お後がよろしい私#6
問題が発覚した。
それも重大な。
「・・・どこなんだろうねぇ」
私はここがどこなのか知らない。ティアは『んな馬鹿な!?』と、言った。いや、実際に言ったわけではないが、目がそう言っていた。
目は口ほどに物を言う。なるほど、こういうことか。こんなに気まずくなるなら、口でいって欲しかったぜ。
「・・・じゃあ・・・この人たちは・・・?」
「知らないの!?」
知ってるのかと思ってた。この人たちって、ティアの村の人じゃないのか?じゃあ、さっきのって、本当にただの夢だったのか。
「てへへっ」
「『てへへっ』じゃねぇ!」
今けっこう大事なこと考えてたんだ。
「えへへっ」
「『えへへっ』でもねぇ!」
それでもティアは続ける。
「えふふっ」
「『えふふっ』ってなに!」
変な笑い声をあげ始めやがった。
「私はあなたの?」
「?」
フツーに知らない。なんだそれ。
「知らないの!?私はあなたの夜ご飯だよ!」
「夜ご飯?」
「有名なドラマだよ!第三シーズンもやってるよ!すごく泣けるし、笑えるんだよ!?」
「えっ『お帰りなさぁい。あなたぁ、お風呂?ご飯?そ、れ、と、もぉ・・・あ、た、しぃ?♡』じゃないの?」
私は体をくねらせながら言う。リーダーは大根芝居だと言うだろう。でも知るか。なんか楽しくなってきた。
「そーじゃない!えっちな話にしないで!おっぱいもむよっ!」
「どっちもどっちじゃねぇか!じゃあスカートぬがすよ?」
「ざーんねんっ!体操ズボンはいてますぅ」
「じゃ、体操ズボンをぬがそう」
「わたしのぱんてぃは黒のひらひらだよ」
「なんと!そんなえっちぃぱんてぃをはいてるなんて!貴様、何者だ!」
「・・・っ」
「なんて?」
ティアは黙る。あれ?私なんかおかしなこと言ったか?
「ねぇ、話長くない?」
「そうだよねぇ。飽きるよねぇ。だってこれまでにないくらいなっがい話なんだもん。もっとここにある死体の話をってコラァ!」
めっちゃ音が反響した。ラァラァラァ・・・。
エコーがかかってる。
「『おっぱいもむよ』って言ったのはそっちじゃん!」
「わたしはそこまで言ってないっ!」
「言ったじゃん!?」
うなぁうなぁうなぁ・・・。ないぃないぃないぃぃ・・・。じゃんぅじゃんぅじゃんぅ・・・。
「わたしがはいてるのは白いパンツっ!」
「っ!それはそれで・・・っ!」
パンツパンツパンツ・・・。でぇでぇでぇ・・・。
・・・なんかツパンってゆう謎のパンみたいな単語が・・・って、ああ!!
「パンツ!」
「なに!?」
いけねっ!
「いや、今、私はな?パンツ・・・じゃない、パン以外の食料がなくて困ってんだよ」
「水は?ないの?パンだけ?本当なの?」
「ああ。・・・まじだよ。私だって信じられないよ。だから私は、パンツ以外の食料を探してるんだ」
「ルナちゃんパン食ならぬパンツ食なの?」
「!?」
んん?私さっき何て言ってた?えーと、『だから私は、パンツ以外の食料を探してるんだ。』パンじゃない、パンツ・・・。
ああ!!言い直さなかったら良かった!
「いや、パン以外だ!」
「うふふ。今のは面白かったよ」
「何様だよお前」
ティアは、くちびるに人差し指をのせ、考える。
「んぅ・・・お子さま?」
「お後がよろしいようで」
なるほど。その発想はなかった。
私は、素直に感心した。
「・・・てか、そーいや私たち、なんちゅうところでなんちゅう会話してるんだ」
「あ、そういえば」
▲ ▲ ▼ ▼
「?」
なんか女の子の話し声が聞こえたような気がした。しかも、俺みたいな男がいたら話せないような話。
いや、気のせいか。
俺は壁にもたれてあやとりを続ける。あやとりっつっても、ほつれた服の布を細くよじって糸のようにしたものだ。よし。できた。亀。えーと、次は・・・。
俺は亀を滑り台にし、ダイヤモンドにする。それをほどいて・・・
「・・・」
はい、輪ゴム。けっこう覚えてるな。ガキのころは、亀、滑り台、ダイヤモンドと経由しなきゃこの輪ゴムができなかったんだよ。今もだけど。てか、あやとりってこれしかできないけど。
俺はできた輪ゴムをビヨンビヨンしながら何度目がわからない回想を始めた。