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バロック
「はい、コーヒー」
白洋は身体を一通り拭いたタオルを持ち、立ったまま座ろうとはしなかった。
「ふー……」
絢は白洋を横目にぐったりとソファーに横たわった。
高級そうなソファー。
絢はまた独り言のように話しはじめた。
「私ね、たまに美しく洗礼された存在になりたくなるの」
高級そうなオーディオに電源が入った。
いつもこうして聴いているのだろう。絢は手に取ったリモコンを見ることなく、ボタンを次々と押していった。
オーディオの中にあるCDがセットされ、曲が流れはじめた。
悲しさと恐ろしさを併せ持つ混沌とした曲の
はじまり。
クラシックはそのものがバロックだと言う者もいる。
この世の終わりか、それともはじまりか。
目をそっと閉じると、そこはイタリアの修道院。
天井に描かれている天使たちがこちらに微笑みかけ、まるでこれまでの人生で汚れきった自分を破壊し、新たに再構築してくれるかのような感覚を絢に味あわせてくれる。
白洋はベレッタに手をやり絢に標準を合わせた。




