13
達也は、バシンという音に驚いて目を開いた。
…今のなに?!
そして飛び起きた達也は、目の前の机の上に置かれてある金時計が、6時を指しているのを目にした。
「…もしかしたら、鍵が開いた音か。」
達也は、ボリボリと頭を掻いた。
すっかり寝入っていたが、あの音は目覚ましにちょうどよいとはいえ、心臓に悪い。
しばらくうだうだとベッドで転がっていた達也だったが、とりあえず、トイレでも行ってと思ってベッドから降りてトイレへ向かうと、いきなり扉が目の前で開いた。
「達也!」
え、と仰天して見ると、そこには圭太が立っていた。
「大丈夫です!達也は無事!」
何の話だ?
「…初日の襲撃はないんだろ?」
達也が言うと、圭太は答えた。
「夜、何かルール違反してたら居なくなってるかもじゃないか。みんな居るかどうか確かめたワケ。廊下に出て来いよ、みんな居るぞ。お前だけ出て来てないの。」
え、全員出てるのか?
慌てて外へ出ると、圭太が言った通り、三階の人達もそこに立ってこちらを見ていた。
「え…すみません。まだ寝てるかなって、うだうだしてて。」
仁が、頷いた。
「良いんだよ、初日だし。でも、明日からは一応誰が居なくなってるかわからないから、一度6時に鍵が開いたら外へ出て来て欲しいんだ。点呼して、誰が襲撃されたかわかるだろ?考えながら準備できるしな。占い師の結果とか、そこでまとめて聞いてさ。今日はこのまま解散して、また8時に下で会議しよう。そこで役職を聞いてって情報を出す。ってことで良いよな、巽さん?」
巽は、頷いた。
「それで良いだろう。朝食も摂らねばならないしな。着替えて食事を摂ってリビング集合。8時だ。では、解散。」
全員が、それに従って解散する。
何やら、巽には有無を言わさない圧があるのだ。
仁と良い勝負だと思っていたが、仁は巽に比べたら優しい方だった。
達也は、自分だけ出遅れたことに恥ずかしく思いながら、また部屋へと引っ込んだのだった。
空調がよく利いているので、夜に干したパンツはもう乾いていた。
よく眠れた達也は、昨夜持って来ていたパンで朝食を済ませて、顔を洗ってスッキリと下へ降りて行くと、パラパラとリビングには、人が居た。
窓際のソファに座っている人達の方へと歩いて行くと、そこには仁と巽が居た。
「達也。朝メシは?」
達也は答えた。
「昨日パン持って行ってたから。他の人達はまだかな?」
仁は答えた。
「みんなキッチンで飯食ってるよ。もう出て来るんじゃないか。圭太が達也が居ないって言ってたぞ。」
呼びに来れば良かったのに。
達也は思ったが、よく考えたら朝は自分のペースがあるから、基本的に放置しておいて欲しかった。
「まあ、オレはオレのペースがあるし。何もかも集団行動だと息が詰まるかな。」
仁は、苦笑した。
「確かにな。オレも同じなんだ。」と、キッチンの扉が開くのをみた。「お、出て来たぞ。」
その言葉通り、ぞろぞろと皆がキッチンから出て来るのが見えた。
…というか、みんな一緒にメシ食って一緒に終えて出て来るのか?
達也は、うんざりした。
そこまで学生の修学旅行のように一緒に行動などめんどくさい。
圭太が、達也を見つけて走って来た。
「あ、達也!どうしたんだよ、朝飯は?」
達也は、答えた。
「昨日寝る前に持って上がってたのがあったし。というか、みんな一緒に行動してるのか?やり過ぎじゃないか。好きな時に飯食って終えて出て来たら良いのに。」
圭太は、言った。
「まあ、そうなんだけど。まだ女子達が、廉と翔馬を囲んで何か話してたよ。オレ達は先に出て来た感じ。」と、扉を見た。「あ、ほら。」
見ると、確かに廉と翔馬に五人の女子達が囲んで話しながら出て来るのが見えた。
よく見ると、翔馬と廉は似たような雰囲気で、二人共可愛らしい印象だ。
とはいえ翔馬は19歳、廉は24歳なので、五歳も、歳の差があるのに実際見た目年齢は変わらなかった。
廉が言っている。
「うーん、だから僕のシャンプーはねぇ、研究所で研究途中のやつだから、市販されてないんだよー。実験台ってこと。だから、銘柄は教えられないんだよー。」
どうやら、あまりにも廉の髪がサラサラなので、女子達が聞いているらしい。
美加が食い下がっている。
「それが市販されたら買うよ!どこのメーカーか分かってたら、他の今出てるやつももしかしたら良いかも知れないし。海外のメーカーなの?」
廉は、困っている。
巽が、言った。
「…ヒトの細胞を研究しながら生み出したものなので、まだ初めての試みでね。」女子達が、こちらを見た。巽は続けた。「廉は実験台第一号なので、これからどうなるのかわからないぐらいだ。もちろん、それが初めてなので、他に市販されているものはない。廉は日本語があまりなので、追い詰められたら英語で話し始めるぞ?あまり追い詰めないでやってくれないか。」
女子達は、黙り込む。
廉は、ホッとしたように巽を見た。
「そう言えば良かったんだね。僕、ホントに言葉がまだ少ないから説明が難しいの。だからごめんね。」
英語なら、どんな感じに話すんだろう。
達也は、思いながらそれを聞いていた。
何しろアンパンマンから学んだだけなので、あの話し方になっているはずなのだ。
英語だったら、案外冷静にガンガン発言するのかもしれない。
誰にも理解できないが。
仁が、言った。
「さあ、じゃあちょっと早いが10分前だ。席について話し合いを始めるか。」と、いつの間にか暖炉の前に置いてある、ホワイトボードを指した。「オレ、端に立ててあったのを見つけたんだ。これで重要な結果とか書き出して行こう。」
話し合いが始まる。
達也は、気持ちを引き締めて番号が書いてある椅子へと向かったのだった。
7の椅子に座ると、隣りは6の颯太と8の庄治だった。
20人も揃うと壮観だ。
仁が言った。
「じゃあどうする?役職から出すか。占い師は昨夜お告げをもらってるはずだよな。」
すると、巽が言った。
「私が占い師だ。7は人狼ではない、と出た。」
オレ白だ!
達也は、早々に色をつけてもらえてラッキーだと顔を輝かせる。
すると、圭太が言った。
「オレも占い師。8白。」
この村には二人の真占い師が居る。
これで確定ならイージーゲームだが、同時に二人が言った。
「15健斗占い師CO19白!」
「11翼占い師で6白!」
四人だ。
かおるが、息をついた。
「…やだなあ、四人も居るの?でも、二人が真占い師なんだよね?」
仁が頷く。
「だよな。どうする?共有者が居ないしなあ。誰が司会やる?」
巽が言った。
「私は自分が真だとしっているし、できたら自分の白先の達也に司会をして欲しいが、そうは行かないのだろう。私目線でも、まだ達也が狂人の可能性もあるしな。ここは皆で話し合って進めて行くしかないだろう。」と、仁を見た。「君はとりあえず、ホワイトボードに結果を書いて行ったらどうか?」
仁は、自分がやるのかと思ったようだったが、仕方なく立ち上がってペンの蓋を取った。
「ええっと…まず巽さんが7番達也白、圭太が8番庄治白、健斗が19番廉白、翼が6番颯太白。」
早紀が言った。
「霊媒はどうする?二人も居るし、ここはフルオープンで良いと思うんだけどな。多かったら霊媒からローラー掛けてもいいでしょ?」
達也が、言った。
「待て、霊媒ローラー?普通と違って二人真霊媒が居るんだぞ。縄が2本も無駄になる。この村は9縄8人外のキワキワな村なんだぞ。狐は呪殺狙うとしても、狩人グッショブないとヤバい。猫又には、すまないが、何としても襲撃されてくれと願うしかない。」
村の空気がその通りだという雰囲気になった。
仁が言った。
「まあ、霊媒をローラーするのはまずいとしても、二人居るのだから出ることには賛成だ。一人襲撃されても一人残るしな。騙りが出たら、どうするかだが。」
巽が、言った。
「とりあえず、自分は霊媒師だという者が出ようと思ったら、手を挙げてくれ。」
その言葉と共に、三本の腕がおずおずと上がった。
かおると、拓也と、裕太だった。