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「はあ……、金目の物があるかと思ったが、意外とないもんだな。がらくただよ」

 祖父の遺品をがらくたと言い捨て、真は顔を顰める。こいつがタダで片付けをするはずがないなと、友信は呆れながら倉庫の内部を眺めた。

 何度も家に遊びに来たことはあったが、倉庫に入るのは初めてだった。棚にはペンキやポリ缶、工具用品や部品等がざっくばらんに置かれ、いかにも倉庫くさい匂いを放っている。

 友信は、そこに立てかけてある縦長の大きな額縁に興味を惹かれた。近づいてひっくり返すと、古い文字でつらつらと筆書きされた用紙を収めてあった。いわゆる古文書というものだ。友信がいつの時代のだろうと目を皿にしていると、真が後ろからやってきてケチをつけた。

「……分け前をやるから、手伝ってくれてもいいのに」

「なあ、これも爺さんの遺品か?」

 真はつまらない物を見るような眼差しで頷く。

「ああ、そうだよ。いずれ捨てるつもりだけどな。金にならなそうだし」

「そんな、勿体ない」

「お前、やっぱり変人だな。学生時代から訳のわからない文字の解読に熱中してたし」

 その変人ぶりのおかげで、大学の准教授という地位があるのだ。時間があれば風呂にも入らず、研究に明け暮れる幸せな日々だ。学生たちからは奇異な目で見られているが、そんなことは関係ない。

「……そうだ。せっかくだから解読してみせろよ、先生」

 真はわざとらしく友信の肩に腕を回す。試されているとも頼られているともとれる状況が、友信を奮い立たせる。友信はコホンと咳をしてから、ところどころ掠れている文字を補填しつつ読み上げた。

「いいかお前、よく聞けよ」

「聞いてるよ」

「違う、そう書いてあるんだ」

 気を取り直して、再開する。

「我らが武将である三久田我蔵(みくたがそう)は、莫大な財産を銀山に埋めた。家臣の私が保証する。後世の人間よ、欲しけりゃ探しだすがいい。ははは」

 沈黙の後で、二人は顔を見合わせた。脚色したことを責められるかとおもったが、真はおもむろに歯を見せて笑い、両手でガッツポーズした。遡上する鮭の如く、何度も飛び跳ねて喜びを露にする。

「うおー! やったぜ、最高の遺品じゃないか」

 真が嬉しがるのは当然だ。三久田我蔵は戦国時代に此処等一帯を支配した大名で、彼の先祖にあたる人だと代々言われてきたからだ。つまり、古文書が本物であれば、文字通り莫大な資産が手に入ることになる。

「おい、気を挫くようで悪いが、信憑性があるわけじゃないんだぞ」

 途端に、真は口を尖らせた。

「俺の先祖が嘘つきだって言うのかよ」

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