さるかに合戦学園版（意味がわかると怖い話）
おとぎ学園には猿田というずる賢い不良学生がいました。授業のさぼりはしょっちゅう、遅刻常習犯で、おとぎ学園では有名なワルでした。
クラスの同級生に対して、宿題を見せろは日常茶飯事で、クラスの生徒にいやがらせばかりしておりました。
蟹沢はおとなしくまじめで美しい女子生徒でした。人望も厚く、蟹沢を慕うクラスメイトはたくさんいました。あるとき、蟹沢のうわぐつを校庭へ投げ捨てた猿田。うわぐつは雨上がりの水たまりに落ちてしまいました。泥だらけになったうわぐつを窓から眺めた蟹沢はとても悲しそうな顔をしましたが、周囲の友達が来客用スリッパを持ってきてくれました。蟹沢はどんなことをされても猿田に対して嫌な顔をひとつせず、誰に対しても優しく接しておりました。
美しい蟹沢と不良の猿田は正反対でしたが、しょっちゅう接点がありました。なぜかずっと同じクラスだったり、席がえしても近くに二人は存在していました。気の毒に思った、蟹沢の友人の蜂谷と臼井と栗林は猿田を懲らしめる計画をたてました。
嫌がらせとしては、猿田の困るようなことや間接的にケガをさせるということを知恵を出して考えました。自分たちが直接手を下さずに科学的に懲らしめる方法はないかと、蜂谷はホッカイロでやけどをさせる提案をします。あわてた猿田は水を求めてくれば、その時にドライアイスを使ってやけどをさせようという提案でした。
実際、計画をしようと⒊人で放課後話し合った後に偶然蟹沢と猿田が教室にいたのです。２人はなにやら真剣な話をしていました。
猿田が蟹沢に嫌がらせをしているのではないかと、３人は心配になりましたが、息をひそめて様子を見ていました。
「猿田、私は猿田のことを好きだった。でも、猿田は私のことを好きではないのでしょ」
蟹沢は意外な事実を告げています。３人は驚きました。
「俺は、おまえのことなんて……」
そういいながら顔を赤らめるどころか青ざめる猿田。
「私のアプローチをことごとくかわすなんて、あなたは罪人だわ。私の使用済みうわぐつをプレゼントしたのに、投げ捨てたわよね。宿題だって毎日あなたの家に答えを届けていたのに、拒否したわよね」
★解説
すべては蟹沢の猿田への異常なほどの深い愛情が猿田にとって迷惑で憂鬱な行為だったのです。自由主義で不良だからといって猿田は悪人ではなかったのです。先入観って怖いと思います。蟹沢が正義と思って読むと、とても猿田が悪い奴だと思えるけれど、この話はそうじゃないのです。
猿田は蟹沢の行為を迷惑に思い、ていねいに断っていたのでしょう。毎日家に宿題の回答を届けられることを気持ち悪く思った猿田は、彼女の行為を無視して他の人に宿題を見せてもらっていました。使用済みうわぐつをプレゼントされたら気持ちが悪いと思って思わず投げ捨ててしまう気持ちもわからなくもないのです。
猿田と蟹沢の合戦はそもそも一方的な好意の押し付けだから合戦ではなかったのでしょう。告白をされて青ざめるなんて、そういった理由があったのです。
