24
8時になると、皆がリビングに集まった。
空になった19の椅子のことは、皆見ないようにしている。
女子達の顔色は悪く、昨日まではきちんと化粧をしていたのに今日は誰もが皆素っぴんだ。
化粧する気力もないのだと思われたが、ゲームに参加しないと結局自分も追放される。
なので、ちゃんとそこに座っていた。
仁が、言った。
「…で、進行は?今朝聞いた結果は書いておいた。猫又は出ないのか。」
全員が探るように顔を見合わせていて、名乗り出る様子はない。
だが、そこで颯太が口を開いた。
「…人外をもう一人炙り出そうとしたのに。」え、と皆が颯太を見る。颯太は続けた。「オレが猫又。だから健斗は偽だよ。呪殺を装って、昨日辺りオレを噛んで来るかもと思ったのに。」
颯太が猫又…?
ということは、健斗は偽か。
ならば芋づる式に廉が限りなく黒に近くなるのでは。
達也が緊張でドキドキしていると、利喜がため息をついた。
「違う。オレが猫又。」全員が、利喜を見る。利喜は、続けた。「颯太は騙りだ。騙りが出るかもとは思ってたけど、やっぱりか。颯太を吊ってくれ。健斗が真占い師だろう。明日霊媒が黒を見る。白人外かもしれないが、だったら健斗の偽も透けるしな。狐か背徳者か狂人か、そんなことまでオレにはわからないが、そこから分かることもあるだろう。オレが真猫又だよ。まだ潜伏するつもりだったのに。案外早く追い詰められたんだな。」
猫又が二人。
一人は、黒が出されて出て来た颯太、一人は、何もないグレーから出て来た利喜。
こうなって来ると、利喜が真に見えてはいるが、狼陣営は五人も居る。
こうなることを見越して出て来た人狼でないとは言いきれなかった。
「…猫又は吊るのにはリスクがある。」圭太が言った。「ここは廉を吊って霊媒師に色を見させて、占い師の真贋を見極めてから吊りに入る方が良いと思うけど、皆はどう思う?」
仁が、答えた。
「オレもそれがいいと思う。廉が白なら翼の偽が、黒なら健斗の偽が透けるしな。そこから芋づる式に人外が透けて見える。」
廉が、言った。
「僕を吊って二本目の縄も無駄にするの?美夢さんは白だった。狐だったと思ってるわけ?昨夜霊媒噛みが入って護衛成功していたら、今夜は確実にその霊媒師に噛みが通るよ。狂人を噛んでたなら良いけど、真だったら僕の白は確定しないよ。そんな無駄死にしたくない。」
仁は、言った。
「この村は20人で9縄あった。人外は8人。昨日1本使って今8縄だと思われるが、昨日の護衛成功で19人、依然として9縄なのだ。つまり、君を吊っても背徳者狂人含めた人外全員を吊りきれる縄が残る。なので、君吊りが村にとっては一番分かりやすい進行なのだ。村人であっても、勝つためには犠牲になってもらうよりない。」
廉は、仁を睨んだ。
「普通のゲームなら飲むよ。でも、僕は村人なんだよ?なのに死ねって言うの?生き返るかどうかもわからないのに。」
仁は、息をついた。
「酷なのはわかっている。だが、村人全員の命が懸かっているんでね。」
とはいえ、黒を打たれて出て来た颯太が限りなく偽に見えるのに、その颯太に黒を打った健斗の白先の廉を吊っても良いのだろうか。
達也は苦悩した。
哲也が、言った。
「…じゃあ、真っぽい占い師にまた占わせたらどうかな?」え、と皆が哲也を見る。哲也は続けた。「いくらなんでも三人に占わせたら、分かるんじゃないか?巽さんが真っぽい筆頭だし、巽さんが占ったら良いんじゃないか。巽さん目線も、それでどっちが嘘を言ってるのか分かるじゃないか。」
達也が、顔をしかめた。
「でも、巽さんが襲撃されたら?それこそ迷宮入りだぞ。」
哲也は言った。
「昨夜霊媒噛みならもう、今夜は阻止する術はないんだし、狩人には巽さんを守ってもらえば良いじゃないか。それで間違いなく色が落ちるんだからな。」
しかし、翼が言った。
「だが、私の相方がもし、圭太だった場合、廉を囲っていた健斗は狼だろうから巽さんは狐なんだぞ。狐は狼も減らしたいだろうが、占い師も減らしたいはずだ。真占い師のオレを貶めるような結果を出して来る可能性がある。」
巽は、それを聞いてハッとしたような顔をした。
僅かな動きだったが、達也はそれを見逃さなかった。
「…巽さん?何かありますか。」
巽は、言われて達也を見た。
そして、しばらく黙ってから、言った。
「…いや。翼目線では確かにそうだなと思ったのだ。哲也の提案は確かにその通りではあるが、廉の色を特定したいのなら今夜吊って真霊媒の結果を待つか、圭太と私が廉を統一占いして色を出すしかない。恐らく、占い師には狼陣営、狐陣営が一人ずつ出ているだろうし、三つの色が揃う可能性がある。四人で三つ揃えば確定する。三人ではまだ確定しない。私目線では確定するが、村はそこまで私を真置きして良いのかね?」
仁が、顔をしかめた。
「…まだそこまで君を信じるのは難しいが、それでも限りなく真だとは思っているがね。」
巽は、頷いた。
「だろうな。ならば、縄に余裕がある今夜、もう一縄グレーに使ってまた、指定占いするか?呪殺が出れば、真を確定させられる。今夜は全員、狐だと思う所を指定して占うんだ。特に健斗と翼、結果を出せねばそろそろ縄が伸びるぞ。君達はやりあっていて、お互いに偽だと確定しているが、私目線ではどちらも偽の可能性がある。私は極端な話、呪殺を出していない占い師は、全部吊りきって良いかと思っているのだ。私がそうであったら私も含めてね。こう言ったら、狼の占い師は慌てて自分の占い先を噛むんだろうが。」
皆は、息を飲む。
達也は、言った。
「でも…今夜グレーに行ったら、そこが人外でないと縄余裕がなくなるのに。役職を全部決め打ちにしなきゃならなくなる。真を含めた三人を吊ったら、縄が足りなくなりませんか。」
巽は、答えた。
「呪殺で狐は処理できる。ギリギリだが、廉を吊りたくないのだろう?それとも、リスクを取って猫又に手を掛けるか。今なら縄が足りるので猫又に手を掛けることができるぞ。仮に真を吊ってしまったとしても、まだなんとかなる。偶数進行に戻るだけだ。その場合、颯太からになるだろうな。霊媒で色が分かりやすいから、そこから人外が透けて来る。」
翼が言った。
「私は反対だ!そんなことをしたら、誰が犠牲になるかわからないんだぞ?!それこそ、真霊媒が連れて行かれたら、もう一人を狼に噛まれていた時、色が分からなくなるじゃないか!」
巽は、言った。
「だからそんな確率の低いことが起こる可能性を追うより、猫又確定を目指してまず、颯太を吊り、道連れが出たら利喜を吊る。そうしたら人外が確実に一人処理できる。そう、ならば村に問うのだ。グレーに黒が出た時同様に、廉と颯太の二択にしよう。颯太が偽だと思う者は颯太に、廉が狼だと思う者は廉に。狩人には、昨夜は恐らく霊媒師で護衛成功しているのだから、阻止は難しいだろうが頭を使って護衛してもらいたい。ちなみに、捨て護衛するなら偽だと思われる占い師の占い指定先などがお勧めだがね。」
呪殺を装うのを阻止するためだろう。
だが、こうなって来ると狼には、霊媒師噛み以外余裕はないだろう。
全員が、困惑したような顔をしている中、廉は言った。
「…それで良いよ。なら、今夜は僕と颯太の二択だね。だったら僕達が話さなきゃ。僕は狼じゃないからね。じゃあ、僕が思ったことから話していい?」
皆が、ゴクリと唾を飲み込んだ。
廉は、話し始めた。