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慌ただしく食事を終えてダイニングキッチンから出て来ると、そこには三原はいなかった。

とりあえず言われた通りに円形に並べられた椅子の、自分の番号の席に座ると、皆も次々に出て来て席に分かれて座って行く。

こうして向かい合うと、あのアプリの画像のようで何やら面白かった。

全員が揃ったのを見計らったように、パッと暖炉の上の二つのモニターが青い画面で着いた。

「あ、ついた!」

誰かの声が言う。

達也は、黙って頷いてそれを見上げた。

すると、声が流れて来た。

『この度は、リアル人狼ゲームにご参加頂きましてありがとうございます。ルールブックにありましたタイムスケジュールでは、10時にお部屋に入っていないと追放となりますが、本日はご説明が終わってから、お部屋に入って頂くことになります。それでは、只今よりルールの説明を致します。』

全員が、固唾を飲んで耳を澄ませた。

何しろ、賞金がかかったゲームなのだ。

声は続けた。

『まず、役職から。各役職の役目はまた、ルールブックを参照ください。ここでは内訳と、役職行使の仕方についてご案内します。』画面に、文字が出る。『まず、内訳は、狼4、狂人1、妖狐2、狂信者1、占い師2、霊媒師2、狩人1、猫又1、村人6です。村役職の方々は、夜10時にお部屋に入った後、10時59分までの間に役職行使をしてください。まず占い師は、時間内に占いたい方の番号を腕時計に入力して、最後に0を三回押してください。その後、その番号の方が人狼か、人狼でないかが液晶画面に表示されます。霊媒師の方は、時間になりましたら液晶画面にその日追放された人が人狼か、人狼でないかが表示されます。どちらとも、11時には結果が消えますので、忘れないようにしてください。それから狩人の方。護衛したい相手の番号を時間内に腕時計に入力して、最後に0を三回押してください。その夜、その一名が護衛されます。同じ人を二日連続で守ることはできません。』

全部腕時計なんだなあ。

達也は、思って聞いていた。

画面が、タイムスケジュールのものに変わった。

声は続けた。

『ご覧のように、狼陣営の役職行使の時間は11時から午前4時までとなっております。この時間になりましたら、人狼の方々はお部屋の外に出ることが可能です。ご自由にお話し合いをして、襲撃先の番号を入力して最後に0を三回押して確定してください。その際、誰か一人の腕時計からの入力で結構です。必ず誰かを襲撃するようにしてください。襲撃しない場合、ルール違反となり全員追放となり、ゲームは終わり村人も妖狐も全員追放になります。』

つまり、勝者ナシになるのだ。

達也は、ため息をついた。

ならば絶対人狼には襲撃してもらわねばならない。

声は、淡々と続けた。

『役職行使が終われば、朝になります。皆様のお部屋の扉は、夜10時に施錠されております。次の日、朝6時になりましたら解除されます。そこからは自由行動となりまして、その間に話し合いを済ませて、夜8時になりましたら、こちらのお席にて投票してください。投票しなかった場合は、追放となります。8時前になりましたら、自動音声が流れますので、それに従ってその日追放する相手を選んでください。時間を越えた場合は、放棄とみなされ追放となります。必ず8時に投票してください。その後、10時までにお部屋にお入りください。間に合わず部屋が施錠されてしまった場合、追放となります。』

さっきから追放追放言ってるが、果たして追放になったらどうなるんだろう。

達也が疑問に思ったことは、圭太にも疑問だったらしい。

圭太が、沈黙を破った。

「あの、追放ってどうなるんですか?ゲームに参加できないんですよね?別の場所に移動させられる感じですか?」

声は、答えた。

『追放になれば、ゲームに参加することはできません。別の場所に移動して頂きます。』

やっぱりそうか。

そうなって来ると、初日に追放されたら皆と引き離された上にスマホは圏外だし、かなり退屈なことになりそうだ。

ここは踏ん張らないとと、達也は思った。

『その他、ルールブックに書いてあることをよく読んで頂きまして、違反のないようにお過ごしください。違反者は、その場で追放となります。以上でご説明は終わりです。重ねまして、この度はリアル人狼ゲームにご参加頂きまして、ありがとうございます。賞金獲得を目指して、皆様お励みください。尚、MVPを獲得した方には、別途賞金もございますので、楽しみにしておいてくださいませ。では、お部屋にお戻りください。本日は、10時半にお部屋が施錠され、占い師には白先のお告げが液晶画面に表示されます。人狼の皆様は、11時より外に出ることができますが、本日の襲撃はなしです。以上です。』

プツン、と画面は消えた。

皆は、顔を見合せる。

とりあえず、今の時間は10時ジャストだった。

仁は、言った。

「まあ、じゃあ部屋に入るか。みんな、部屋から出られなくなるから飲み物とパンぐらいは持って上がった方がいいんじゃないか?夜中に目が覚めて腹が減ったらつらいしな。ところで、三原さんはどこだろう?」

巽が答えた。

「…どうも、説明にも誰も姿を現さないし、これだけの人数を集めた催しにしては杜撰な気がするがな。三原という男は、もう役目を終えてどこかへ戻ったのではないのか。崎原も結局ついては来なかった。ゲームの間、我々は勝手に時間通りに行動するよりないのでは。」

廉が、背伸びをして椅子から立ち上がった。

「もう、なんでも良いけどね。楽しかったら良いなあって思うだけ。ねぇ、キッチン行って飲み物と食べ物持って早く部屋に帰ろう?眠くなって来ちゃったー。」

廉はマイペースだ。

アンパンマンで習得した日本語では、危機感の持ちようもなかった。

達也も、立ち上がって廉に続き、皆がそれに倣ってキッチンへと向かう。

運営の関係者が誰一人見えないのは少し、不安になったが、達也は気にしないようにしていた。


皆で取り合うようにパンを選んで、ペットボトル飲料を2本ほど掴み、達也は二階へと帰った。

部屋は確かに静かで、何の問題もない。

窓から何が見えると圭太にきかれたことを思い出し、外を見て見たが見えたのは、暗い中庭らしき場所と、正面に見える別棟の暗い窓だけだった。

…こっちはオーシャンビューじゃないわけだ。

達也は、少しがっかりした。

とはいえ、この部屋の豪華さはタダで泊まっていることを思うとそれだけでもラッキーだった。

達也は、風呂に入ってからスウェットの上下に着替えて、いつもの習慣で風呂で洗った下着を風呂場にせっせと干し、換気扇を回しておいた。

別に換えの下着はしっかり持って来たので洗濯しなくても良かったのだが、洗濯を溜めるのが嫌なのだ。

そこは性分なので、仕方がなかった。

…やることないなあ。

さっさと終えた達也が思っていると、いきなり静かな部屋の中に、ガツンという音が響き渡った。

「え、なんだ?!」

扉の方からだ。

外の音が一切入って来ないので、尚更その音は大きく聴こえて達也は飛び上がった。

恐る恐る扉に近付いて見ると、内側の鍵は開いている。

…外に出なければ良いんだよな。

達也は、そっとノブを回して扉を引いてみた。

だが、ガンと何かに引っ掛かって扉は開かなかった。

「…別の鍵が勝手に掛かるのか。」

達也は呟いた。

ふと振り返って金時計を見ると、10時半を指していた。

こうして正確に、全員が閉じ込められるというわけだ。

…何もすることがないなあ。

達也は、村人である自分を呪った。

今頃、占い師は白先を見ていることだろう。

狼達は、11時に顔合わせだと緊張して待っているのではないだろうか。

「…寝るか。」

達也は、何もすることがない自分にふて腐れて、ベッドに入った。

ベッドサイドにある照明のスイッチを切ると、真っ暗になる。

ふと窓の方を見ると、空に満天の星空が見えた。

…わあ…綺麗だなあ。

そう思ったのを最後に、達也はそのまま意識を手放した。

思っていたより、達也は疲れていたようだった。

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