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「…泰裕も見てくれないか。」仁は言った。「呼吸してないんだ。顔も真っ青で。」

仁が出ていこうとするのに、巽は首を振った。

「いや、まずかおるさんだ。」と、かおるのしっかりと閉じた唇を見た。「まるでくっついているように口を閉じている。結果を隠しているのかもしれない。」

巽は、胸ポケットから黒い革のような平たい袋を出すと、それを開いた。

そこには、何やら金属の棒のような物や、ヘラのような物が並んでいたが、その中の一つを手に取った。

病院に行ったらあーんして、と言われて、舌を押さえ付けられるあれだ。

「僕が押さえようか?ええっと、そのspatula貸して。日本名って何て言うの?」

舌圧子(ぜつあっし)。」巽は答える。「では、頼む。」

廉は、そのあーんしてのヘラを手にして、かおるの顎を持ってグイと唇を無理にこじ開けた。

思ったよりすんなり開いたが、二人が口の中を覗くので、その頭で皆には中まで見えない。

達也は、ジリジリしながら言った。

「何かありました?」

廉が、答える。

「うーん、なんか白い…」と、巽がまた今度はピンセットのような先の曲がった鉗子を手にしたのが見える。「ちょっと待って。巽さんが剥がしてるから。」

巽は、眉根を寄せて何やら頑張っている。

「…貼り付いてるのだが…」と、達也を見た。「水。」

達也は、急いで洗面所へと駆け込んだ。

そして、そこにあったコップに水を入れて持って来ると、巽に渡し、かおるの口の中を見た。

確かに、かおるの上顎には白い何かが貼り付いていた。

「あ!ある、紙だ!」

「ええ?!」

後ろで固唾を飲んで見守っていた、皆が声を上げた。

拓也と裕太は、声も出せずにそれを見守っている。

巽は、廉と一緒にあれこれ頑張っていたが、やっとその口の中の紙を引っ張り出した。

「…やっと剥がれた。が…」と、ゴム手袋の手でそれを開く。「滲んでしまったな。元々唾液で滲んでいたのだろうが、剥がすのにも水を使ったので。」

廉が、横からそれを見た。

「…クロ、じゃない?シロじゃないよねこれ。」

全員が、ワッと寄って来てそれを覗く。

どうやらかおるは、カタカナで書いていたらしく、ハッキリとはわからない。

が、クロと書いてあるように見えた。

「シ」と「ク」なので、滲みでそうだろうと思うだけで、何が何でもこれはシだと言われたら、そうかも?と思える程度ではあったが、とりあえずクに見えた。

「…だったら、颯太は狼。」達也は言った。「裕太が偽。翼さんも。利喜が真猫又。颯太に黒を出した健斗は限りなく真に近いけどまだわからない。廉は狼と対立していたから白。呪殺を出した圭太は、真占い師だ!」

裕太が、叫んだ。

「そんなのおかしい!かおるちゃんは絶対シロって書いてる!クロじゃない!」

だが、翼がフンと鼻息を吐いた。

そして、言った。

「…そうだよ、オレは狼だ。」え、と皆が顔色を変える。翼は続けた。「その上で言うぞ。巽さんが狐だ。みんなが信じているのは勝手だが、狼を吊り殺したいから村人に見えてるだけだ。健斗と圭太が真だろう。後一人、狐をこの二人に呪殺させないと狼を吊り切っても勝てないぞ?」

狼CO…!

皆が、巽を見る。

巽は、翼を睨んだ。

「ほう。君が狼か。しかし間違っているぞ?さては君は一昨日、私を噛んだな?昨日から思っていたのだよ、私が偽ではないかと皆に言い始めたので、もしかしたら私を噛んで、噛めなかったからではないかと。もしかしたら護衛は、私に入っていたのではないかね?」

しかし、それには拓也が言った。

「でも、一昨日は霊媒師噛みでしょう?でないと狼は詰むから…」と、ハッとした。「あ、いやもしかしたら昨日でも間に合うか。かおるちゃんは噛まれてるんだ。イレギュラーでこうして結果がわかったけど。」

達也は、どうするか迷った。

だが、言った。

「…巽さんは間違ってない。なぜなら、狩人は初日は巽さん守りだから。もしかしたら霊媒に狐が出てるのか、それとも巽さんを噛んだのかって、悩んでて…。」

皆が達也を見る。

圭太が、言った。

「達也が狩人だったのか?!」

達也は、首を振った。

「違うんだ。狩人から聞いたんだよ。オレが確白になったから、話しに来てくれて。だから狼目線で巽さんが狐に見えてもおかしくない。健斗が颯太黒を当ててるし、圭太が今朝呪殺を出してるから。でも…狐でも護衛されてようとされてなかろうと、襲撃通らないから、巽さんが狐ではないっていう判断はまだできないけど…。」

どうなってるんだ。

とりあえず、グレーの狐は一匹消えた。

颯太は狼で、道連れは出せない。

利喜の真猫又は確定、これで村の確定白は二人になった。

「…とにかく、一度仕切り直そう。」哲也が言った。「今、達也が言ったことも合わせて。新しい事実が多すぎて頭がついて行かないんだよ。8時に下へ集まろう。達也、利喜、進行を頼むぞ。」

頼まれてもさあ…。

達也は、バラバラと解散して行く皆を見ながら、途方に暮れた。

泰裕のことを、完全に忘れてしまっていた。


部屋で、圭太と一緒にパンを自動的に食べて、達也は呆然と階下へ向かった。

圭太は、心配そうに言う。

「…達也、大丈夫か?混乱するのは分かるけど、利喜も確白だし。それに、オレで呪殺が出たからオレの白も信用できるだろう?」

達也は、頷いた。

「分かってる。でも…なんだろ、何かスッキリしなくて。健斗は颯太狼を当てたから、真の可能性が高いだろ?圭太は絶対真だから、健斗が真なら巽さんは狐にならないか?何しろ、翼さんが狼だってCOしてまで告発したんだぞ?」

圭太は、顔をしかめた。

「だから占ってない所はオレにもわからないんだよ。でも、確かにそうなるよね。健斗は颯太黒を当ててて、翼さんは巽さんを告発するために狼COした…まあ、多分もう、逃げられないからだとは思うけど。」

リビングへと入って行く。

そこには、利喜がもう居てホワイトボードに占い結果を書いていた。

巽→達也○朱理○早紀○

圭太→庄治○達也○泰裕○

翼→颯太○廉●翔馬●

健斗→廉○颯太●美加○

霊媒結果→○→●

霊媒結果の所は、もう誰が何を出したとは書いてはいなかった。

回りを見ると、もう既に多くの人達が、椅子に座っていた。

達也が椅子へと座ると、利喜が言った。

「達也、進行はどうする?翼さんが狼COしてるけど、まだ狐が残ってるよな。翼さんを飼って、先に他から行く?」

達也が答えようと顔を上げると、翼が言った。

「…達也は背徳者じゃないか?」え、と皆が翼を見ると、翼は続けた。「初日から、巽さんと個人的に話したりしてたじゃないか。自分の白だからとか言って。背徳者は呪殺されないし思う通りに動くだろう。確定白として上手く村を誘導させるために白を打ってたんじゃないのか。巽さんならそれぐらいのことをしそうだろ?現に狩人はまんまと信じて正体を明かしてる。狐には襲撃できないし、間違って黒を打つことも避けられるからバレなかっただけで。」

達也は、翼を睨んだ。

「違う!オレは村人だ!そもそも昨日だって、巽さんにはうるさがられて圭太と二人でずっと離れてたんだぞ?!いつ指示なんかできる暇があったんだ!」

圭太が、それには頷いた。

「そうだよ、達也は村人だ!だって、昨日だって今日だって、ずっとオレと一緒にいたんだからな。狼みたいに狐は夜時間に話もできないし、指示なんか受けてなかった。」

だが、美加が言った。

「でも…狩人はこっそり達也さんに接触できてたわけでしょう?だったら巽さんにも、そうやって話しててもおかしくないと思う。」

早紀も、控えめにそれに頷いている。

つまり、村目線では達也も怪しく見えているのか。

「…だったら、オレは進行しない。利喜に任せるよ。圭太が確定してるんだから、圭太と話して極めたら良いじゃないか。でも、オレは人外じゃないけどね。」

庄治が、言った。

「でもなあ…無理がないか?」皆が庄治を見た。庄治は続けた。「巽さんが狐だったら、泰裕を囲えたはずだろう?でも、皆に指定先を譲って最後に残りから決めてた。むしろ、昨日泰裕を占い指定先に入れた圭太に、確定白を作って欲しいって自分が占いたがった、健斗の方がより怪しくないか。健斗が偽だったら健斗目線じゃ、絶対巽さんと圭太の中に真占い師が居るわけで。わかっていたから占われたくなかったとか。」

言われてみたらそうだ。

達也は健斗を見た。

健斗は、険しい顔をして庄治を睨んでいた。

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