこれ聞いたんだが…」
「本題を言え!」
「だから俺を探しに来たのか??」
「鍛冶屋?あの男か?」
男性は疑いを解くことはなかったが、疲れた様子のトッドを見て、
自分が十分に逃げられると判断し、少し前に進んだ。
「俺を捕まえに来たわけじゃないのか?ただ聞いただけだ?」
「俺が何を信じてるんだ!」
「俺がいつ捕まえに行ったって言った?」
「違う、怒ってごめん。本当に走らないで。重要な用事があるんだ」
「そんなことじゃない。話そう。話そう…」
トッドは立ち止まり、落ち着きなく話し続けた。もう走る体力は残っていなかった。
男性は、トッドが自分を捕まえに来たにしては若すぎ、
みすぼらしい姿に疑いを解くことにした。
「まあ…もっと有能な人が私を捕まえに来たんだろう」
「ついて来い。シルバーエンとは無関係だ」
「分かりました。ゆっくり行ってください。お願いします」
トッドは男性の後を追いながら、リュックのウォーターボトルを再び取り出し始めた。
男性は後ろのトッドをちらりと見ながら警戒するように見たが、
どう見てもトッドの姿は普通の青年だった。
やがて二人は南西の小さな小屋に到着し、中に入るとドートに飲む水を渡した。
「私はガレルだ」
「では、そのシルバーエン出身という老人はどこにいるんだ?」
「その方は現在、スパイの疑いで逮捕され、裁判直前の状態です」
「私が助けて無罪を証明しようとしている」
トッドは疑いもなくカップを手に取り水を飲んだ。
ガレルはその言葉に眉をひそめ、理解したような表情をした。
「シルバーエン騎士団の父親からよく聞いたでしょう」
「尊敬すべき方々ですね」
「私に何ができるでしょうか?」
「証言や、その方が無罪を証明できる証拠はありますか?」
「その老人の紋章が本物だという証拠」
そうして回り回って、誰かを守り続けてきた者たちが保護を受け、
保護を受けていた者たちは、再び彼らを守るために自分のポケットを開いた。