第2話:初めての狩りと異世界の味
スラム街での生活が始まって数日。俺は食べられそうなものを探しながら、なんとか生き延びていた。
「もう腐ったパンは嫌だ……」
初日に食った腐ったパンのおかげで『耐腐食』のスキルは得たものの、それ以外の食事は相変わらず悲惨だった。ゴミ箱を漁ったり、野草をかじったりと、これじゃまるでホームレスだ。
そんな俺を見かねたのか、スラムの住人の一人、トーマという男が声をかけてきた。
「お前、狩りに興味はねぇか?」
「狩り?」
「ああ。街の外に出りゃ、小型の魔物や動物がいる。うまく仕留めれば食料にできるし、毛皮なんかは売って金になる」
なるほど、狩りか。スラムでくすぶっているより、よっぽどマシな生活ができそうだ。
「いいね、俺も行ってみたい!」
こうして俺は、狩りに同行することになった。
翌朝、俺はトーマや他の村人たちと共に村の外へと向かった。
異世界の風景は、俺が知っている地球のものとそう変わらない。大地には緑が広がり、小さな丘や林が点在している。ただし、違うのは時折見かける奇妙な生物だ。
「あれ、なんだ?」
俺が指差した先には、見慣れない動物がいた。見た目はウサギのようだが、角が生えている。
「ああ、あれはツノウサギだな。素早いが、それほど危険じゃねぇ。狩るならちょうどいい獲物だ」
「へぇ……。どうやって仕留めるんだ?」
「まずは網を張って、囲い込む。それから槍で突くんだ」
俺たちは周囲に網を張り、ツノウサギを囲い込む作戦をとった。
トーマが「よし、今だ!」と合図を出すと、俺たちは一斉に追い立てる。
追い詰められたウサギが網に引っかかったところで、トーマが手際よく槍を突き刺した。
「よし、仕留めた!」
「すげぇ……」
俺も槍を手に持ち、意を決して狩りに挑んだ。
「うおおおっ!」
勢いで槍を振るったものの、狙いが甘かった。ツノウサギは素早く身を翻し、俺の攻撃をかわす。
「ちょっ、こいつ動きが速すぎる!」
「慌てるな、狙いを定めろ!」
トーマの助言を受け、俺は落ち着いて構え直す。ウサギの動きを観察し、跳躍した瞬間に槍を突き出した。
「っしゃあ!」
槍先がウサギの胴体に刺さり、その場に倒れ込んだ。
「やった……! 俺、狩れたぞ!」
「悪くねぇ。初めてにしては上出来だ」
こうして俺は、初めての狩りを成功させた。
その日の夜、村に戻った俺たちは、狩ったツノウサギを調理することにした。
「こうやって皮を剥いで、肉を切り分けるんだ」
トーマの指導のもと、俺はウサギの毛皮を剥ぎ、肉を切り出した。焚き火で炙ると、香ばしい匂いが立ち上る。
「おお……、めっちゃうまそう」
待ちきれずに俺は一口かじった。
「うまっ……!」
肉は柔らかく、適度な噛み応えがある。ジューシーな肉汁が口の中に広がり、異世界で初めてのまともな食事に感動した。
「こういうのを食べていけるなら、狩りも悪くないな……!」
俺はしっかりと腹を満たし、少しだけ身体に力がみなぎるのを感じた。
「食べれば強くなる……これが暴食スキルの力か」
こうして、俺の異世界での狩り生活が始まったのだった。