29
リビングに出て行くと、驚いたことに廉と美加、早紀だけでなく、大勢の人達が巽の側に座っていた。
「あれ」圭太が言った。「もしかしたら全員居る?」
廉が、振り返った。
「あ、出て来たの?そう、なんか僕が出て来たらみんなわらわら出て来たの。なんかご飯食べとこうと思ったんだって。」
時計を見ると、もう六時に近付いている。
だったらそうなるかと達也も皆に合流した。
「何の話になってたの?」
庄治が答える。
「いや、巽さんが今夜どこに入れるのかってさ。みんな廉と颯太で悩んでたから。あちこち行って話してたけど、みんな確信なくて困ってるんだよ。」
達也は、言った。
「オレは決めてるけどね。縄に余裕があるうちに猫又精査しなきゃならないと思ってるから。」
つまり、颯太だ。
皆は、顔を見合わせた。
「それ、巽さんも言ってた。最終日まで残したら結局決め打ちになって間違えたらヤバいからって。」
巽も同じなのだ。
達也は、同じ結論なのに少し躊躇ったが、しかしやはり巽は真らしい考え方だと思った。
巽は、言った。
「それだけではないのだよ。」と、身を起こした。「猫又精査は、今の時点ではハッキリ言ってつかない。が、占い師達が白黒出していて霊媒師が生きている今、吊れば何かしらの結果は出る。犠牲者の有無だけでなく、仮に偽だとしても、色結果は重要だ。それで占い師の真贋が透けて来るからだ。狼は、必ず今夜は霊媒を噛むだろう。そうしないと、結果が確定して霊媒の偽まで巻き添えになるからだ。昨夜狂人の霊媒を噛んでいたら狼からしたらまずいだろうがね。その上で、私が懸念するのは、猫又に狼が出ていた場合だ。」
皆が、固唾を飲んでいる。
達也は、言った。
「…でも、猫又ローラーしたら狼が消えるから良いのではないですか?」
巽は、首を振った。
「猫又に狼が出ていたら、遅かれ早かれボロが出るのを知っている。呪殺を出した真占い師に占われたら終わりだ。なので、もし私なら占い師に出ている仲間を守るために、どちらが真であったかわからないように自分が犠牲になることを考える。つまり、猫又が猫又を襲撃するのだ。両方が次の日追放されて、どちらが真であったか村目線では分からなくなる。そうなると、占い師の真贋も霊媒の真贋も、分からなくなるので猫又は襲撃され損なのだ。狼にその暇を与えたくないので、私は今夜から猫又に手を掛けるべきだと思っているし、なので翼と健斗の真贋云々ではなく、廉と颯太なら颯太に入れると言うのだ。」
確かにそれがあった。
達也は、思った。
狼が猫又に出ているのなら、真が確定した占い師に占われて芋づる式に仲間が吊られる危険を考えたら、どうせ露出した自分だけが犠牲になってうやむやにしたいと考える。
となると、今夜は猫又吊り一択だ。
「だったら、猫又二人から決めてくれよ!」颯太は言った。「オレは真なんだよ、誰かが犠牲になるんだぞ?狼を道連れにできるならいいけど、ただ吊られるなんて、それで村人を犠牲にするかもしれないなんて、嫌だ!」
巽は、言った。
「問題ない。猫又二人からだとしても、今夜は君一択だ。なぜならその色で翼と健斗の真贋も分かるかもしれないからだ。霊媒と占い師のラインも見える。犠牲者が出たら君は真だし、利喜は次の日吊られるので道連れにしているのと同じ。健斗の偽も確定出来て、廉もまた精査に挙がる。村のために、君は今夜吊られる必要があるのだ。真であってもね。」
皆の空気が、微妙な感じになった。
困惑しているのだが、しかし仕方がないという諦めの様子でもあった。
「そんな!」颯太は、叫んだ。「なんでオレが死ななきゃならないんだよ!健斗がオレに黒を打ったせいで!オレが真なのに!」
颯太は、リビングを飛び出して行った。
…人外に黒を打たれたから、真なのに吊られるってなると、それはああなるな。
達也は、颯太がどちらなのかわからないが、それでももしも自分だったらと思うと、暗い気持ちになっていたのだった。
それを見送ってから、巽は息をついた。
「…それで。」と、険しい顔をして聞いていた、翼と健斗を見て続けた。「君達目線、私か圭太の内一人が必ず真占い師だと確定しているな?」
二人は、頷いた。
「お互いに偽だと確定したので。」
翼が言うと、巽は頷いた。
「では、達也は村目線確定白だ。」え、と皆が目を丸くする。巽は顔をしかめた。「やはり気付いて居なかったのか。よく考えろ、達也は私と圭太に白を打たれてここに居る。狐でも狼でもない。健斗と翼目線、私達の内一人が真だと分かっている。となると、達也は両方の全員の占い師目線白なのだ。必ず居る相方が白を出しているから。」
そうか、オレは確定白。
「…でも、一応白人外の可能性はありますよね。」
達也が言うと、巽は頷いた。
「その通りだがこの数がCOして来ているし、ほとんど村人だろう。もし、村が呪殺ではなく村目線の確定白を増やして欲しいと言うのなら、圭太の初日の白の庄治を今夜占っても良いがね。どうする?村に任せる。」
そんなに簡単に確白量産できるのか。
だが、考えたらそうなのだ。
四人居るので四人が占わないと確白にならないと思い込んでいたが、翼と健斗の対立で、圭太と巽の二人が占うだけで確白が出来て来るのだ。
「…凄い、そうか。簡単に確白作れるぞ。」と、哲也が言った。「この二人が両方白だと言えば白なんだ。誰目線でも。二人共が偽の可能性はないから。」
だが、達也は言った。
「…確かに確白は大事だが、今は誰か一人でも真を確定させたいじゃないか。狐が二人も居るんだぞ?できたらその占い師目線のグレーを占ってもらって、呪殺を出してもらって真を一人でも確定させたい。でないと、いつまで経っても黒が出ても確定しないじゃないか。その一人が一回占ったら色が分かるのと、圭太と巽さんの二人が占わないと色が分からないのとじゃ、絶対一人が一回の方が良いと思うんだ。今夜は占い師には、確白を作るよりも呪殺を狙って欲しいんだよ。」
圭太も、頷いた。
「確かになあ。オレも自分の真を確定させたいって思うから、できたらグレーを占って行きたいと思ってる。達也がとりあえず確白になったんだから良いんじゃないのか?もし、オレと巽さんの二人が真だった場合、村目線じゃ無駄な事をしてることになるんだぞ。今は真占い師を確定させる占い先を選ぶべきじゃないかな。」
翼が、言った。
「オレも、グレーからがいいと思う。」皆が翼を見る。翼は続けた。「オレは確白を作ってもらうより、占い師の相方を知りたいんだよ。そうしたら、二人の結果が真だとオレ目線じゃ分かるから、無駄な事をしなくて済むじゃないか。オレは自分のグレーから占うよ?だから、皆自分のグレーから気になる所を占ったらいいんじゃないか。」
しかし、健斗が言った。
「オレ達はそれでいいよ。でも、村目線じゃ絶対に白だって分かる場所が増えた方が、考察が伸びやすいじゃないか。もう、その人の事は考えなくて言いわけだし、狐かもとか悩まなくて良いわけだろ?呪殺はオレが出すように頑張るから、巽さんと圭太には、お互いの白先を占ってもらって確定白を増やして欲しいと思うな。今夜、巽さんが庄治さん、圭太が朱理ちゃんを占ったら、達也と合わせて確白が三つできるかもしれないんだよ?まあ、もしかしたら呪殺とか、黒が出る可能性もあるんだけどさ。」
意見が分かれている。
仁が、言った。
「…そうだなあ。健斗が言うように、確かにもし確白が三つになったら村目線強いよな。占い師目線じゃそりゃ、相方を知りたいとかあるだろうけど、村目線じゃ分からないからな。真占い師は知りたいが、呪殺が出るまで確定できないんだし…占い師に出ていて囲われているなら、今日の結果を見ても庄治か朱理さんだろうし、それならこの二人を占うことで呪殺が出る可能性だってあるんだから、圭太と巽さんはお互いの白先を占ってみて良いんじゃないか?」
確かに、囲っているのだとしたらそうだ。
健斗と翼は、お互いの白先を占って黒と出ているので、こちらで狐を囲っている様子がないからだった。
もちろん、両方偽ならあり得るのだが。
哲也が、言った。
「だよな。オレもそう思う。確白を狙って呪殺が出たらラッキーだし、確白が増えるならそれもいい。そう思わないか?」
達也は、息をついた。
「…まあ、それは占い師達に任せるけど。ただ、オレの意見は狐を占って呪殺を出して欲しい。だから、もし圭太が朱理ちゃんを、巽さんが庄治を狐っぽいと思うなら、そこを占ってもいいと思ってるよ。」
廉が、言った。
「黒を打たれてる僕が言ってもだけど、僕は哲也と仁さんの意見に賛成だなあ。だって、確白ってとても大事だと思うよ?庄治さんも朱理ちゃんも、狐ではないとはまだ分かってないじゃないか。だから、別に占ってもらってもいいと思うんだけどね。達也がそこまで確白作りたがらないのは、どうしてなんだろうって思うな。確白だから言わないけどさあ、グレーだったら庇ってると思うレベルだよ?」
圭太が、言った。
「オレから見たら、逆にグレーを占われたくないからそんな事言ってるのかなって思うな。村目線でも、オレと巽さんのどっちかかもしくは両方真なわけでしょ?その占い師に当たったら嫌だって人が、グレーに多くてそんな意見の人が多い気がするんだよな。」
皆が、顔を見合わせる。
巽が、言った。
「…私は確白の達也の言うことに従うつもりだ。」皆が巽を見る。巽は続けた。「各占い師が、思い思いの場所を占えば良いのではないか?今日も指定は二人にして、誰かの白先と完全グレー振り分けて行けば、好きな方を占うだろう。それでいいではないか。」
皆が困惑した顔をしたが、しかしもう時間も18時半に近くなって来たので、食事をしてしまわないと、と、急いでキッチンへと向かったのだった。




