表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この怪異は誰のもの?  作者: イゼオ
第十一章 素晴らしきかな、文化祭
270/281

素晴らしきかな、文化祭㉓

氷魚ひおくん……ありがとう」

 いさなはモップを下ろして微笑んだ。フランケンの怪物を倒せたことにも安堵したし、何より氷魚が無事に戻ってきてくれたことに心底ほっとする。

「いえいえ。倒したのはいさなさんですよ」

「氷魚くんが水をかけてくれたからだよ。なんで水が弱点だってわかったの?」

 相手はダンボールではあったが、魔術で強化されていた。どうして水をかけるという発想に至ったのか。

「試練だからです。凍月いてづきさんもいないし、刀も使えない。だったら、なにかしら解答が用意されていると思ったんです。紙は水や火に弱いから、それで連想しました」

 氷魚の答えはシンプルだった。確かに、実戦ではあるが、試練でもある。解答があってもおかしくはない。

「なるほど。わたしは力押しで倒すことしか考えてなかったよ……」

「直前に戦ったドラキュラがあっさり倒せましたからね。そこもさいかちさんの狙いだったのでは? 思考を誘導させようっていう」

「そっか……」

 氷魚の言うとおりだったら、自分は槐の思惑にまんまと乗せられてしまったことになる。

 自分の頭が固いことを思い知る。いつも凍月が助言をくれるから、頼り切っていたというのもあるかもしれない。

「水が通用してよかったです。外の水道の近くにこれみよがしにバケツが置いてあったので警戒したんですが、お助けアイテムでしたね」

「そうだったんだ」

「それじゃあ、先に進みましょうか。あんまり待たせると、ミオが怒っちゃうから」

 氷魚はバケツを置くと、携帯端末を手に取った。

 すっかりいつものペースに戻っている。

 相変わらず、異常な環境への適応力が高い。少し前まで怪異に関わりがなかった少年とは思えない。

 元から精神力が強靱なのだろう。怪異と関わるにあたって、精神の強さは何よりも大事だ。

 柔軟な発想、強い精神の力、そして生来の善良さ。

 いずれも、自分には――

「どうしました、いさなさん?」

 やや戸惑ったような顔で氷魚は言った。知らぬ間に、氷魚の顔をじっと見つめていたらしい。

 いさなは首を横に振る。

「いえ、なんでも。行きましょうか」


 その後、釣り竿を振っている人がいないにもかかわらずオートで飛んでくるコンニャクや、火事になるんじゃないかと心配になるくらい燃えさかる鬼火などに驚かされたものの、戦闘することなくゴールに到着することができた。

 人体模型が待ち構えているだろうと思っていたのだが、氷魚の予想に反してゴールは無人だった。ミオの姿もない。

「氷魚くん、これ」

 ゴールおめでとう、と書かれたボロボロの紙を咥えたお化け提灯を調べていたいさなが声を上げた。

 ライトで照らすと、お化け提灯はもう一枚紙を咥えている。

「なんでしょうか」

「調べてみるね」

 いさなはお化け提灯をモップでつつき、動かないことを確認してから紙を抜き取った。

「……っ」

 ライトのかすかな光に照らされたいさなの顔がこわばる。

「どうしたんですか?」

 いさなは無言で氷魚に紙を見せた。

 折りたたまれた紙の表には『果たし状』と書かれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ