先輩、料理できなさそうですよね!
「先輩、料理できなさそうですよね!」
そう言われて、はたと考え込む。
料理ができるとはどの程度の水準を指すのか。
自炊はやらない事はない程度。時間とお金と気力という諸要素の問題で、やる時期とやらない時期とがある。
といっても、決まって鍋かカレーかハンバーグ程度のものだ。鍋とカレーは数日持つし、ハンバーグは冷凍して備蓄可能だから。
切断、煮沸ないし切断、混合、加熱という機械的工程——科学の実験のような——を料理と呼ぶのは烏滸がましい気がする。
ちなみに私は、料理のできない人に典型的に見られる傾向、レシピを遵守せず、何か色々入れてみたくなる症候群だ。
色々入れるというのも、素材の味やら料理のコンセプトを理解して居れば、あるいは料理のセンスが有れば良いのかもしれないが、そういうのと無縁の私は毎度痛い目を見ている。
とりあえず、水の代わりにジンでカレーを作ってはならない。ポリジュース薬が完成してしまう。
ああ、そういう意味では私は由緒正しき料理ができない人にカテゴライズされるのか。
あの誰と張り合っているか自分でも分からない謎の反骨精神と好奇心に打ち克つことができないのは何故だろう。天邪鬼というか何というか。
どのみち被害者は一名なのだからやりたいようにやればいい。そう思っているからだろうか。
珍しいものを見つけるとつい買ってしまう。ドラゴンフルーツとか、鯨肉とか、果ては食用ゴ◯ブリまで。料理の仕方さえ分からないのに、衝動でカゴに放り込んで、後から調理法を調べる。
料理というより実験で、お腹と同時に好奇心を満たしたいのかもしれない。
大きなスーパーに行くと、博物館にでも来たかのように色んな商品を見てしまう。あれが100年後に再現されたら、絶対博物館として成立する。十分入館料とっていいと思うのだ。
買い出しは好奇心を満たす狩りみたいな所がある。軍資金の問題で大半の食材についてはウインドウショッピング状態ではあるが、いつかは。
まあ、こういう思考回路の人間が「料理ができなさそう」なのは事実で、実際、料理ができないのも確かなのだろう。
そんなことを雑談中に思った。