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ものすごく疲れた。

達也は、トボトボと歩いてキッチンへと向かった。

まだお腹は空いていないが、喉がカラカラだ。

見たら、みんなペットボトルのお茶などを持っていて、自分も次からそうしようと達也は思った。

飲料専用の冷蔵庫を開いて中を物色していると、後ろから声がした。

「達也。」

達也は、振り返った。

「なんだよ圭太?まだオレを信じられないんだろ?無理すんな、一緒に行動するのは今夜占ってからで良いよ。」

圭太は、渋い顔をしたが、思い切ったように言った。

「…良いよ、信じる。」え、と達也が驚いた顔をすると、圭太は続けた。「でもよく考えたら、達也だってオレを信じられないだろうって思ってさ。怖がってばっかりだったらダメだなって。対面人狼初めてだから、勝手がわからないんだ。こうなって来ると、普段の関係も結構関係してくるよな。」

言われて、達也はお茶を手にしながら思った。

確かにアプリの人狼とは違い、こうして目を合わせて話す対面人狼は、その関係性まで影響してくる。

特にこんなに長く続くリアル人狼となると、こうして過ごしている時間も関わって来てしまうのだ。

「…確かにな。でも、だったら女子達は今大変じゃないか?早紀ちゃん美夢ちゃん美加ちゃんがあれだけやり合ってしまったし、女子はみんな一緒に居たのにヤバくないか?」

それには、圭太は神妙な顔をして頷いた。

「…達也はすぐにキッチンへ入ったから知らないかもだけど、美夢ちゃんはリビングを飛び出して言ってさ。残った美加ちゃんと早紀ちゃんも目も合わせないし。朱理ちゃんとかおるちゃんが困った顔をしてて、結局疑われてる女子には話し掛けずに二人で居ることにしたみたいだ。女子はバラバラだよ。」

そうなるよな。

やっぱり、感情的になったら良いことはない。

達也は、お茶を飲んでから言った。

「…仕方ない。圭太、オレは占い師の事はまだ誰が真かなんてわからないけどさ、意見的に蚊帳の外っぽい圭太は、真の一人かもぐらいには思ってるよ。健斗と翼さんが言い合ってて、みんな巽さんが相方かとか言ってて、お前だけだし。まだわからないって感じなのは。一瞬狂人かなとか思ったんだけど、霊媒師がなあ。三人の意見は、曖昧な感じで狼っぽくない。狐が出るとは思えない。だからやっぱり狂人かなって。となると、お前って真か狐陣営だろ?狐だったらさあ、仲間が分かってるんだからもっとハッキリ言えると思うんだ。逆に目立つんだよ、あんな発言の仕方したら。だから、真かなって。今のところ思ってるよ。」

圭太は、身を乗り出した。

「だったら、巽さんは?オレさ、巽さんが相方だったらってめっちゃ思うんだけど、人外だったら怖すぎて簡単に信じられないんだよ。」

達也は、うーんとまたお茶を飲んでから答えた。

「あくまでもオレの考えだが、巽さんは真。かなりの確率で。」

圭太は、ウンウンと頷いた。

「それはなんで?」

達也は、淡々と答えた。

「まず、オレが囲われてないから。」圭太は顔をしかめる。達也は続けた。「それに、あの余裕だよ。他の占い師は自分が真だとアピールしようと考察を落としてるけど、巽さんだけが全く考察を落とさない。人外に情報を与えたくないって言って。真だから、別に吊られることのない初日に考察を落とす必要などないという考えだ。騙りだったらああは行かない。何としても初日から真を取って行かないと、後に響くと考える。だが、巽さんはそうしない。後で自分が真だと証明できる自信をそこに感じるんだ。だからみんなも巽さんが真なんじゃないかって感じるんだと思う。」

圭太は、目を丸くした。

「…確かにそうだ。」と、達也を見た。「じゃあ、やっぱりオレの相方は巽さんなのか?」

達也は、苦笑した。

「だからオレは村人で何も見えないんだっての。お前が真なのかもわからないのに、なんでオレに分かると思うんだよ。」

圭太は、ガックリと肩を落とした。

「…そうだよな。ごめん。」

達也は、ため息をついて圭太の肩をポンポンと叩いた。

「落ち込むなよ。呪殺を出せば良いんだって。まあ、オレじゃ呪殺は出ないけど、明日からの占い先を狐狙って行け。」

圭太は、すがるような目で達也を見た。

「…狐、どこだと思う?」

達也は、呆れたような顔をした。

「え、オレにそれが分かると思うか?廉ではないだろうなあってぐらいしかわからないけど。」

圭太は、また落ち込んだ顔になった。

「だよな。オレも。」

達也は、キッチンの扉に向かって歩いた。

「まあ、後からだ。まだまだ議論はできるし。一緒に考えよう。」

圭太は頷いて、そうして二人は、キッチンを出てリビングへと向かったのだった。


リビングには、もうあまり人は残って居なかった。

どうやら、みんな部屋へと戻って行ったらしい。

残っていたのは、巽と仁、そして庄治、哲也だけだった。

「あれ。みんな部屋に戻ったのか?」

達也が言うと、仁が頷いた。

「そうみたいだ。廉も眠いとか言って戻って行った。君たちも戻るのか?」

圭太と達也は、顔を見合わせる。

達也は、首を振った。

「何も考えずに出て来てしまって。」

巽が、言った。

「ちょうど良かった。達也、君には私の考えを話そうと思っていたのだ。とはいえ、今は他に人が居るのでここでは話さない。今夜の投票が終わって部屋に帰る前に、君の部屋に寄ろう。そこで話すよ。」

達也は、本当に自分には話してくれるのかと、ゴクリと唾を飲み込んでから頷いた。

「…でも…白人外の可能性は?オレは自分が村人だって知ってるけど。」

巽は笑った。

「ない。」皆が驚いた顔をすると、巽はまだクックと笑いを堪えるようにしながら、続けた。「他に心当たりがあるし、君が白人外ならわざわざ私にそんなことは言わない。」

心当たりがある…?

どこまで見えているのだろう。

もし真占い師なら人外にとってこれほどの脅威はない。

だが、人外なら村人にとってかなりの脅威だ。

なので、達也は逆に警戒した。

「…いったい、どこまで見えているんですか?」

巽は、答えた。

「見えている?いいや、見えてなどいないよ。ただの推測だ。その中に君は入っていない。その上私は君に白を見ている。なので、君の事は信用しているのだ。それだけだ。」

懐柔しようとしていたらどうしよう。

達也は思ったが、ここは信用するしか今はない。

疑ってばかりでも、どこかを真おきしないと進まないのだ。

「…信じます。考察を聞くのを楽しみにしてます。」

巽は、頷く。

仁が、言った。

「君はオレのことはどう思っているんだ、巽さん?それは聞かせてくれてもいいんじゃないのか。」

巽は、チラと仁を見て、答えた。

「…何も。君は自分の色を見せないように上手く発言している。最初の把握漏れは油断が招いた結果だ。そこからは他の発言の怪しさに助けられて何とか良い心象を稼いでいる。それが…どういう事なのかは占えば自ずと分かることだ。今は君の事より他の事を考えている。このゲームは狐をまず処理しないと安心して狼を吊ることもできないシステムだからな。まずは狐。君はあって狼だ。私は狐を探している。二人も居るからね。」

仁は、眉を寄せた。

「なぜあって狼だと?」

巽は、ため息をついた。

「君を庇う人数が意外に多かったからだ。その全てが人外だとは思っていないが、仮に狐ならば狼からの票もあるのであそこまで多くが庇うことはない。村人でもああなる可能性があるし、なので、君を狼だと言っているわけではない。君はグレー、但し狐ではないだろうと思っている。それだけだ。」

仁が人外だったら嫌な発言だろう。

だが、村人だったらさっさと占って白を出してくれたら良いぐらいに思うかもしれない。

どちらにしろ、険しい顔つきだった。

「…怪しまれるのは良い気はしないが、オレは村人だし真だと思われている君に占われて白をもらったら私も楽になる。今夜の指定先に入れてもらうかな。」

巽は、苦笑した。

「そう上手くは行くまい。私は他の占い師が先に指定しても良いと思っているので、それが終わってから残りを指定する。君が他の誰かに指定されたら、なので私は君を占えないな。」

哲也が言った。

「それは、いったいどうして?占いたい位置もあるでしょう。」

巽は、答えた。

「初日なのだ。そこまでガツガツ頑張る必要はないと思っている。それより他の占い師が何を思ってどこを指定してくるのか見たいのだよ。言っただろう、私は相方を探している。指定する理由と誰を指定するのかで、見極めるつもりだ。」

人外ならば、先に仲間を指定しておきたいと考えるはず。

狐であれば死活問題なので余計にそうだろうが、巽に焦りは全くない。

いよいよ巽の真が達也の中で強くなって来る中で、圭太もじっと考えながら巽を見つめていた。

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