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海月の異世界漂流記  作者: みかみ かん
幕間『移動中』
8/51

頭を診てもらえ#5(2021,1,14修正)

 ・・・。

 浮いてる。ぶらーんって。

 支えもないのに。


「困るなぁ、ボクのかわいい妹へのプレゼントなのに」る


 私は、声のした方を向く。向くといっても、そのまま正面だが。

 プレゼントだと?


「世界一かわいいボクの妹がボクを嫌ってしまっているんだ。君のせいだよ?君みたいな(障害物)のせいでプレゼントを送るのが遅れるんだから。どうしてくれるんだい?」


 どうもしねぇよ、自分の胸に手ぇ当てて考えろってんだ。誰が障害物だ?この異常者が。

 そいつは、紺色の髪の黒い目を持つ青年だった。色とりどりのピエロのような服を着ている。ただ、手袋は着けておらず、細長い十指をこちらへ向けている。顔はかなりいい。彫りが深く、アイドルになれそうなレベルでカッコいいのだろうが、あいにく、私は野郎に興味はない。

 性格はクソだし。

 辺りは、暗闇に包まれていっていた。

 この空には、似合わない雰囲気だ。大道芸でも今から開くみたいな。気にくわない。上から目線だし。


「まぁ、君はもうすぐ死ぬんだ。答えられないよね?」


 私の浮いてる理由がわかった。私はさっきの糸みたいなものに胸の辺りを貫かれている。

 どーりで反論が言えないわけだ。


「大丈夫!すぐ楽にしてあげるっ!おにーさん優しいから♡」


 うわー、気持ち悪っ!オッエ!今、語尾にハートついたろ!きっしょ!空が暗くて良かった!どんな顔か見えてなくて良かった!

 私は、せめてその気持ちを伝えるために舌を出す。ベーっだ。

 あいつはそれに怒ったらしい。こちらに向けていた指先を勢いよく引いた。

 唐突に私は、電池が切れたロボットのようにくずおれる。痛みはない。もう痛みを通り越してしまっているんだろう。砂のざらつきが頬で感じられた。早く病院に行かないと死ぬやつだ。

 空は、もう夜といっても差し支えない暗さだった。あいつの顔だけでなく、行動もよくわからないのでかなりまずい。考えもわからない。待てよ?ひょっとして、あいつも病院に行ったほうがいいんじゃ?頭診てもらえよ、お前。あー、言いたいのに言えない!もどかしい!


「良い子はおねんねの時間っ!」


 まじか!まだ早いと思うよ!おねんねしている夢の中で死にたくないっ!


「夜はわたしの時間」


 ぼふんっと、なにか大きなものが倒れる音がした。赤い染みがじわじわと砂漠の砂に広がっていく。

 まさか、この子・・・。


「・・・っあ」

「しゃべらないで、ルナちゃん」


 私の前に立つ、赤毛の少女。その髪は、血で赤く染まっていたかは、私はわからない。


「・・・なにも、言わないで」


 わかりました。なにも言いません。声でないし。

 

 ピカッ!


「「――――っ!?」」


 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!

 私は声が出せないので、心の中で叫ぶ。うわーっ!び、びっくりしたぁ、驚き、桃の木、山椒(さんしょう)の木だぜっ!

 そして、目の前には、彼岸花。

 ・・・あっれぇ、見たことあるぞ。ちょっと前に。

 赤い、ふわふわした花が、葉っぱのない細い茎の上でゆらゆらと揺れている。まごうことなく、彼岸花だった。それが砂漠の砂の上に生えている。


「・・・なに、これ?」

「っ!―――――っ!―――――っ!(おい!不用意にさわんな!かぶれるっておばあちゃんが言ってたぞ!)」


 必死の訴えもむなしく、ティアは腕を伸ばしてそれを(つか)む。

 彼岸花が輝いた。

 意識が遠のいて・・・。


 そして、私は眠りにつく。



 ◆ ◆ ◆ 



「んがっ」


 起きた。びっくりするくらい寒い。ああ、床で寝てるのか。

 コンテナの冷たい床から立ち上がる。顔の前にたれてくる髪は白色に戻っていた。

 私は伸びをする。あー、いやな夢。あれはいやな夢だったんだ。感情移入しすぎた。


「起きて、ティア」


 私はティアを揺さぶる。おっと、現実では、初対面だ。


「きゃっ!」

「ぎゃあっ!」


 ティアの驚いた声にもっと驚く私。夢の中であげられなかった叫び声をあげる。

 ついでに飛び上がってしりもちをつく。かっこ悪っ!


「痛ってぇ!ケツ割れた!」


 あ、言葉も元の言葉に戻ってる。


「あれっ!動けない!まさかかなしばり!?これがうわさの・・・っ!」

「いや違う」


 天然かな?私はこの子を拘束しているベルトを外す。その女の子は薄手の制服を着ていた。夢同じだ。


「だあれ?あなた?」


 なんだろう。この言葉、私が今の今までしゃべってた言葉じゃない。でも、わかるってことは、死神さんがしゃべられるようにしてくれた言語だな。


「ルナだ」


 とりあえず答える。あっやべっ本名はまずいか?夢で会ったってばれる?

 

「んぅ、わたしはね、ティアだよ」


 どうやら問題なかったらしい。まあ、ばれても別に良かったからな。

 ティアは、相変わらず優しい口調で言った。


「かわいい名前だね、ルナちゃんって」


 うっ、かわいい。そんなふわってほほえむなよ。ドキッてするじゃん。


「お、おおう・・・」

「んふっところで・・・」


 おい、笑ったろ。今笑ったろ!突っ込みいれる隙をくれ!話変えんなよっ。


「ここってどこ?」


 いや、知るか。

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