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夢
深い眠りについたのか、わずかな光が遠くに見えた。
その光はだんだんと大きくなり、一瞬で絢を別の世界へと連れて行った。
「俺はこの子のためにこの世界から足を洗うつもりでいた。しかし志武海はそれを決して許さない……。この子が大きくなったとき、犯罪者の子供であることで人生が狂ってしまわないように俺を殺してくれ……。この子がまだ小さなうちに」
男はそう言った。
「もうそれしか選択肢はないの? もっと別の方法が……」
そう言いかける女の言葉をふさぐように男は言った。
「ない……、志武海の前ではもう……。お前なら志武海に狙われてもきっと生きていけるはずだ」
そして男は女にこう続けた。
「この子は父親である俺の情報の全てを上書きする事が出来るんだ。"素晴らしい父親だった"とも……」
女は少し時間を置き、考えた。
そして黙ってうなずいた。
男の人生をしめくくる人物に自分が選ばれた事がほのかに嬉しくもあった。
女は男に近寄ると、その首にゆっくりと両手を回し、そのまま絞めはじめた。そして段々とその両手には力が注がれていった。
苦しいはずだ。苦しいはずなのに、男の表情は穏やかでそれでいて嬉しそうだった。
二人の瞳からは次第に涙が溢れていった。
女のその両手には愛が満ち溢れていたから……。




