第14話「幽霊付きの破格物件」
ギルドの待ち合わせ場所に向かうと、すでにカオルがいた。
相変わらずその立ち姿は堂々としており、周囲の女性冒険者たちから熱い視線を浴びている。
「カオルって同性からも人気あるんだな」
三好が隣に立ちながら言うと、カオルは肩をすくめて軽く笑った。
「まあ、よく言われるけど、あんまり気にしてないよ」
そう言って気にする素振りも見せないあたり、本当に興味がないのだろう。
ほどなくしてグレースとマリアもやってきた。
「お待たせしました!」
グレースが元気よく挨拶し、マリアが
「今日は何をするの?」
と尋ねてくる。
三好は小さく咳払いをしながら提案した。
「そろそろ宿暮らしも限界だし、家を探そうと思うんだ」
「家?」
「そうだ。宿代もかさむし、長期的に見れば自分の家を持ったほうがいいと思うんだよな」
三好の提案にグレースとカオルは賛成の様子だったが、マリアは少し戸惑っているようだった。
「えっと……三好だけの家?」
「もちろん最初は一人で住むつもりだったけど、パーティーの拠点としても使えそうなら、みんなで住むのもアリかなって思ってる」
「だったら、大きめの家のほうがいいよね」
グレースが嬉しそうに言うと、カオルも頷いた。
「確かに。ギルドからも通いやすい場所なら便利そうだな」
「俺、男なんだけど、一緒に住んで平気なのか?」
三好が確認すると、グレースとカオルは顔を見合わせた後、あっさりとした口調で言った。
「部屋が分かれてれば問題ないでしょ?」
「そういうこと」
予想以上にあっさりとした反応に三好は苦笑するしかなかった。
不動産屋へ
さっそく不動産屋へと向かい、物件を探すことにした。
不動産屋の店内にはずらりと家の情報が並んでいる。
ギルドの近くや人通りの多いエリアの物件はどれも家賃が高い。
一方で町の外れにある物件は家賃は安いが、ギルドまでの距離が遠くなるのがネックだった。
「なかなかちょうどいい物件がないな……」
三好が腕を組んで悩んでいると、不動産屋の店員が興味深そうに言った。
「それでしたら、こんな物件もありますよ」
そう言って紹介されたのは、町の中心から少し離れた場所にある二階建ての住居兼店舗。
広い店のスペースがあり、二階には複数の部屋があるという。
「おお、悪くないな……」
「しかも破格の安さです!」
「……そんなに安いってことは、何か訳ありってことだろ?」
三好が鋭く指摘すると、不動産屋は苦笑しながら頷いた。
「実は……この物件、幽霊が出ると言われておりまして……」
「幽霊?」
三好たちは顔を見合わせる。
「はい。夜になると奇妙な物音がしたり、勝手に物が動いたりするとのことで、借り手がつかないんですよ」
「なるほどな……」
「ちなみに、現在のオーナーさんがギルドに依頼を出して、誰かに調査をお願いしているらしいですよ」
三好は顎に手を当てて考えた。
「ギルドに依頼が出てるってことは、俺たちが調査すれば、もしかすると安く買えるかもしれないってことか?」
「ええ、そうなる可能性もあります」
グレースは少し考えた後、
「面白そうだから、見に行ってみましょう!」
と提案する。
カオルも腕を組みながら
「幽霊なんて本当にいるのか」と言う。
「じゃあ、一度見に行くか……」
こうして三好たちは、幽霊が出るという噂の物件を見に行くことになった。




