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第1話:転生、暴食スキルとともに

 目を覚ますと、そこは白く光に満ちた空間だった。ふわふわとした感覚の中、俺は目の前に浮かぶ女性の姿を見つめる。

「あなたは死にました」

 唐突な宣告だった。

「……マジで?」

「ええ、交通事故による心停止です」

 俺、三好食みよし たべるは、しがない会社員だった。毎日朝から晩まで働き、ろくに食う暇もなく、終電ギリギリで帰宅し、気がつけばまた朝。そんな生活を続けていたら、ある、日交通事故で死んだ。

 俺は大きなため息をつく。

「はぁ……。もっと楽な人生がよかったなぁ」

 目の前の女性はどうやら女神らしい

 女神は静かに微笑んだ。

「では、願いを叶えましょう。あなたを異世界に転生させます」

「マジで!? じゃあ、働かなくてもいい能力が欲しい!」

 今度こそ俺は楽な人生を送りたい。二度と働きたくない。そう訴えた俺に、女神は少し考え込んだ様子を見せる。

「うーん……。実は、すでに『怠惰』と『色欲』のスキルは他の転生者に取られてしまっていて……」

「えっ、もうないの? じゃあ、他に楽して生きられるスキルは?」

「そうですね……。残っている中では、『暴食』のスキルが該当するかもしれません」

「暴食?」

「簡単に言えば、食べたものの力を取り込むスキル です。

 たとえば魔物の肉を食べれば、その魔物の能力を一部得ることができます」

「おおっ、それは強そう!」

 俺は期待に胸を膨らませた。

 食うだけで強くなれるなら、戦わなくてもいいじゃん。

 戦士や冒険者みたいに鍛えたり、危険なダンジョンで命をかけたりする必要もない。

 美味しいものを食ってゴロゴロしてれば、いつの間にか最強になってるなんて最高じゃないか!

「いいね、それちょうだい!」

「では、暴食のスキルを授けます。それでは、良き異世界ライフを!」

「おい、ちょっと待っ──」

 俺の抗議も虚しく、光が弾ける。


 異世界転生、スラム街スタート

 次に気がついたとき、俺は見知らぬ街の路地裏に転がっていた。

「うぅ……、いきなり放り出された……?」

 身体を起こし、周囲を見渡す。ボロボロの建物が並び、道端には薄汚れた子供たちがうずくまっている。どう見ても裕福な場所ではない。むしろ、異世界版のスラム街っぽい。

「腹……減った……」

 突然、腹の奥から強烈な空腹感がこみ上げてきた。そうだ、俺は暴食スキルを持っているんだった。とにかく何か食わないと!

 あたりを見回すと、ゴミ箱の中に何かがある。腐りかけのパンのようだが……。

「……食えるのか?」

 試しに口に入れてみる。

「うわ、まずっ!」

 思わず吐き出しそうになったが、突然脳内にメッセージが浮かぶ。

 〈腐ったパンを食べました。消化成功。『耐腐食』の耐性を獲得〉

「おおっ、スキルゲットした!」

 なるほど、こういう感じで食ったものの能力を得るのか。……ん? ということは、もっとマシなものを食えば、良いスキルが手に入るんじゃないか?

「よし、メシ探しだ!」

 こうして、俺の異世界での食べ歩き……じゃなかった、生き抜くための食料探しが始まったのだった。


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