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達也がクマに名前を送ると、クマからはすぐにPDFファイルのパンフレットが送られて来た。

思ったよりちゃんとしたパンフレットで、ちゃんとした施設なんだと驚いた。

しかも、初日から勝利陣営に賞金百万円のリアル人狼ゲームに参加できるらしい。

もちろん、参加は自由らしいが、参加しない選択肢など達也にはない。

何人が定員なのかわからないが、着いたらすぐに参加を希望しようと思っていた。

クマ曰く、あれから次々に参加希望が来て、結局あの時同席していた全員が申し込んで来たらしい。

大丈夫だろうかとその名前を運営の方へと送ると、何とかそれで大丈夫だと言ってもらえたらしかった。

向こうでも、かなりの数の参加申し込みがあったようだったのだが、それはまた、大盛況だったので無料ご招待第二弾と銘打って、また招待することになったので、今回は人数集めに尽力したクマを立てて、こちらを優先してくれるということだったらしい。

達也は、ラッキーだったと大喜びしながら、当日に向けてしっかり準備をして、人狼アプリでもますますプレイに磨きをかけて備えていた。

それは他のメンバーも同じなようで、よく同村した。

皆が皆、賞金を狙っているようだった。

負けてたまるかと、仕事の僅かな休憩時間にもアプリを起動し、達也はその日に備えて必死に練習していた。


そんな毎日は飛ぶように過ぎて行き、気が付けばもう、当日だった。

達也は、指定された駅にボストンバッグ一個を持って電車で向かった。

余裕をもって、13時の集合だったので、楽に向かうことができた。

その駅はとてもローカルな所だったが、そのお陰で迷うことなくバスを見つけることができた。

何しろ、三つしかない改札を抜けて出ると、そこは回りを山々に囲まれた静かな田舎で、商店なども駅にあるコンビニぐらいしかない。

バスのロータリーも閑散としていて、バス停はたったの二つ、その向こうに、小さめの観光バスが止まっているのが見えた。

…あれかな?

近付いて行くと、バスには「リゾートで人狼ゲーム御一行様」と書かれていた。

一人の若い二十代ぐらいの男が、バスに近付いて来た達也に気付いて降りて来た。

手に、タブレットを持っている。

「…参加希望者様でしょうか?」

達也は、頷いた。

「はい。あの、達也です。」

男は、愛想良く頷いてタブレットを操作した。

「はい、達也様。この度はご参加ありがとうございます。こちらでリアル人狼ゲームの参加希望を聞いておりますが、どうされますか?」

達也は、即答えた。

「あ、参加で。」

相手は頷く。

「はい。では、こちらの名札と、腕時計をお付けになって、お好きな席にお座りください。」

手渡されたのは、7達也と書かれたプレートだった。

それと、銀色の高そうな腕時計だ。

文字盤はないが、どうやらカバーのようなものを開くと中が見える仕様になっているようだった。

達也は言われた通りに名札を胸に付けると、腕時計を巻いて、バスの中へと入って行った。


中には、もう数人が緊張気味に座っていた。

誰が誰なのか、何しろ会った事もないのでわからない。

達也は、思いきって言った。

「あの、オレはナナシです。本名は達也。達也と呼んでくれて良いよ。」

すると、最前列に座っていた三十代半ばぐらいの男性が、お、という顔をした。

「君がナナシか?オレがクマだよ。よろしく達也。」

え、とその顔をまじまじと見る。

確かにクマの声だ。

クマの胸には、5(じん)と書かれてあった。

「クマさん!」と、達也はその側へと行った。「仁さんか。隣りに座っても良いですか?」

仁は、苦笑した。

「どうぞ。というか、そんなに敬語使わなくて良いぞ。みんな同じ参加者なんだし。」

すると、後ろの男が言った。

「ナナシ!オレオレ、又沼!圭太って言うんだ。よろしくな。」

又沼、思ったより若い!

「え、若い!又沼って何歳?」

圭太は答えた。

「声が老けてるってよく言われるけどオレ、25。お前は?」

「オレは21。」と、若い女子達が固まって座っているのを見た。「女子達も…若いな。また後で自己紹介するか。」

仁が言った。

「ほら、早く座らないとまた来てるから。」

え、と振り返ると、確かにまた数人が入って来ている。

達也は急いでボストンバッグを網棚に放り投げると、席に座った。

「ごめん。」

次々に席について行くが、それが誰なのか全くわからない。

到着するまでは仕方がないなと、達也はおとなしくしておくことにしたのだった。


そんなこんなで全員が揃ったので、席は満員だった。

隣りに座ったもの同士は、自己紹介してそれが誰なのか分かって楽しげにしているが、達也からはクマと又沼しかわからない。

とりあえず、到着までの辛抱だと座っていると、バスの戸が閉じて、運転手はバスを発車させた。

さっき受付してくれた男が、前に立ってマイクを手に言った。

「皆様、本日はリゾートで人狼ゲーム特別ご優待旅行にご参加頂きまして、誠にありがとうございます。私は皆様を島までご案内致します、崎原と申します。島では勝てば百万円のリアル人狼ゲームも開催されますので、どうぞ皆様には、お楽しみくださいますように。では、これより皆様に、ご説明を致します。」

皆が、真面目な顔で次の言葉を待つ。

崎原は続けた。

「これから、1時間掛けて港へ参りましてそこで船に乗り換えて島まで航行致します。島までは6時間掛かりますので、到着は夜8時半頃の予定です。そこでご夕食を済ませてから、ゲームのご説明となりますので、時間が空きますし船で軽食が出されます。それでもお腹が空いた場合は、仰って頂きましたらご準備致しますので遠慮なく申し出てください。」

結構掛かるんだな。

達也は、聞きながら思った。

崎原は、タブレットを見ながら揺れる車内で踏ん張って言った。

「…皆様がリアル人狼ゲームにご参加希望とのことですので、それではこちらで役職をお配りします。」と、顔を上げた。「そうだ、その前に。皆様、腕時計をご覧ください。」

言われるままに、腕時計を見る。

ぴったりとくっついていて、痛くはないが外れるのか不安になる感じだ。

崎原は言った。

「島は広いので、行方不明になってしまったり、急な体調不良などがあった時に備えて、全員に装着してもらっております。こちらは全て運営がモニターしていて、迷子になった場合や、心拍が乱れた場合、いち早く駆け付けて皆様をサポート致します。防水加工されているので、入浴の時なども決して外さないようにしてください。万が一外れる事がないようにきっちりくっつくようにできておりますが、外れた場合は運営からその人を見つけて隔離し、以降はゲームに参加することができません。島に到着してからは、ルールに従って行動していただきますが、そちらを破った場合でも、放棄とみなされゲームから離脱することになりますのでご注意ください。島は回りを海に囲まれておりますので、皆様の安全のためにも、そのようにさせて頂いております。」

確かに海にでも落ちて行方不明とか洒落にならないもんな。

達也は、だからこんなにぴったりくっついているのか、と納得した。

崎原は続けた。

「では、カバーを開いてください。」

言われるままに、パカッとカバーを上へと開く。

するとそこには、液晶画面があって、今の時刻、13:10と出ていた。

小さなテンキーまで横に並んでいる。

崎原は言った。

「これから、ゲームの投票など、様々な場面でこれを使用します。では、ただいまから役職をお配り致します。液晶画面に役職名、そして仲間が居る役職の場合は、そこに仲間の番号も出ます。お隣りの方に見えないようにしながら、役職の確認をお願いいたします。まず、先に役職内訳をお知らせします。この度は20人、役職多め村です。狼4、狂人1、占い師2、霊媒師2、狩人1、狐2、背徳者1、猫又1、村人6。また、ルールブックをお配り致しますので、役職の詳しい説明はそちらをご覧ください。それでは、送信致します。」

達也は、急いで画面を手で覆うようにしてその瞬間を待った。

液晶画面には、村人、と表示された。

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