3呪い、擦りつけってどういう事?
《呪いが軽減されました》
「……ふぅ。勝った勝った」
一息つく僕の周りには8つの首。残りも5つも落とし終わった。今までなら1時間以上時間をかけて倒す敵だったんだけど、属性とか気にせずに攻撃できるこの剣だと5分。8つの首にそれぞれついてた属性を気にせずに攻撃できたのは強いね。ついでに呪いが軽減されたのはグッド。攻撃力もまた上がるし、スキルも新しく出てくるわけだよ。
「新しいスキルは何かなぁ~。『鑑定』!」
僕は期待しつつ剣を鑑定する。
《呪われた剣》
・ダメージ+437
・耐久値5000
スキル:『貫通10』『全属性攻撃10』『武器破壊10』
状態:呪い(『封印7』『能力制限10』『鈍化7』『脱力7』)
ランク:A
「……おふぅ」
変な声が漏れる。
いや。仕方ないんだよ。だって、『武器破壊』だよ。武器破壊。目茶苦茶強いよ。
効果は、武器へ与えるダメージが11倍になる。この剣のダメージで考えると、たぶんその辺の武器は2~3発で壊せると思うよ。《錆びた剣》とか《欠けた剣》とかの耐久性が低い武器だと1回で壊れる可能性もあるね。僕、対人戦闘でも凄い強くなっちゃった。……まあ、強いのは僕じゃなくてこの剣なんだけど。
……なんて少し寂しい気持ちになりながらも、暗くなるまで狩りを続けた。そうして、少しずつ呪いを軽減させていく。
数週間後。
《呪いが軽減されました》
「お、おわったぁ~」
呪いの軽減。これで10回目。最初の頃こそポンポンと軽減されてたけど、前回から今回までには1日以上掛かったよ。でも、そのお陰でかなり剣は強化されたね。強化、っていうよりも力の解放なのかもしれないけど。
僕の頑張りのお陰で、呪われた剣を鑑定しても、封印や鈍化の呪いは消えている。唯一残ってるのが、『能力制限10』。これだけは全く消える様子がない。今までやってきて1度も軽減すらされてないからね。相当強力な呪いなんだろうけど、他の呪いを解除しても軽減すらされないなんて。
「まあ、今でも充分強いから良いんだけどねぇ」
そんなことを呟きながら、僕は帰路につく。最近は色んなモンスターを倒せてるから収入も沢山。今日もがっぽり稼げそうだねぇ。もしかしたら冒険者のランクも上がっちゃうかも。ぐふふっ。
なんて思ってたら、
「キャアアァァァァァ!!!!!??????????」
悲鳴が聞こえてきた。ダンジョンで悲鳴が聞こえるのはよくあることだけど、この浅い層で聞こえるのは珍しい。それこそ初心者がミスして殺されそうになってるとかくらいなんだけど。
……とりあえず何が起こってるのか分かんないし、行ってみようか。
そうと決めれば僕は走り出す。残念ながら剣の効果で走る速度を上げられたりはしないけど、元々遅くはないから充分。僕は何でも、ほどほどにこなせるからね、
「大丈夫ぅ~?」
悲鳴が聞こえた場所へ到着。……したは良いんだけど。
「ブモオオオオオォォォォォォォォ!!!!!!!!!」
モンスターの雄叫び。そして、
「……………………はぁ!?」
僕の口から漏れる驚愕の声。でも、仕方ないんだよ。目の前にいるのは、こんな浅い層にいるわけがないモンスター。ミノタウロスなんだから。
「倒さなきゃいけないけど、……とりあえず君、歩ける?」
僕はミノタウロスに警戒をしつつ生存者の元へ向かう。僕が向かったのは壁により掛かって小さくなってる女の子。その少し先にはミノタウロスと戦ってるパーティーがいるけど、あっちはまだ数分もちそう。
「あっ。だ、大丈夫です……・っ!」
僕に声をかけられた個は大丈夫と言いつつ立ち上がろうとして、動きを止めた。そして、その視線は自分の身体の下の方へ。僕もつられて視線は向かい、
「……うん。大丈夫じゃないのは分かった」
ちょっとシミが出来ていた。怖かったんだね。
と、そんなことを思って女の子をどう対処しようかと思っていると、
「おい!人がいるぞ!」
「俺たちじゃ無理だ!擦り付けろ!」
ん?今擦り付けるとか不穏な単語が聞こえたんだけど?
そう思って振り向くと、さっきまでミノタウロスと戦っていたパーティーがこっちに走ってきていた。そのままそのパーティは僕たちの横を通り過ぎて、
「悪いな!」
「すまないが、俺たちの代わりに死んでくれ!」
そんなことを言って走り去ってしまった。そうして残ったのは、僕を睨むミノタウロスと、現状を理解して顔を青くしてる女の子と。僕。
……あのパーティー。僕にミノタウロス任せて逃げたね!やられたぁ~。こういう事するのは冒険者のルール違反に当たるけど、目撃者が消えれば良いとか思ってるのかもね。せいぜい生き残って、賠償金をふんだくるとしようか!
「ねぇ。君は戦える?」
「わ、私ですか?無理です!」
無理らしい。まあ、染みつくってるみたいだし分かっちゃいたけどさ。
僕1人で戦うことになるのかぁ。ミノタウロスはヒュドラより数ランク上の相手だから、真正面からやりたくないんだけどなぁ。というか、戦った経験も無いし。
「でもやるしかないんだよ、ねぇ!」