第9話「泣きついてきたシスターと新たな仲間」
三好はギルドへ向かう途中、道端に座り込んでいる一人のシスターを見かけた。
ぼろぼろの服を着た彼女は、前に小さな茶碗を置き、通行人に向かってか細い声で施しを求めていた。
しかし、多くの人々は見て見ぬふりをし、時折軽蔑の目を向ける者さえいた。三好はそれを横目に見ながらも、特に気に留めることなくギルドへと向かうことにした。
ギルドに到着すると、グレースが待っていた。彼女は嬉しそうに近づいてくると、小さな包みを三好に差し出した。
「今日はお弁当を作ってきたの。」
包みを開くと、そこには香ばしい焼き肉、ふっくらとしたパン、そして鮮やかな色合いの野菜が詰められていた。美味しそうな香りが漂い、三好の食欲を刺激する。
「うおお、うまそう!」
「ふふ、頑張って作ったから、ちゃんと味わって食べてね。」
二人はそのまま依頼を受けるためギルドを出る。
しかし、町の入り口に差し掛かったところで、再びあのシスターの姿が目に入った。
先ほどと同じく地面に座り込んでいたが、今度は三好の持っている弁当の匂いを嗅ぎつけたのか、彼の方にじりじりと近づいてくる。
「すみません……その食べ物、少し分けていただけませんか?」
腹を空かせた様子のシスターは、哀れな顔をして三好にしがみついてきた。道行く人々の視線が集まり、三好は気まずさを感じる。
グレースも「困ったわね……」
と小声で呟く。
「うーん……しょうがないな。」
三好は渋々、弁当を彼女に差し出した。シスターは感激した表情で、それを受け取ると、勢いよく食べ始めた。
「美味しい……こんな美味しいもの、久しぶりです……!」
涙を流しながら食べるシスターに、三好は少し罪悪感を覚えた。
「ありがとう……! お礼に、私もあなたの冒険に協力します!」
「え? いや、別にそんなつもりであげたわけじゃ……」
「お金が必要なんです! 一緒に依頼をこなしたいです!」
シスターは必死に三好の手を握る。彼女の名はマリアといい、回復魔法と光魔法を使えるらしい。
グレースが「回復魔法が使えるなら、一緒にいてもいいかもしれないわね」と助言するので、仕方なく同行を許可することにした。
そうして三人は、受けた依頼の対象である魔物の巣へと向かう。森の奥へ進むと、ゴブリンが数匹うろついているのを発見した。
「よし、マリア。光魔法で攻撃してみろ。」
「は、はい!」
マリアは両手を組み、神聖な光を放つ呪文を唱える。
「《ホーリーライト》!」
しかし、放たれた光弾はゴブリンの横をすり抜け、まったく当たらない。
「え?」
「もう一回だ!」
「《ホーリーライト》!」
今度も光弾は明後日の方向へ飛んでいく。
「……え?」
何度試しても、マリアの光魔法はことごとく空を切った。マリアは焦った様子で額に汗を浮かべる。
「ど、どうして……?」
「お前……もしかして、攻撃魔法を使ったことないのか?」
「……はい。」
「はぁぁ……」
三好は思わず頭を抱えた。攻撃魔法がまったく当たらないのでは、戦闘には役に立たない。仕方なく、三好とグレースでゴブリンを片付けることになった。
戦闘が終わった後、三好はマリアに言った。
「正直、攻撃が当たらないなら、一緒に行動するのは無理だ。」
「そ、そんな……! 私を見捨てないでください!」
マリアは涙を浮かべながら三好にすがりつく。
「回復だけはできます! だから、だから……!」
「……ふぅ。回復魔法は確かに役に立つ。でも、次の戦闘ではちゃんと援護してくれよ?」
「はいっ! が、頑張ります!」
こうして、三好、グレース、そして新たに加わったマリアの三人パーティが誕生したのだった。