第十一話 変わらぬ地下牢
「ぇぇぇぇぇえええ!!!?」
「煩いよもう、此処何処だと思ってんだよ。」
地下牢だよ。いや、地下だから響くって言いたいのか、それはごめん。僕は叫び声に釣られてやってきた護衛達に適当に言い訳をして追い返していくと、僕とケルトの間を隔てる柵にのしかかり、奥で座るケルトを見る。
「…何だよ…?」
有り得ない、こいつ女性?、しかもお嬢様?こんな物騒な奴が?
「おい今物騒っつったろ。」
「心の中でしか言ってないよ。」
「言ってんじゃねぇか。」
「てか性別はどうよ。口悪いし声低いし、なんせ、」
「…言わなくて良いよそれは。」
彼は呆れたように片膝を立てると、その上にだるそうに腕を乗せた。
僕は気が付く。こいつがお嬢様なら、あの屋敷の彼女は誰なんだ…。とその時、またもあの爆発音が聞こえた。
「派手にやるよねぇ。あの人意外と怖いのよ、しれっと人殺してるししれっと笑ってるし、しれっと爆弾作ってるし。」
「あの人って、ラナさんのこと?」
「他に誰がいんだよ、私の執事兼雇用人はラナだけだ。」
ケルトはパッと立ち上がると、柵に手を掛けて何か細工をしている。そしてガチャッという音と共に南京錠を外すと、お前も来いと言う様に手招きをした。
「え、待ってよ!、南京錠ってどうやって解くの、?」
「ここをこうしてこう。」
「分かんないよ!」
「…フン、しょうがねぇなぁ。」
急いでるんだよと面倒臭そうにケルトが外から僕の南京錠を外すと、早くと急かされながら地下牢から抜け出した。護衛は皆爆発音に駆けつけたのか、僕等はあっさりと脱出を成功させてしまう。
後は王宮から出るだけだ、そう思って出口まで走り出すと、おい、とケルトに止められる。
「何?」
「まだ資料が集まってない。」
「へ…?」
今はそんな事言ってる場合なのか?一瞬、僕だけでもという思いに刈られるが、僕は仕方なく着いていくことにした。此処からの脱出も彼等のおかげだし、なんせ今僕だけが脱出出来ようと、その後の計画が曖昧では意味がない。
ちゃちゃっと資料集めて、ちゃちゃっと三人で出ていこう。そう思ってた。そう思ってたのに…。
「はぁぁぁぁあ?!なんでさっ、なんで僕だけデジャブなんだよ!?」
僕は今地下牢にいた。隣には勿論、誰もいない。
「えぇ、ホント、ついてくんじゃなかったよあのクソ野郎っ‼︎」
あいつは僕を置いて行った。資料を別々に探すと言って僕等が単独行動になった瞬間、あったというケルトの声と護衛が入ってくるのはほぼ同時。僕は慌ててケルトに寄ろうとしたけど、流石と言うべきなのか、ケルトの逃げ足には到底追いつけなかった。
僕は途方に暮れる。こちらに向かってくる、小さな足音を聞きながら。