表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/15

悪夢の始まり

 退学しようとしていた間、私たちは淳くんを探していたが、彼は全然学校に来なかった。

先生から淳くんの住所を聞いて訪ねて行ったのだが、家には誰もいなかった。近所の人の話によると、淳くんは引っ越したようだ……。

 結局、退学した私は家で子育てをすることになつた。


 両親の許可で私と仁くんの関係は認められ、私は仁くんの家に住んで子供の世話をしていて、お母さんも時々子供を実家に連れて帰って世話をしている。

 何もかもよくなってきたようで、これも悪くないかもしれない、これで幸せな生活が送れるかもしれないと思っていると、仁くんが帰ってきた。


「おかえり、うん、仁くん、それは何ですか?」


 仁くんは手にボストンバッグを二つ提げている。


「あ、これか、ほら」


 仁くんは手に持っていたボストンバッグを開けて、中のものを見せてくれた。


「これは!?すごいお金ですよ!?」

「ホホホ、俺の友人を覚えているだろう。これは彼の仕事を手伝ってもらった報酬だ~」


 そういえば、仁くんには、体にタトゥーを入れている背の高い友達がいて、時々家に来て話をしていた。


「このお金、全部あの人がくれたんですか?それ…大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ、保証するから安心してね!」

「でも……」

「あ?信じてくれないの?」


 仁くんは顔から笑みを消し、不満そうに私を睨んでいる。


「いえ……」

「ごめん、別に意地悪してるわけじゃないんだけど、一生懸命働いて稼いだお金なんだから、俺の仕事がいくらも儲からないことをわかっているでしょ。これだけのお金があれば、子育ての心配はしなくていいんだから」


 仁くんは笑顔を取り戻し、ボストンバッグを持って入ってきた。ボストンバッグのお金をセーフティーボックスに隠してから、彼は振り返った。


「しばらくここに隠して置こう。ほかの人には内緒よ。特にご両親には」

「ここに隠すんですか。銀行に置いたほうがいいんじゃないですか」

「これなら安全だと思う。いいか?」

「……ええ」


 仁くんはにこにこしているが、妙に威圧感があるので、私はうなずいた。


「じゃあ、先にお風呂入るね。あ~疲れた~」

「え、仁くんの服は──」


 仁くんが伸びをしたとき、服に赤い印がついているのに気づいた。

 ……なんか……血痕みたいな感じ。


「あ、それは仕事中に汚れてしまった。洗ってくれないか」

「はい」


 仁くんは私に服を投げると、お風呂に入った。私は洗濯をしながら先ほどのお金のことを考えている。

 そのお金に問題はあるか?お母さんに話すか?……でも仁くんが大丈夫だって言うんだから信じるべきでしょう。

 それに、今はお金も必要だし、お金があれば将来の生活はもっと便利になるだろう。

 そんなことを考えているうちに、お金の問題を忘れて、私の生活は元に戻ってしまった。


 それからしばらくしたある日。


「あの、すみません!誰かいますか?」

「来ました!」


 誰かがドアをノックしたので、私は片手に赤ちゃんを抱いてドアを開けた。仁くんが帰ってきたのかと思ってドアを開けると、スーツを着た青年が立っていた。

 私がドアを開けると、青年はきょとんとした。


「わあ、きれい…!」

「あの……?」

「あ、ああ、失礼ですが、こちらは後藤仁のお宅ですか?」

「あ、はい。何かご質問ですか」

「それは、ですね、あの、私たちは──」

「何やってるよ!」


 スーツの青年は、なぜか私を見てためらいた。すると青年の後ろから声がした。

 同じようにスーツを着た、青年より少し年老いた男が青年の頭を叩いて現れた。


「女性を見るとバカみたいな、ふん」

「すみません、先輩……」

「まったく、あなた、あいつの同居人だろう。これは捜査令状だ。捜査する、いいだろう」

「捜索、えっ!?」


 中年男が捜査令状を出すと同時に、私がうなずく前に大勢の人が家の中に飛び込んできた。

 後になって中年男が説明したところによると、彼らは警察の人で、仁くんの家の中に何かを探しに来たのだそうだ。


「どうして警察がそんなことをするんですか、仁くんは何か悪いことをしたんですか?」


 警察が家の中を荒らしているのを見て私がつぶやくと、隣にいた中年の刑事が笑い出した。


「お嬢ちゃんは知らないのか。まあ、あなたも容疑者だから教えてやろう。あいつは金を奪ったんだぞ」

「金を奪った?」

「ええ、トラブルで事務所を襲って、人が死んだらしいんですよ」


 そう言いながら青年は写真を差し出した。そこに写っていたのは、仁くんの友達……。


「証人の話によると、お金の一部がここに隠されていたそうです。それで捜しに来たんです」


 その言葉を聞いて、私はこの前仁くんが持って帰って来たお金と、着物についていた血の跡を思い出して真っ青になる。


「ったく、若いくせにろくなことしないで、結婚してないんだろう、つまり婚外子か、ふん」


 私を見て中年男が首を横に振ったとき、警官の一人が叫んだ。


「ありました!」

「よし、これでおしまい。さて、お嬢さん、盗品保管の疑いがあるから、事情聴取にご協力いただけないでしょうか?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ