第34話 「暴かれた正体!料理に懸けた復讐の刃」
会場の空気が張り詰める中、テイストキングはゆっくりと席を立った。
「……やはり、何か仕掛けがあったか」
彼の手には、光り輝くまな板――伝説級の神器《光のまな板》が握られていた。
このまな板は、料理に込められた本質を暴き、さらにはその料理人の真の姿を映し出す能力を持っていると言われている。
「お父さん……?」
グレースが驚きの声を上げる。
「お前の料理には、不自然なほどの魔力が込められている……。このまま見過ごすわけにはいかん」
テイストキングは《光のまな板》を左手に構え、黒フードの男へと向けた。
「《真理の審判》――!」
まな板が強く発光し、その光が黒フードの男を包み込んだ。
すると――
「ぐっ……!」
黒フードが一瞬にして焼き切れ、中から現れたのは――
黒髪の青年。
白いエプロンを着た、どこか見覚えのある顔立ちの男だった。
「な……!? こいつ……!」
三好の目が大きく見開かれる。
黒フードの男――否、青年は、明らかに異世界の人間とは異なる顔立ちをしていた。
彼は口を開き、静かに語り始めた。
転生者・ソーイの過去
「俺の名前はソーイ……」
男は冷静に自分の名前を明かした。
「かつて、この国の料理学校に通っていた者だ。……そして、俺もまた、異世界からの転生者だ」
会場が一瞬にして騒然となる。
異世界転生者――それは、神によってこの世界に送り込まれ、特別なスキルを授けられた存在のことを指す。
まさか、この料理大会で、三好以外の転生者と出会うことになるとは…。
「お前、日本人か!?」
三好が思わず声を上げると、ソーイは皮肉げに笑った。
「そうさ。俺も元は、お前と同じ日本人だよ」
その言葉に、三好は信じられない気持ちでいっぱいだった。
「俺は転生時に、女神から《おはだけ》というスキルを授かった……」
「おはだけ……?」
グレースが不思議そうに呟く。
「そうだ。このスキルのせいで、俺の作った料理を食べた人間は、服が弾け飛ぶようになった」
ソーイの言葉に、三好は思わず目をそらした。
――やっぱりそういうことか。
「最初は気にしなかった。だが、ある日気づいたんだ。俺の料理の味を評価する声が、どんどん消えていくのをな……」
ソーイは忌々しげに拳を握りしめる。
「俺の料理を食べた者たちは、驚き、歓喜し、興奮し……そして服を弾け飛ばす。それが怖くて、女たちは俺から遠ざかり、男たちは俺の料理を冗談のネタにし始めた」
「……!」
「それでも俺は、料理の腕を磨き続けた。しかし、料理学校では『公平な評価ができない』という理由で、まともに料理を審査してもらえなかった。俺は、料理人としての誇りを打ち砕かれ、学園を去るしかなかった……」
「そんな……」
グレースが小さく呟く。
「だが、俺は諦めなかった。この世界に認められなければ、魔王軍に認めさせればいい。魔王軍には人間を評価する基準がない。純粋に、料理の技量だけで勝負できる環境があった」
ソーイの目には、強い憎しみが宿っていた。
「俺は魔王軍に入り、幹部になった。そして、いずれ人間たちの前に立ち、自分の料理の実力を認めさせる機会を待ち続けた」
ソーイは鋭く睨みつける。
「そして今、この大会で優勝し、俺の実力を知らしめた後、正体を明かしてやるつもりだった――俺の料理を笑った者たちに、復讐するためにな!!」
テイストキングの決意
ソーイの言葉に、会場は完全に静まり返った。
彼の計画を聞いたテイストキングは、静かに首を振る。
「……ソーイ。お前の苦しみはわかる。だが、それでも復讐に走る道を選んではならん」
「今さら何を言う……! 俺を認めなかった料理界の権威が、何を言っても無駄だ!!」
ソーイは叫ぶ。
「ならば……力ずくで止めるしかないな」
テイストキングは腰の包丁を抜き放った。
「お前の料理の腕が本物かどうか――この戦いで決める!」
ソーイもまた、腰から包丁を取り出した。
「ふん……料理学校時代に、お前の技を間近で見てきた……学長殿よ。その実力、まだ衰えていないといいがな」
「試してみるがいい」
こうして――
伝説の料理人・テイストキングと、魔王軍の料理幹部・ソーイの対決が始まろうとしていた――。




