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1. 頼んでいないのに次の人生が始まりました

 私は、気づいたら草原に立っていた。風が草を揺らしサワサワと柔らかい音が耳をかすめていく。


「おかしい」


 そう、何十回と考えたのにまだその答えが出ない。


「夢でもあるまいし。そもそも死後人間が夢をみるなんて聞いたことがない」


 いや、何事も100%とは限らないではないか。死んだ人から話を聞いた事がないのだからと享年五十歳で生を終えた竹村さくらはウンウンと一人頷いた。


「あら?人集りになっているみたい」


 ふと先を見渡せば、少し丘になっている場所に人が見えた。それも一人や二人ではない。


何かしら?


「危なくないなら行ってみようかしら。どうせ何時までもここに立っていても仕方がないし」


私は、丘を目指し歩き始めた。



〜✻〜✻〜✻




「皆さーん、一列に並んで下さいね〜。守れない方は最後尾になりますよぉ」


 そこには何十人もの人が。皆、私を含め白いロング丈の服を着ていた。子供や成人まで年齢もさまざまなようだ。


「そこのあなた、大丈夫ですかぁ?この列、比較的空いているから並んで下さいねぇ」

「え、ちょっ、わ!」


 背中を問答無用で押されて、いくつかある列の内の一つである最後尾に並ばされてしまった。


カラン♪カラン♪


 まだ見えない前の方から力強い鐘が鳴っている。この音は馴染みのあるアレだ。


「地元のスーパーでも定期的にあったわ」


 三千円以上購入すると、そのレシートで一回クジが引けるやつである。


カランカラン♪


 でも、この列は何なのかしら。何より、私は病院で最後を迎えたはずなのよ。


「と、とりあえず此処からはなれましょう。あれ?」


 列から離脱しようとしても、脚が動かない。どうして?!


ガシッ


「ヒッ」

「お客さん、困るなぁ。ルールは守らないと。ただ並ぶだけだからねぇ」


 突然、背後から両肩に手を置かれ、振り向けば誘導している人がいた。笑顔だけと、胡散臭すぎる。なにより、スーツを身に着けているのだけど、ネクタイから靴まで全身真っ白なのだ。極めつけは髪まで白い。


……やっぱり変よ。


「珍しく覚醒したままか。こういう客が一番面倒なんだよなぁ。あ、此方の話です。お気になさらず。あまり間を空けずお進み下さいねぇ。あ、そこじゃなくて右の列ですよ〜」

「ちょっと!」


 まだ話は終わっていないのに、白スーツ男は去っていってしまった。




「はい、大変お待たせいたしました〜。次の方、どうぞぉ」


 感覚で十五分くらい待っただろうか、ついに私の番がやってきたらしい。


「一回きり、この取ってをつかんでゆ〜っくり回して下さい〜」


 私の記憶している回すやつより一回りほど大きいそれは、木で作られた特に馴染みのやつだ。


「わかりました」


 列からは逃げられなかったし、もう諦めてやるしかない。


ジャラジャラ


 中で玉が移動する音が聞こえあと一周目というところで玉が勢いよく飛び出した。


カンッ


「おっと」


 トレーからバウンドした玉をなんとかキャッチして、握った手を開いてみれば、きらきらした透明な玉である。


「お〜〜!出ました!2等賞!おめでとうございますー!」


 2等賞って何がもらえるの?あ、張り紙がある。会議室にあるようなボードに何やら書いてあるそれを見ようとしたけど、文字がやたら小さい。


「はい、では、いってらっしゃいませ〜!」

「え?」


 何処へと聞く前に強く背中を押されて。


「ちょ、何よこの扉!」


カランカラン〜♪


 鐘が鳴り響く中、私は、真っ暗な空間に問答無用で落とされた。



ザワザワ

ザワザワ


「嬢ちゃん、大丈夫かい?」

「え」


嬢ちゃんって私?


「何が何だか、眩しい」


 差し込む光に何度か瞬きを繰り返せば。


「何処よ、ここは」



私は、見たこともないレンガ造りの街で座り込んでいた。






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