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二階には、広い廊下があった。

端から順に、1から6までの金色のプレートがあって、その対面に残り四つの部屋が並んでいる。

つまり、達也は1の部屋の対面だった。

「あ、達也さんがお向かいさんだね。」

かおるが言う。

達也は、なんてラッキーと内心思いながら、何でもないように頷いた。

「そうだね。よろしくな。」

かおるは、微笑んで頷く。

「こちらこそ。」と、扉を開いた。「わあ!凄い!」

え、と達也は思わずかおるの背後から中を見る。

確かにかなり広い洋室で、外の雰囲気に違わず、ザ・洋館の部屋だった。

達也の部屋の扉も急いで開いてみたが、同じ広さの同じ仕様だった。

かおるはさっさと大喜びで中へと入って扉を閉めたので、達也も感想を言い合う暇もなく中へと入るしかなかった。

入ると、広い通路の左側にクローゼットがあり、右側の扉を開くとユニットバスとトイレだった。

ボストンバッグをクローゼットに放り込んで奥へと進むと、右側には天蓋付きの大きなベッドが一つ、ドンとあった。

左側の壁には長い机があり、その上にまたルールブックと書かれた冊子が置いてある。

そして、金時計がくるくると振り子を回しながら置いてあった。

机の下には、小さな冷蔵庫まである。

正面には窓があって、その下にアンティークっぽいテーブルと椅子が二つ、鎮座していた。

…すげぇ。高そう。

達也は思った。

とりあえず、一人で感想を述べていても仕方ないので、トイレに入って用を済ませてから、スマホだけを手にして部屋を出た。

その時、チラと見たが電波は完全に圏外だった。

…こんな孤島だもんなあ。

廊下に出ると、圭太が出て来ていた。

「あ、達也。利喜も一緒に行く?」

達也は、頷いた。

「そうしよう。利喜は圭太の隣の隣だな。」

といっても結構距離がある。

何しろ一つ一つが広いのだ。

「達也からは何が見える?オレの部屋からは海だった。そっちは海側じゃないからさ。」

達也は、暗いから外は見てなかった、と顔をしかめた。

「マジで。オレ見てなかったわ。後で見とくよ。」と、4のプレートの扉をノックした。「おーい利喜。行くぞ?」

…返事がない。

達也が圭太を見ると、圭太はちょっと強めにノックした。

「利喜?行くぞ。」

シーンとしている。

二人が困惑していると、上から降りて来た仁が言った。

「あれ。何してる?」

達也は、答えた。

「利喜と一緒に行こうと思ったのに。出てこないから、先に行ったのかも。」

すると、一緒に降りて来ていた巽が言った。

「ああ、聴こえないんだ。」え、と達也と圭太が驚いた顔をすると、巽は続けた。「私も廉の扉をかなり強くノックしたのに、全く聴こえなかったらしい。」

廉が、頷いた。

「そう。めっちゃ防音効いてるの。急に扉開いてびっくりしたもん。そういえば、中に入ったら静かだったなあって思って。」

完全防音仕様なのだ。

仁は、頷いた。

「オレもそういえば、巽さんがノックしてくれたらしいが全く気付かなかったからな。外に出たら、巽さんが廉の部屋の前で扉をガンガン叩いてた。ほんとに聴こえないみたいだ。」

圭太と達也が呆然としていると、利喜の部屋の扉が何の前触れもなく、いきなり開いた。

ギョッとしていると、利喜もびっくりした顔をした。

「え?!何してるんだ?」

いや、こっちが聞きたい。

達也は、息をついた。

「めっちゃ防音効いててノックしても聴こえないみたいだ。これからはいきなり開くかもだけどごめんと先に言っとく。」

利喜は、目を丸くした。

「え、マジで?!全然聴こえなかった。うん、分かった。」

夜はよく眠れそうだけど。

達也は思いながら、バラバラと出て来ていた皆と共に、一階へと降りて行ったのだった。


リビングは、正面に大きな暖炉があり、天井から二台の大きなモニターが吊り下がる、それは広い場所だった。

大きな作り付けの窓が庭へ向けてあって、ライトアップされた庭が見えている。

窓際には、20人全員が座れるだろうと思われる、多くのソファが設置されていた。

そして、暖炉の前には丸く円を描いて、椅子が設置されてあった。

向かって右側の扉の前に、三原が居て入って来た皆に向けて言った。

「後でゲームのご説明を致しますので、先にこちらへ。ダイニングキッチンです。もう始めていらっしゃる方もいます。皆様も、お席についてお食事をどうぞ。」

達也は、ワクワクしながらキッチンへと扉を抜けて入って行った。

そこには、大きなテーブルがあって、その上に四角いお弁当箱のようなものが置かれてあった。

先に来て食べ始めていた、翔馬が言った。

「あ、みんな来たか。おいしいよ、早く食べよう。」

お前はもう食べてるけどな。

それでも憎めないのが翔馬だった。

達也は落ち着いて手近な席に座ってその箱を開くと、確かに豪華な和風の懐石のような料理が詰まっていた。

…これがタダなのかあ。

来て良かった、と達也は思いながら食事を始めた。

三原が、言った。

「お食事しながらお聞きください。」全員が、三原を見る。三原は続けた。「本日から、こちらでの生活が始まります。お食事は各自好きに摂って頂くシステムになっておりまして、こちらの業務用冷蔵庫には、多くの食材が入っています。自炊されるのも良し、冷凍やインスタントで済まされるのも良し、パンなどは毎日補充されますので、ご遠慮なくご利用ください。こちらは冷凍、こちらが冷蔵です。飲み物はこちら。こちらも補充されますので、自室にお持ち帰り頂いて、そちらの冷蔵庫にストックされても大丈夫です。アルコール飲料もございます。節度をもってご利用ください。」

ご飯は自炊かあ。

達也は、少し残念だった。

そうなって来ると、自分はコンビニ飯ばかりの毎日なので、ここでも冷凍食品に頼ることになりそうだ。

とはいえ、開いた扉からチラと見たが、惣菜なども入っていたので、困ることはなさそうだった。

三原は、続けた。

「では、お食事がお済みになられた方から順にリビングの方へ出て来て頂いて、丸く並べられた椅子の方へお掛けください。椅子には番号がありますので、ご自分の番号のお席にどうぞ。説明は以上です。」

皆は、口をもぐもぐとさせながら頷く。

三原は、皆のことを人当たり見回してから、ダイニングキッチンの扉から出て行った。

圭太が、隣りで言った。

「…なんかさ、ルールブック見た?タイムスケジュールきっちりしてるんだよ。リアル人狼ゲームだから、夜の間村人は外に出られないみたいだ。」

達也は、え、と圭太を見た。

「そうなのか?オレ、そこは適当に見ててまだ全部見てないんだ。」

すると、巽が言った。

「ルールブックは読んでおいたほうがいい。やはり賞金のかかったゲームなので、細かい取り決めが多いようなのだ。恐らくこれから説明があるだろうが、細かい所はしっかり弁えていないと、追放になるらしい。そうしたらゲームに参加できなくなる。ちなみに夜10時には全員部屋に入らねばならないらしいが、今日は初日だしそれはないみたいだな。急かせる様子でもなかった。」

確かに、三原は急げとは言わなかった。

到着したのが夜8時過ぎ、それから上陸して今は9時少し前だ。

まだ皆食事を始めたばかりだし、これからゲームの説明もあって、10時に部屋に入るのは無理そうだった。

「…とにかく、食べてしまおう。」

達也は、隣りの圭太に言って、そこからは黙々とつい急ぎ気味に、食事をしたのだった。

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