第33話 「黒フードの正体と禁断の肉料理」
モンスター料理大会もついに決勝戦を迎えた。会場は今まで以上の熱気に包まれ、観客席には多くの人々が詰めかけている。
「決勝戦、グレース対……匿名希望!」
司会者が対戦カードを読み上げると、観客席からざわめきが起こる。
「匿名希望……?」
三好は眉をひそめながら、決勝戦の対戦相手を見つめる。黒いフードをすっぽりとかぶり、顔をほとんど隠している男、それがグレースの最後の対戦相手だった。
「アイツ、やっぱりただの料理人じゃなさそうだな……」
これまでの試合を振り返ると、黒フードの男の料理を食べた審査員たちは毎回、歓喜のあまり服を脱いでしまっていた。今までの試合では笑い話のように流されていたが、ここまで続くと何か裏があると考えざるを得ない。
決勝戦の課題料理
「決勝戦の課題は――肉料理!」
司会者が課題を発表すると、会場から歓声が上がった。
「肉料理か……」
グレースは少し考え込む。これまで魚料理や卵料理などをこなしてきたが、やはり肉料理となると、素材の選択が勝敗を左右する。
「会場にある肉の中から自由に選び、最高の一品を作り上げてもらいます!」
審査員席には、今回の特別審査員として、グレースの父親であるテイストキングが座っていた。彼は王国屈指の料理人であり、その舌は誰よりも確かだと言われている。
黒フードの料理人の動き
「では、始め!」
司会者の合図とともに、両者は肉の選定に向かう。
黒フードの男は迷うことなくまっすぐに進み、一つの肉を手に取った。
「……何の肉だ?」
三好は男の手元を観察したが、食材の詳細まではわからなかった。
黒フードの男は素早く肉を捌き、見事な包丁さばきで調理を進めていく。その動きには一切の迷いがなく、流れるような美しさがあった。
やがて、肉が焼き上がると、男は独特の調味料を振りかけ、仕上げを始めた。その料理の完成を見届けたかのように、男は不気味な笑みを浮かべながら、腕を組んでグレースを待つ。
グレースの料理
一方、グレースは少し遅れて料理を開始した。
「どんな肉を選ぶべきか……」
迷いながらも、彼女は自身の料理スタイルに合う肉を探し、調理を開始する。肉の下ごしらえを念入りに行い、ソースの調合にも細心の注意を払う。彼女は見た目の派手さよりも、味のバランスを重視した料理を作り上げていった。
二つの料理が審査へ
ついに、両者の料理が完成した。
まずは、黒フードの男の料理が審査員席に運ばれる。銀の皿に乗せられた料理には蓋がされていた。
「では、黒フードの料理人の作品を拝見しましょう!」
司会者が合図を送ると、蓋がゆっくりと持ち上げられる。
すると――
皿の上には、光り輝く肉料理が鎮座していた。
その美しさに、会場中が息を呑む。
「な、なんだあれは……!」
肉そのものがまるで宝石のように輝き、見る者を魅了するような神秘的なオーラを放っていた。
「……見た目のインパクトがすごいな」
三好は警戒心を抱きながらも、その異様な光景を見守った。
禁断の肉の味
審査員たちは慎重にナイフを入れ、一口ずつ口に運ぶ。
すると――
「う、うまいっっっ!!!」
審査員たちは叫び声を上げながら、次々と服がはじけ飛び、裸になっていった。
観客席が騒然となる。
「またかよ!」
三好は頭を抱えた。
今までの試合でも同じ現象が起きていたが、今回は明らかに異常なレベルだった。
まるで魔法のように、審査員の服が弾け飛んでいく。
しかし――
「ぬぅぅぅ……!」
審査員の中でただ一人、テイストキングだけが必死に耐えていた。
「こ、これは……なんという力だ……!」
彼は震える体を押さえつけながら、服が飛び散るのを堪えている。
「テイストキングの服が……はじけ飛ばない……!?」
観客の誰もが驚いた。
三好も目を見開く。
「さすがに王国最高の料理人ってわけか……?」
審査員たちが次々と昇天するかのような表情を浮かべる中、テイストキングは黒フードの男を鋭く睨んでいた。
「貴様……一体、この料理は何だ……?」
黒フードの男は口元をわずかに緩め、不気味に微笑んだ。
「ふふ……よくぞ聞いてくれました」
ついに、黒フードの料理人の正体と、この料理の秘密が明かされようとしていた――。




