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幻想の詩  作者: 光輝 圭
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漆黒の帝王

 うだつの上がらない梅雨のある夜。

 強い湿気で風に吹かれた身体は、若干肌寒くも感じた。

 白洋は闇社会、事実上ナンバーワンであろう志武海(しぶみ)という男に呼ばれた。

 都内のやたらとデカいビル。

 闇社会では志武海が自分の権力のシンボルとして建てたビル、通称"コントロールタワー"として知られていた。

 悪趣味。

 手下が数人でお出迎え。

 無愛想。

 いつもの事。

 ビルへと入り、一六階までエレベーターで上がると、もう見飽きたやたらとデカい扉の部屋に通された。

 表ではIT企業の会社ビルとして志武海が所有している事になっているらしい。

 志武海は白洋が視界に入ると、いつもは闇の商談で使っているソファーから腰を上げ、白洋を見た。

 いつものように"仕事"の依頼。

 ある女を殺すよう頼まれた。

 女の名は(あや)

 平然を装ってはいるが心の中は穏やかでない志武海のその様は、容易に白洋まで伝わってきた。

 志武海はテーブルに置いてあるウィスキーグラスを片手に持ち、独特のかすれた低い声で白洋に語りかけた。

「飲むか?」

「いや……」

 志武海はすすめたグラスの手を止めた。

「そうだったな。しかし、殺し屋が下戸(げこ)とはな」

 志武海はそう言葉を吐き捨てた。

 どうやら腹の虫の居所がよほど悪いらしい。

 少々荒々しくグラスをテーブルに戻した。


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