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その解釈が全部間違っているって言ったらどうする?




 午前中に学校を出て目的の場所に行った日の放課後、笑一は陽向と一緒に帰宅していた。

 歩いて少し経ち、以前にクレープを一緒に食べた公園に近づくと、笑一は陽向に「少し時間良いか?」と言い、二人で公園のベンチに座った。


「星宮、俺は明日の放課後、この一件を終わらせようと思っている」


「!?」


「星宮の机が汚されていた月曜日からこの件について調査を進め、今日の朝にほぼ真相にたどり着くことができた」


「...今日の用事っていうのも今回のこと絡みだったのね」


「黙っててごめんな。それで、明日本条たち女子グループと森下先輩を呼んで、真実を明かそうと思うんだが、俺の予想が正しければ、星宮が思っている以上にこの件は大事になると思う」


「それは誤解を解くだけの話に収まらないってことよね?」


「そうだ。星宮はこの件、いやこの事件の当事者だからこそ、もしかしたら真実を知って嫌な思いをするかもしれない。それでも構わないのなら、明日の放課後は予定を開けておいて欲しい」


「私は...今回のことで仲良くしてたグループからハブられて、嫌なこともされて悲しくて逃げ出したかった。周りも距離を取るし、私はどうしてこんなことになっちゃったのって思ってた。でも、私の味方だって言ってくれて、私を救ってくれた人がいた。その人が一緒にいてくれるなら...私はもう怖いことなんてないわ。きっと本当のことを知っても大丈夫だと思うの。だからね、綾瀬。明日も私の味方でいてくれる?」


「もちろん。俺は『どんなことがあっても星宮の味方だ』。だから明日、一緒にこの事件を綺麗さっぱり終わらせて、違う店のクレープでも食いに行こうぜ!」


「...うんっ!」


 そうしてベンチから立ち上がった二人は、明日に向けて心を引き締め、帰路に着いたのだった。




 次の日の放課後、海明高校の視聴覚室に由美たち女子グループと亮太が笑一により集められた。

 笑一と陽向もすでに視聴覚室におり、それぞれが様々な思いを乗せた視線を交わしている。

 そして準備が終わった笑一は、この場にいる全員に声を掛けた___。


「それじゃあ、真実を明らかにしていきますか」







***







「まず、今回の事の発端は、星宮が本条から森下先輩を奪おうとしたからっていう意見の相違からで良いよな?」


 笑一がそう問いかけると、女子グループたちは頷き、「やっぱり陽向が悪いに決まってるよね~」との声も上がった。


「でも星宮はそんなつもりは全くなかったんだよな?」


「ええ。あの日、森下先輩に由美へのプレゼントのことで相談したいと言われた私は、どうしてもと言われて目的地の喫茶店に行ったの」


「ちなみに星宮、その時に森下先輩と日時を決めた時のLIMEって見せてもらっても良いか?」


「もちろん良いわよ」


 そうして陽向は亮太とのLIME(メールや通話ができるコミュニケーションアプリ)を画面に表示させた。

 そこには確かに亮太から相談を持ち掛けられ、集合場所を決めたやり取りが残されており、女子グループたちに動揺が見られた。

 しかし、由美は「でも...」と話を続けた。


「陽向が亮太先輩とホテルの方に向かっている証拠の画像があるのよ?そのことはどう説明するのかしら」


「その時のことも話してもらっても良いか?星宮」


「分かったわ。喫茶店で森下先輩と話している時、急に頭がボーっとしてきたの。そうして頭がぼんやりしたままどこかに移動している感覚があって、意識がはっきりしてきて周りを見ると何故かホテルの前だった。怖くなって肩に置かれていた森下先輩の手を払って駅まで走った後、すぐに家に帰ったわ」


「陽向の言い分は曖昧な箇所が多いわよね?本当に頭がぼんやりとなんてしていたのかしら」


「でもっ!私は本当に何も分からなかったの!」


「口だけでは何とでも言えるわ。それに画像がある以上、あなたがホテルの方に向かった事実はなくならないわ」


「...とまぁ、ここの食い違いが今回の件を引き起こしている原因なんだよな。星宮は何もしていないと言っていて、本条たちは陽向が先輩に手を出そうとしたと思っている。本条に聞きたいんだが、森下先輩は星宮が急にボーっとし出したから休憩場所に連れて行こうとしてあの場所に向かったって言ってるんだけど、それでも星宮が先輩を誘惑してあの場所まで誘導したっていう意見は変わらないのか?」


「もちろんよ。前にも言ったけど亮太先輩は真面目で誠実な人なの。あんないかがわしいホテルの通りになんてどんな理由であれ行くはずないじゃない。だから陽向が全ての原因なのは間違いないわ」


「...と、彼女が言ってるんすけど、森下先輩はこの誤解を解こうとは結局しなかったんすよね?」


「ははっ、僕は星宮さんに誘惑されたわけではないって由美には言ったんだけどね。僕は星宮さんを休憩させようとは思っていたけど、そんな方面に連れて行こうとは思ってなかった。でも今思い返せば、あの時星宮さんは僕をそっちの方面に行くように誘導していた気がするんだ...」


「っ!?私、そんなことしてません!」


「でも陽向はその時の記憶があやふやなのよね?亮太先輩が言ったように実はホテルまで誘導してたんじゃないのかしら?」


「わ、私は...」


 由美や亮太の言葉、それに残りの3人に厳しい視線を向けられて、陽向は俯いてしまった。

 しかし笑一は陽向の肩にポンと優しく手を置いて、笑一の方を振り向いた陽向に笑顔を見せた後、周りにこう話を続けた。


「本条たちが言うことは分かった。確かに画像という証拠もある以上、そう解釈してしまうのも無理はないのかもしれない。でも___










___その解釈が全部間違っているって言ったらどうする?」


 そうして笑一はニヤリと笑みを浮かべるのだった___。


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