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プロローグ

「あの、健くん!ちょっと話があるんですけど!」


 すぐに空気に溶けた言葉とともに、目の前の彼の視線が私に注がれた。

 彼の目には何の感情もないが、その目で見つめられるだけで、なぜか胸が締め付けられるくらい痛い。


 私──見真純(けんしんじゅん)は、一体どこで間違えてしまったのだろう、とそんな思いが頭をよぎった。


 自分の幸せを求めるのは、人間として当然のことである。私にとっての幸せとは、好きな人と一緒に家庭を持ち、幸せで楽しい生活を送ること。

 このために一生懸命頑張ってきた。それなのに……どうしてこうなるの?


「……ごめん、健くん、私、その人たちと一緒にいることに決めました」


 狂った歯車のように、いつの間にか物事がうまくいかなくなり……そして、気づいたとき、私は二人の男を引き連れて、一人の少年の前に立っていた。


 少年の名前は真宮健一郎(まみやけんいちろう)、私の親しい幼馴染みである。


 ……いや、だったと言うべきだ。


 私の後ろにいる二人の男性は、それぞれ淳くんと仁くんという名前で、私を幸せにしてくれる人である。

 一体どうしてこんなことになってしまったのだろう、思わず考えてしまう。


 ……やはり、最初から説明しなければならない。


 同じ学校に通い、家も近かったため、純と健一郎は幼い頃から一緒に遊んでいた。 二人はとても仲が良かった。

 幼い頃から、純は一緒に過ごした少年のことが気になっている。両親が科学者である健一郎は、星座の観測だとかブラックホールの理論だとか、今の純でも理解できないような難解なことをよく言っている。


 それ以外に、健一郎はオールラウンダーであり、どのテストも1位を取る……両親が普通の人で、成績も普通の純にとって、イケメンで賢い健一郎は、まさに物語に出てくるハンサムな王子様のような存在!


 ……ただ純はそう思っていても、他人から見ればそうではない。 博識ゆえに、ほとんどの人は健一郎の言うことを理解できない。わからないと言われるたびに、彼は、どうしてそんなことも理解できないのか、という顔をするのだ。


 悪意はないものの、無表情な言動は他人を見下しているように見えて、彼を嫌う人が少なくない。

 しかし、健一郎はそれを気にもせず、言い訳もせず、時間が経つにつれ、クラスの中で孤立してしまった、誰も彼と話そうとはしなくなつたが……。


「違いますよ!あなたたちを孤立させたのは私たちです!そうでしょう健くん!」


 普通なら誰も彼に二度と近づきたくないはずだが、純だけは例外だ。


 健一郎は何も悪いことをしていない、こんな扱いを受けるべきではない、と純は思っていたので、誤解を解いてみようとしたが、それは無駄だ。誤解が解けなかったばかりか……健一郎とは付き合うな、と純は逆に忠告されていた。


 しかし忠告は逆効果だった。あなたたちが私たちを孤立させるなら、私たちもあなたたちを孤立させましょう!このとき純はそう思った。そんな思いから、純と健一郎は二人で行動を共にするようになつた。

 こうして純と健一郎は親しくなり、それに健一郎のことを健くんと呼ぶようになる。


 そして、幼なじみの横顔を見ているうちに、純は自分の中に特別な感情が芽生えていることを気づいた。

 健くんと一緒にいると、時間がいつも駆け足で過ぎて、胸がどきどきして、すぐに、純は自分が健一郎のことを好きだと自覚した。


 というわけで、中学生の頃から純は健くんに告白を試みるが、顔を見ているとなかなか好きとは言えず、遠回しな告白しかできなかった。

 しかし、頭のいい健一郎は恋愛とか好きとかが何なのか全くわかっておらず、このような告白では彼を攻略することはできない。


 それでも純は諦めず、高校生になった日、家の近くの公園で、純は健くんにもう一度告白する──。


「健くん、あの、これあげます!」

「ありがとう」


 チョコを渡すと、健くんはありがとうと言いながら受け取った。


「あの、先ほどの話ですが、どう思いますか?」

「先ほどの話は…俺があなたとの関係をどう思うかということのか?」

「ええ、私たちの関係について、どう思っているんですか?」


 先ほど健くんに話したことがあるが、私との関係について健くんがどう思っているのか知りたい。ようやく返事があつたが──。


「ただの友達だろう」

「え!?ただの友達!?」


 いや、いつものようにわからなかっただけかもしれない、そう思って再び口を開いた。


「ただの友達じゃないでしょう!健くんは私のこと好きじゃないんですか?」

「強いて言えば、あなたのことが好きではない」

「え……?」


 その瞬間、何かが壊れそうな感じがした。


「でも、それは……好きじゃないんですか……少しの好意もないんですか?好きじゃないんだったら、どうして私とずっと一緒にいるんですか?」

「一緒?」

「ええ、いつも一緒ではないですか」

「いつも一緒?あなたが一方的に俺に付きまとうのではないのか?」

「え、で、でも健くんにもいろいろもの作ってあげました……」

「それもあなたが一方的にやりたいからだろう。そうしろとは言っていない」

「───!」


 ふと気が付いたが、確かに健くんの言う通り、いつも一緒にいると言っても私が一方的に付きまとっているだけなのだ。

 プレゼントをあげるのもそう。健くんにはいつもプレゼントをあげているが、そうするなんて、一度も言われたことがない。

 ということは、すべて私の思い違いで、健くんとはお互い好きだと思っていたのだが、実際そうではない……。


「そ、そうですか、ごめんね、間違えました、えへへ……」

「……」

「……」

「……」

「……あの、お時間をいただいてごめん。じゃ、お先に失礼します」


 無理に笑顔で別れた後、私はあてもなく道を歩いた。


「……ああ」


 空はまだ明るいのに、目の前の世界はとても暗いと感じる。胸がちくりと痛んで、穴が開いたような気がした。


 健くんが好きではないと言ったときのことを思い出すと、頭がぐちゃぐちゃになる。

 そのあとの記憶は曖昧で、気がつくと翌朝になっていた。お母さんに起こされてから、私は涙でいっぱいのベッドで眠っていたことに気づいた。


 時計を見ると、もう遅い。私の家が健くんの家が近いので、普段この時間になると健くんの家の前で健くんが一緒に登校するのを待っていた……。


「学校……行きましょうか」


 学校に着き、教室に入ると健くんの姿があつた。

 健くんはいつものように席に座って、難しそうな洋書を読んでいた。まるで昨日告白されたのが別人であるかのようだった。

 いつものこの時間、私は彼につきまといに行って、何を見ているのですかと尋ねる。でも今の私はただその場に立ち尽くしている。


 健くんが私のことをどう思っているのかがわかってきたから。……私はずっと彼につきまとっていた。それわかっていてもつきまとうなんて、そんなこと私にはできない。

 ……それに、怖かった。また健くんの口から好きではないという言葉を聞くのが怖い。想像しただけで震えがくる。


 だから健くんのそばには行かず、そのまま自分の席に行向かう。

 この後、必要がない限り、健くんとの接触も極力避けすている。こうして一日二日が過ぎ、クラスメイトも私の様子がおかしいことに気づいた。


「えっ、純、真宮と喧嘩したの?最近一緒に行動していないのは珍しいね」

「いや、そうじゃなくて、ちょっと勘違いしたことがあって、関係がこじれちゃったんです……」

「そうなんの。でもまあ、それはきっと真宮のせいでしょう。あいつ、女心がわからないからね」

「そうですよ、お説教しましょう!」

「そんなのダメです!これ以上迷惑かけちゃダメ……!」


 慌てて友達を止めると、心配そうな目で見られた。


「本当大丈夫?純、正直言ってこのところ本当に変なんですよ」

「大丈夫ですよ、もし本当に何かがあったら、みんなに言いますよ」

「うん……わかった」


 ようやく友人を落ち着かせた後、私は息を吐いて一人で家に帰る道を歩いていた。


 まさか今の私の状態が良くないことは友達にもわかった。なんだかこのところ頭がぼんやりしていてる……なんだか世界が崩壊しそうな気がして、空を見上げると今にもどんよりとした空が崩れ落ちそう。


 どうしてそうなのか、実はよくわかっている、願いが叶わないから……。

 今まで私の夢は好きな人に愛されて、好きな人と一緒に家庭を作ることである。でも今になって、好きな人は私のことを好きではないと気づいた。すべては私の思い違い。


「……これからいったいどうすればいいんでしょうか」

「え、見真じゃないか」


 独り言を言っていると、二人の男子が道をふさいでいた。


「どうして一人なんだ?普段は真宮と一緒じゃないか」

「喧嘩でもしたのか、ハハハ~」


 この二人は……確か、同じクラスの男子。彼らは素行不良や校則違反のカラーリングで、いつも先生に怒られていたのが印象に残っている。


 今この二人を相手にしたくないから、二人の横を回ろうとしたが、するとまた行く手を阻まれた。


「……どいてください」

「冷たくしないでよ。俺たちだってあんたのことを心配しているんだからぞ」

「そうよ、そんなに急ぐな」


 背の高い男子の一人が私の腕をつかみ、にこにこしながら近づいてきた。


「随分暗い顔してるね。ひょっとしてフラれた?」

「マジかよ、真宮のやつ、こんな可愛い子が嫌いだなんて、頭おかしいだろう」

「そんなこと、ありません……」


 そう言って否定すると、二人は小さく笑い声を上げる。


「そうなのか?じゃなぜ震えているの?」

「ふふ、そんな奴と一緒にいるのはやめたほうがいいと思うよ」

「そんなつまらない男と遊ぶより、俺たちと一緒に遊んだらどうだ?」

「いや……」

「いやなんて、お前だってそうしたいんだろう。本当に嫌なら、簡単に振り払えるだろう?」


 普段なら、すぐに相手の手を振り払うことができる。でも今は調子が良くないから逃れられない……。

 いや、調子が悪いのは言い訳かかもしれない。もしかして本当に彼らの言うように、私はこんなことを望んでいる?


「だから一緒に来てくれよ」


 そう言われて、私はカラオケに連れて行かれた──。

こういうジャンルを書くのは初めてなので、何かおかしいところがあれば指摘してください!

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