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5.どうしてこんな事に!


「あら、可愛いじゃない」

「ありがとうございます。もう大丈夫ですので」


 失態である。いえ、やらかしてしまった。そもそも体調が悪い時点で臨時休業にすれば良かったのよね。  


「あぁ、どうしよう」


ふらついてしまい、お客様に助けてもらったのは感謝している。けれど、ベールは外れてしまうし、なによりも。


「我ながら清々しいくらいの壊しっぷりねぇ」


 そう、今日のお客様である、ユリア・リュア様が、仕切りを粉々にして、ふらつき床に頭を打ちつけそうになった私を抱きとめたのだ。


『お試し価格って言われたんだけど、いい値段したんだよなぁ』


あの時のジェイの言葉が辛い。 


 どれだけ働けば返済出来るかしら。


「組み込み方が甘かったかしらね。これでどぉ?」


 何故かまだガッチリと抱きとめられたままなので後ろを見やれば、砕けた欠片が光りながらそれぞれくっついていく。


「ん、いいわね。今回のほうが密に編んだから強度も段違いよ」

「もしや貴方がこれを?」

「そうよぉ。私が、あいつに試作であげたの」


 きょとんとした顔は、直ぐにドヤァと変化した。


「色々とありがとうございます。あの、修理代はおいくらになりますでしょうか?」


 先程のふらついた原因、月に一度くる生理で痛むお腹を無意識にさすりながら恐る恐る聞いた。


「んー、未来屋さんってこの後の予定はある?」

「ありましたが、これから連絡して臨時休業にしようと思っております」


 今日はもう申し訳なけれど、これでは使い物にならないもの。


「え、あの」


何故か横抱き!


「重いし危ないですよ!」

「重くないし、このままくっついていた方が移動が危なくないのよ」


移動って。


「じゃ、行くわよぉ」

「眩しっ」


 緩い声の後の眩しい光に思わず目をつぶった。


「着いたわよ。転移酔いはないかしら?」


 ストンと着地させられた私は、一瞬よろめいたものの特に変化は感じない。


「あ、こっちはまだよね」


ヒョイ


「え、ちょ」


降ろされたはずなのに、また抱えられてソファにそのまま座わらされて。


「あの、降ろして下さい!」


 本当に重いから止めて。そして距離が近すぎる。


「ほら、辛いんでしょ?」


 意外にも大きな手が私の今まさに痛む下腹部をすっぽり覆い、じんわりとした温かさがひろがっていく。


「楽になってくるでしょ?一気に力を流すと貴方に負担がかかるから、もう少し待ってね。どうかした?」


 あ、なんかぼんやりしちゃったわ。


「いえ、手が大きいなと」

「そうかしら? まぁ両生体だからね」


両生体?


「知らなかった?」

「はい」

「ふーん、貴方、変わった気配がするし、この世界の魂じゃなさそうだから、知らないのも無理ないのかも」


 そんな事まで分かるの?確かこの方は魔法使いよね。


「というか、ここ何処かしら?」


 改めて周囲を見渡すも窓からは空しか見えない。


「此処?安心安全の私の仕事場」


 私は、場所を知りたかったのだけど。


「それより、なんかお嬢ちゃんから近親感ある気配がするのよ。あ、これね」


 指でつつかれたのは、あの隊長さんから貰ったピアス。


「これ、アタシの師匠が作った物なんだけど。お嬢さんは、グレインの恋人?」

「え?違います」


 お客様として本人は嫌々来ただけな関係よね。


「ふーん。あのグレインが。試してみよう」

「あ、駄目ですよ!」

「これより良いの作ったあげるから」


 右耳からフックを抜かれて、とられてしまった。手を伸ばすも抱きかかえられたままで上手くいかない。


「まって」


カシャーン


 魔法使いは、私が、隊長さんに言われたように、ピアスを床に叩きつけた。


「どうして壊しちゃうの!?」


 綺麗な青色は、今や四方に飛び散り跡形もない。


「だって、気になるじゃない?夜会で女に見向きもしない男が。ねぇ、お嬢ちゃんは知っているのかしらないけど、強力な防御魔法と追跡魔法が組み込まれているの」


追跡魔法?


 私の表情を見て満足そうな美女は艷やかな真紅の髪をかき上げ。


「楽しくなってきた」


それはそれは嬉しそうに笑った。





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