表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

次の日、老婦人がまた話しかけてきた。

今度は私の左肩のすぐ上あたりを見ながら。

「おやおや、こっちはお嬢ちゃんかい。あんたも血まみれで痛そうだね。かわいそうに。でも私はもう今は力がなくて、なにもしてあげられないんだよ。ごめんね」

そして本当に悲しそうな色を顔に浮かべた。

いつもは呆けた顔で、表情と呼べるものはほとんど浮かんでは来ないというのに。

表情らしきものを浮かべたのは、初対面であるはずの、他の患者を見舞いに来た中年男性に「舞子!」と叫んで抱き着いたときくらいだ。

舞子とは、老婦人の孫の名前だそうだ。

見知らぬ中年男性と、女子中学生の孫を間違えるくらいにボケが進行している老人のいうことだ。

私はもちろん相手にしなかった。

しかし老婦人が右肩上と左肩上に話しかけてくるのは、一度や二度ではなかった。

ほぼ毎日なのだ。

それはもはや日課と言っていいほどだ。

内容もいつも同じ。

そしていつも悲しそうは顔をするのも同じだ。

それは病院内でも話題になった。

いろんな人に話しかける老婦人だが、同じ人に同じ内容のことを言うなんて、まずないのだ。

それなのに私の場合、いつも同じなのだから。

そしてしばらくして、ある話を聞いた。

それはかの老婦人が、ボケる前は有名な霊能者であったということだ。



       終

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ