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再会

「これで退院できます。体はもう大丈夫ですか」

「はい、大丈夫です、ありがとうございます」


 一度は死んだように錯覚したが、結局命を落とすことはない。


「体が回復したばかりなので、あまり走らないように気をつけてください」

「はい」

「ん……本当に残念ですが、まだお若いのに」


 医師が私の腹部を見て何か言いたげなので、思わず下腹部を押さえた。

 死んではいないが、ひどいナイフの傷のため、私は二度と子供を産むことができない。


「いえ、生きているだけでも幸いです。本当にありがとうございます」

「そうですか。じゃあ、頑張ってくださいね。刑務所の中でも……」

「はい」


 病院に入院しても判決は変わらず、私は女子刑務所に入れられる……そして光くんは逃げたせいでもっと長く閉じ込められそう。

 とにかく、このまま刑務所に入れられて、その刑務所の中で、何人かの人と一緒に暮らしていた。

 そして刑務所ルームメイトに関しては、まあ...彼女たちの性格はなんというか、ちょっと怖い。


「おい新入り、何の罪を犯したか」

「罪は犯していません」


 自分のことを話して、巻き込まれただけだと言うと、彼女たちはかえって嬉しそうに笑ってくれた。


「刑務所に入れられたみんなそう言うんだから、わかってるよ」

「ええ、私も子供を殺したことがある」

「子供って弱いんだよね。しかもうるさいし。ハハハ」


 やだ、なんなんだよ、この人たちは、どうしてこんなことを楽しそうに笑って言えるの、本当に怖い。

 けどそれ以上に怖かったのは、私が彼女たちに同類だと思われていること。そんなことをしていないのに……。


 そんなヒヤヒヤした状態のまま刑務所での日々は終わり、やがて私は仮釈放されて出所した。


「さて、これからどうすればいいのでしょうか」


 私は刑務所の入り口に立って、どうしたらいいかわからない。

 両親のところに行って……無理でしょう。父も母も私とは以前に縁を切っていた。これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。

 じゃあ先に光くんのお見舞い……ん!

 光くんのことを思い出すと、お腹が痛くなつた。あの充血した目を思い出すだけで全身が震えて冷汗が出てきて、痛い痛い怖い!

 ……やっぱり、彼に会うのはやめよう。


 まずは仁くんのところに行ってみよう!私は仁くんのところに行こうと思っていたが、仁くんが収監されている刑務所に行くと、彼はもういないことに気づいた。


「仁くんは出所したんですか!?」

「ええ,、ずいぶん前に出所しましたよ。あなたは彼の家族ですか。どうして知らないのですか」

「そんな……仁くん、一度も会いに来ない……」

「あ、そういえば、彼は出所時に女の子が来るかもしれないって言ってたから、メモを残してましたよ」

「何ですか!?」


 仁くんは私のことを忘れていないのかもしれない?


「ええと、『子供とバカな女の世話をしろなんて、ふざけるな、やっと自由になつたぞ~』……ということです」

「仁くんがそう言ったんですか!?で、でも私のこと好きだって……」


 私はふらふらと刑務所を出た。

 もう誰のところに行ってもいいか分からない。

 今は一体誰を頼りにできるのでしょうか。


 ……


 どうすればいいんでしょう、健くん。

 しばらく黙っていると、最初に思い出したのは健くんの姿だった。

 会いたい。彼は今、どうしているでしょうか。

 いずれにしても、いま私がしたいことは、彼に会うこと、それだけ。

 出発しようとしたとき、新聞が足元に落ちた、新聞の一面の写真が目に留まった。


「これは、健くん!?」


 健くんの写真が新聞に出ている。横の文字には彼の最近の様子や、何をしたかが大きく書いてある。


「寿命を延ばす技術を開発し、新しい材料を作って人間の生活を改善し、火星に植民し……」


 見間違いか、幻覚を見たのではないかと思い、すぐにネットで調べてみたが、本当だ。

 いつのまにか、私の幼馴染は手の届かないところへ行ってしまった……。


「いえ、まだ機会はある……会いに行きます」


 新聞には、健くんは数日後に出国するので、その時に空港で送別会があると書いてあつた。まだ間に合う、向こうへ行けば彼に会える。

 そう思ってすぐに出発し、空港に向かい、健くんが出発するぎりぎりのタイミングで間に合った。


「……健くん!」


 夜の空港内は人でごった返していた。

 取り囲まれた人々の中に、眼鏡をかけた青年の姿が見える。


「すみません、通してください!」

「わあ、誰だよこの女!?」


 まるで奇跡のように、私は人混みをすり抜けて健くんのそばにやってきた。


「健くん!」


 出ていこうとする健くんを呼び止めた。青年の歩みを止めて私の方を振り返った。

 健くんは相変わらず無表情な様子。彼が変わらないのを見て、私は安心した。


「あの女の人は誰ですか」

「真宮教授が止まっていますが、知り合いですか?」

「あんなに親しげに呼んで、もしかして元カノ?何と言っても大ニュースです!」


 距離を置いて私たちを取り囲む記者たちを気にせず、健くんが口を開くのを見守っている。


「健くん、やっと会えました……」

「……」

「私、健くんにひどいことをしました。ほかの人を選べば幸せになれると思っていたのが間違いでした」

「……」

「こんなに長い時間が過ぎて私はやっと分かりました、私は他と一緒に幸せになりたくなくて、私の幸せは健くんのそばにある、私は健くんと一緒にいたいです!」


「おいおい、この女、何言ってるよ?」

「彼女は真宮を置いて誰かと一緒になって、真宮が成功したのを見て後悔したんですか」

「まさかこれがいわゆるざまあ系かwウケる、今の自分がどんな姿か知らないの?もう遅いよw」


 それを聞いた周囲の人たちは、からかうような声をあげた。


「そうではありません、私はそんな女ではありません!」

「あははは」

「笑わないで!」


 健くんがそうじゃなくても、一緒にいたかったんです!そう弁解したが、周囲からは嘲りの声が上がる。


「確かにざまを見たとは言えない。彼女は私を裏切ったわけではない」


 私が顔を赤らめて言葉に窮していると、健くんは首を横に振りながら口を開く。


「健くん……」


 私は感動して彼を見たが、


「──なぜなら、付き合ってなかった。ただの友達だったんだから」


 健くんはそう言うと、振り返らずに歩き出した。


「ちょっと健くん!あっ……!」


 彼に追いつこうとしたが転んでしまった。健くんは用心棒に護衛されて、行ってしまう。周りの人は私が転ぶのを見て、ますます笑った。


「なんですか、勘違いですか~」

「この女の勝手な思い込みでしょう」

「怖いね」

「うるさいうるさいうるさい!あんたたちなんかに、私の気持ちがわかるわけがない…!」

「あんたは何か有名な人か、どうして私たちがあんたのことを理解しなければならないのよ」


 嘲笑の声はますます大きくなった。そのとき、人の群れの中から声がした。


「あ、そういえばその人に見覚えがありました。そいつdvの女じゃないですか」

「誰?」

「暴力で子供を殺した人ですよ」

「いや、そんなことはしていません!」


 みんなが議論しているうちに、私を見る目も次第に悪意を帯びた。


「また人を殺すつもりか!」

「自分がどんな姿か知らないのか、よくも我らの英雄と知り合いのふりをしてくれたな!」

「あなたのような人は、彼には相応しくない——!」


「死ね毒婦!」

「痛い!?」


 その時、群衆の中の一人が私の頭に石を投げた。それを引き金にして、多くの人が私にモノを投げるようになつた。

 反論してみたが、群衆に比べて私の声は小さすぎて、誰も私の声を聞いていないし、もし聞いていたとしても、言い訳だと思うでしょう。

 私に投げつけられるものがどんどん増えていったので、結局空港から逃げ出した。


 うう……ひどい、そんなことしてないのに。何も悪いことをしていないのに。

 ……私は健くんと一緒にいたいだけなのに、それが何か悪いの?


 夜の中を、あてもなく歩いていた。健くんもいなくなった今、どこに行けばいいの。

 目的もなく進んでいくと、いつの間にか目の前に建物が現れた。


「ここは……健くんのうち」


 いつの間にか健くんの家の前まで歩いていたようだ。

 懐かしいね、昔はここで健くんが出ていくのを待って、一緒に学校に行った。健くんと一緒にここに住んでいる姿を妄想したこともあったし。


「痛い」


 頭の痛みで現実に引き戻され、頭を撫でると手のひらが血で汚れていた。さっき石をぶつけられた傷口から、血が流れて、視界がかすんでいる。

 どうしてこんなことになった、私はいったいどこで間違えたのでしょうか。

 叫ぼうとしたら、口から血が出た。同時に、腹部に激しい痛みを感じて、私は床に倒れた。


「え……」


 お腹を見ると、服を通して赤黒い血が滲み出ていて、手で止めようとしても無駄だ。

 さっき走ったときに腹の傷口が開いたみたい……。

 痛みと一緒に悲しみが襲ってきて、めまいがする。空が崩れ落ちてくるように、近くなった。健くんと別れて以来、二度と起こらなかったことがまた起きている。


「う……」


 吐き気がしたが、口からはさらに多くの血が出た。


 私は……死ぬのか。

 やだ、死にたくない、健くんにはまだ言っていないが……彼のことが大好きだ。


「健くん、助けて……」


 ──そして、突如、それは目の前に現れたのだ。


「いやあ、実にいい夜でしたね~」

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