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朝の議論は、翼は来なかった。

巽は居たが、特に会話に入って来ることもなく、結果が全てだと言わんばかりの様子で、黙って聞いていた。

議論は交わされ続けたが、朝のあの、廊下での立ち話から発展する様子もなかった。

ただただだらだらと、時間だけが過ぎて行く形だった。

なので、夜になって翼も含めた全員が集まっても、結局占い指定先について話すばかりで、結論は出なかった。

「…ならば、私は翔馬を占うということで良いのだな?」

巽は、朝から全く口を開かなかったが、村の決定を聞いて言う。

利喜は、頷いた。

「圭太が仁さんか廉を占うんで。」

巽が、苦笑してからため息をついて、言った。

「…まず、圭太視点の話をしよう。」巽は、淡々と言った。「圭太のグレーは翔馬、仁、廉の3人。人外は狼2、狂人1、狐1が確定している。これで人外4人。残りは狼2、狐1、背徳者1の行方だ。吊ったのは美夢さん、颯太、裕太、朱理さんの4人で颯太と裕太の正体は分かっている。美夢さんと朱理さんの二人が、正体がわからない状態だ。つまり、圭太目線では、この二人が背徳者と狐である可能性もあるわけだな。」

皆が頷く。

巽は続けた。

「その上で考えると、まず狼2の行方だ。朱理さんが狼の場合。私は偽であるから、私を含めた仁、廉、翔馬の中にあと1狼。朱理さんが狐の場合でも、同じ。」

皆が、段々に頭の整理ができて来て、真剣にうんうんと頷いた。

巽は言った。

「朱理さんが背徳者の場合。その場合でもやはり、私は偽でしかあり得ない。なぜなら健斗が狐で私が呪殺したことになるが、その時点で朱理さんが死んでいないのがおかしいからだ。つまり、私が真の場合は、朱理さんは村人でしかない。なので、私が真の場合は、健斗が狐であったなら、背徳者は美夢さんでなければならない。その場合は狐はもう、残っていないことになる。」

達也は言った。

「じゃあ、どうして巽さんは健斗が背徳者で廉が狐だと断言するのですか?」

巽は答えた。

「なぜなら、健斗が占い師に出ている意味がないからだ。狐が狼に出た場合、どこかで相方を囲わないとおかしい。だが、健斗の占い先は初日廉、二日目颯太、三日目美加さん。美加さんは圭太の白なので狐ではあり得ないし、囲っていたとしたら廉でしかあり得ない。それに、健斗は泰裕が圭太の占い指定に入るのを阻止しようとした。だからこそ、私は健斗が背徳者だと今も信じているし、廉を狐だと思っているのだ。」

皆が渋い顔をした。

思わず納得してしまうからだ。

巽は、時計を見てから続けた。

「…話を戻そう。何度も言うが、圭太のグレーは仁、翔馬、廉の3人。この中に最低でも必ず1狼は居る。私が狼だと言うのならね。私が背徳者ならば、2狼1狐。朱理さんが狼であれば一人は村人だろう。今日、翼を吊って圭太が噛まれてあと4縄。吊り順を間違わなければ、私を含めて吊りきって村は勝つ。そんなに必死になることはないのだ。」

確かにそう。

そうなのだが、本当にそうなのだろうか。

こうなっても、信じきれない自分が嫌になりながら、達也はモニターから流れる声に耳を澄ませた。


その夜は、翼が吊られて行った。

特に何の言葉もなく、たった一人だけ巽に投票して、倒れた。

それを、また淡々と皆で部屋へと運び込み、その夜は無言のまま、終わった。

巽が言うように、村を含めて吊りきって終わりなのだろうか。

結局、吊り順を間違えたら、狐勝ちになるのではないのか。

それが巽の狙いなのではないかと、そればかりが頭の中をぐるぐるとして、よく眠れないままに、朝を迎えることになってしまった。


六日目、達也は疲れていた。

また、議論が煮詰まることは分かっていたのだ。

とはいえ、万が一にも圭太が生き残っているかもしれない。

達也は、思い切って扉を開いた。


やはり、圭太は出て来なかった。

扉が少し開いていて、夜から鍵がかかっていなかったのではないかと思われる。

達也は、暗い顔で隣りの庄治を見た。

「…圭太だな。」

庄治は、頷いた。

「真確してここまで生きられたのも奇跡だ。」と、歩き出した。「確認しよう。」

達也は、頷いてそれに従った。

中へ入ると、圭太はベッドの上で普通に寝ていた。

だが、口がパッカリと開いて上向いている状態で、胸も動いておらず、ピクリともしない。

一目で死んでいるのがわかった。

「…ダメだ、死んでる。」と、目を反らして庄治を見た。「多分、圭太も万が一と思って口に結果を隠してたんじゃないかな。だから、こんな風に口が開いたままなんだ。」

庄治は、頷く。

廊下から、声がした。

「…死んでるか?」

振り返ると、そこには哲也と、利喜が居た。

後ろには、三階から降りて来た皆が見えた。

達也は、頷いた。

「…死んでる。紙はない。多分残そうとしたみたいだけど、口が不自然なほど開いてるから。」

廉が入って来て、言った。

「…拓也と同じだ。多分中を改めて、取って行ったんだと思うよ。」

巽が、言った。

「私は、翔馬黒。これで私目線の狼は出揃った。颯太、翼、そして仁、翔馬だ。狐は、廉だと思っている。健斗が、誰も囲っていなかった狐ならば話は別だが。もう、狐は居なくて狼だけということになるからな。」

達也は、顔をしかめた。

圭太は、どちらを占ったのだろう。

圭太が廉を占っていたのなら、廉は村人だろう。

呪殺が起きていないからだ。

だが、わからない。

昨日は、こうなることが分かっていたのだから、圭太には一指定しておくべきだった。

翔馬が、言った。

「…巽さんが偽だ!オレは狼じゃない!恐らく朱理さんが狼で、仁さんか巽さんのどっちかが狼なんじゃないのか?!廉が狐なんだ、きっとそうだよ!巽さんは仁さんを黒囲いしている!」

利喜が、額に手を置いた。

「待て、もう頭がごちゃごちゃで。それが間違ってないのか混乱してる。」

すると、巽は言った。

「翔馬目線、翼、颯太が狼で自分が村人ならば、私は偽だ。となると健斗が真なので廉が狐はあり得ない。だから間違っているな。翔馬が村人ならば、健斗の白は人外ではないから、廉と美加さんは白。圭太の白も人外ではないから、達也、庄治、早紀さんも白。残りは美夢さん、朱理さんの内訳だが、美夢さんが背徳者として朱理さん狼としたらあと1狐1狼が居ることになる。圭太のグレーは翔馬、仁、廉の3人なので、この中に居るとするなら、翔馬目線、仁と廉でしかないが、廉は確白だ。となると、翔馬自身が人外でしかないので、翔馬目線では私が狼でしかあり得ないことになる。つまり、私が狼で、仁が狐ということだな。それ以外のパターンは、翔馬が村人ならあり得ない。」

分かりやすい。

達也は、思った。

翔馬は混乱していてこちらも混乱しているので視点整理が追い付かないが、言われてみたら単純なことだった。

哲也が、言った。

「…じゃあ、まだ翔馬は破綻してないわけか。」と、皆を見た。「生き残ってるのは利喜、仁さん、達也、庄治、オレ、巽さん、翔馬、早紀ちゃん、廉、美加ちゃんの10人。あと4縄ある。吊り順さえ間違わなければ、村は勝つ。圭太目線のグレーはまだ昨日のままで仁さん、翔馬、廉だ。ここから今夜一人吊れば良いんだ。仁さんはあって狼か背徳者なので狐じゃない。狐を狙おう。この中で、狐だと思うところを吊れば良いんだ。」

利喜が、顔をしかめた。

「…どこだ!巽さん目線じゃ廉だが、巽さん偽を追ってるのなら仁さんか翔馬だぞ。背徳者なら両方に黒を打って撹乱している可能性がある。狼なら…どっちかに狐が居るから、両方吊らせて自分は生き残ろうとしているのか。」

廉が、言った。

「僕から見たら、村人が間違うのを楽しんで見てるような気がするよ。背徳者で囲ってるとしたら、仁さんかな。狼で囲ってるとしたら、翔馬。だって初日からなんか発言が危うい感じで、巽さんからライン切ってた気がするからね。だから、狐を狙うなら僕は仁さんに入れるかな。明日巽さん諸とも消えてくれたらラッキーだし。」

巽は、フフンと笑って踵を返した。

「縄は足りる。私は別にどちらでも良い。仁だと言うなら仁に入れる。狼が二人見えているので、仁を吊っても問題ない。どうせ今夜は、廉を占うのだしな。」

廉は、巽を睨んだ。

巽は、そのまま部屋へと帰って行ったのだった。

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