絢と白洋
「怖くないの?」
絢は振り返り、後ろを着いてくる白洋に問うた。
あんな"世にも奇妙な光景"を見せられて、いくら無数のクズをあの世へ葬ってきた殺し屋でも驚かないわけがない。
拳銃で撃たれても死なない生身の人間だなんて。
しかしあの時見せた絢の涙に白洋の感情が揺れ動かされなかったかと聞かれると、それはそれで言葉に詰まる。
「お前を殺すのが俺の"仕事"だ。でないと俺は金を貰えない。今後の信用にも関わるからな」
白洋は平然を装いそう答えた。
「私は死なないのに?」
絢のいたずらに無邪気な表情は白洋を内心困らせた。
痛いところをつく。
いつしか雨が、血に染まった彼女をきれいに洗い流していた。
「どこまでも張り付いて弱点を探し出すしかないだろう。お前を仕留めるまでは」
白洋はそう思った。
「呆れた」
絢はまるで白洋の心の中を覗いたかのように小さくそう呟いた。
自分の家に帰る絢とその後ろを着ける白洋。
間違っても恋人同士には見えない。
警官が通れば一発で職務質問だろう。
そして職務質問をした警官はすぐに殺される。
一気に予定変更となる可能性だってある。
絢は早く歩くでもなく、余裕があるというか何というか。
逆に白洋の方が動揺していた。
閑静な住宅街を抜け、いつしか風景は変わってゆき、二人はあてもなく彷徨う砂漠の放置人の様にも見えた。




