流るるキャットテイル
豪雨ニャ。
豪雨ニャ。
大地を打ち付ける、恐るべき豪雨ニャ。
生命の危機ニャン。
打ち付ける雨粒がデカいニャ。
跳ね返って、降り注ぐニャ。
逃げないと危ないニュ。
降り注ぐ雨粒は、大地を穿ち、吸収されることなく、コンクリートの道を川となり流れ始めた。
ウニャ。
高台に逃れるニャ。
辺りに山はないニャよ。
人間が作る山の、住まる処ならば、水は来ないニャ。
…
さあ、走りなさい、もう時間はありません。
高台を見つけて、逃げるのです。
…
…ニャニャ。
門扉をすり抜けて、階段登るニャ。
どうにか難を逃れたキャットテイルは、とあるマンションの外廊下から辺りを眺める。
一面に濁流が流れ、辺りは雨の格子で閉ざされていた。
…ニャーニャーと救けを呼ぶ鳴き声が、何処から聞こえるニャ。
大変ニャ。濁流に、虎猫の五郎次郎がニャーニャー鳴きながら流されていくニャ。
さらばニャ。さらばニャ。
自然の猛威には逆らえないニャ。
必死で、お別れを叫ぶニャ。
さらばニャ。さらばニャ。
濁流に流されていった猫の鳴き声は、いつしか消えていた。
僕に、今出来ることは、高台に登ることニャ。
シュタシュタと階段を登っていく。
…
濁流を階下に見下ろし、ニャーニャー鳴いていたら、扉が開いて、太ったペンギンと目が合ったニャ。
…
…どうやら、以前会ったペンギンが住むとこだったらしいニャ!
部屋の中に招き入れられ、ペンギンと同居しているお姉さんから、お風呂に入れられタオルで身体を拭かれて、暖かい風を出すカラクリで乾かされたニャ。
思わず眼を細める。
美味しいご飯もらい、布団の上で丸くなる。
窓には雨が打ち付け、ガタガタいっているのが聞こえる。
ああ…天国にゃ。
僕のように優れたる能力を自負する猫戦士ですら、自然の猛威の前には役には立たニャイ…。
ただ、それでも足掻くことはできる。
考え、走り、逃げ、登った先に、天国があったニャ。
…
朝、起きると、お日様が出ていた。
ペンギンと一緒にご飯をいただいて、お別れして外に出ると、濁流は消えていた。