私のある日#■■(2021,7,26修正)
頑張って書き続けようと思います。ぜひ、見てってください。
ああ、くそ。 まただ。また駄目だった。また、やり直しだ。
まさか、こんな雑魚みたいな――――死ぬのか?私は。
俺でも、こうなることはもっと早く気づけたはずだったのに。
あいつ。
そもそもあいつさえ居なければ、存在しなければ、僕達はあの世界で安寧に暮らしていたのだ。
当然のように平和があり、生命の心配が無く、温かい食事があって、そして家族がいる。そんな、平和な世界で生まれたんだ。私達にもその幸福は享受されても――――
否。これは、わたくしの運命だ。それにもう、すでに、逃れられない。
そう。これはすでに、私自身が受け入れた、紛れもない世界ではないか。私の選択で、たくさんの運命が変わる。
我輩は、この運命を幸福なものに正したいのだ。
私様の意思で、私様は終われない。
ああ、何度目だろう。私が眠りにつくのは。
◆ ◆ ◆ ◆
「・・・眠くなるな」
ルナが言った。これからの話と睡眠を天秤にかけ、早くも睡眠に傾きかけている。彼女は睡眠欲には勝てない。もっと言うと食欲にも勝てない。
「なぜ」
眠い理由はわかっているが素っ気なくその理由を聞くカイル。付き合いの長い相方に対しては、慣れもあるのか、冷たい態度だ。
だが、振られた話を返すだけまだ他とは違う扱いをしているのだろう。
「考えることとか、わからないところが多すぎてよぉ。もう無理だべ、諦めるべ?」
「時系列ごとに順序だてて考えてみればいいのではないか?」
「紙とペンあるよ」
兄のアズは、早々に諦めようとするルナにアドバイスを出す。
カイルは、アズがルナにアドバイスを出す前に、すでにティアがメモ帳とペンを手に持っていたことに身震いした。
カイルは、『わたし書記ね』とペンを持つティアを見ながら、妹は兄の心も読めるのか。と、一人っ子ゆえのいささか的はずれな結論を出す。
「いやぁ、Thank you so much ! その手があったか!」
(いや、考えれば思いつかないか?)
頭が残念な相方に心の中でツッコミをいれるカイル。口で言ったらなにされるかわかったもんじゃない。
「じゃあ、私から話すぜ・・・」
「ああ、だが、出来るだけ事細かに頼む。その時の心情とか、あの死神モドキのことも。あとあの爆弾狂の発言」
(ここだけ口出すのかよ。変わんねぇなぁ)
必要最低限の会話。無駄が無さ過ぎて清々しい。と、ルナはそう思う。
「うざい」、「うるさい」、「黙れ」と会話の拒絶を表す三段活用を、心の無い相方に言われ続けていたルナにとって、これくらいはあまり気にならない事だった。
へいへい。と、手をひらひらとふって軽く承諾の意を表し、
「っと、そういや、記憶が一部飛んでいる部分があるんだが・・・」
「わたしが覚えているから大丈夫だよ」
すかさず答えるティア。
実は彼女の脳内では、ベートーベンの『運命』のような音楽を奏でている音楽隊が、グラウンドを行進しながら彼女に近づいて来ていた。だが、この場にいる誰も気づかない。
「おっ!頼むぜ!!じゃあ確か、あの日、私は・・・」
たいして無い脳をフル回転させて、ルナは思い出す。
◆ ◆ ◆ ◆
「オッハヨォォォゴザイマァァァァス!!!」
私は、ガンガンガン!と、フライ返しが折れるんじゃないかというほどの強さでフライパンを打つ。
まもなく、三びきのでかいオスの芋虫がモソモソと動く。
「とっとと脱皮しろ!さもないと朝メシがかわいそうなことになるぞ!」
かわいそうなこと。つまり、芋虫、もとい、私のおにいちゃんたちの朝ご飯がスクランブルエッグだけになことだ。
かわいそうに、おにいちゃんたちは、それしか作ることができない。
「じゅーう、きゅーう、はーち」
一番ちっちゃいおにいちゃんがスマホをつける。
「なーな、ろーく」
私はちっちゃいおにいちゃんの手を目で追った。
右下、四桁の数字を見る。 あ、いけねっ
「五、四、三、二一ぜろ!いってきまーす!!」
私は、えっ!てなっているであろう、おにいちゃんたちをしり目に走る。
食パンをくわえて走る。
「やはいやはい!(ヤバいヤバい!)」
あのクソ芋虫どもに付き合ってる場合じゃなかった!!
玄関でバックを背負ってフライパンとフライ返しを放り投げる。
ヤバいよー、ヤバいよー。リーダー、めっちゃ怖いんだよー。私とひとつ上の学年でしかないのに30㎝以上背が高いんだよー。怒られるぅ。くそぅ、あいつ、演技の脚本全部私に書かせやがって!
焦りで視界が狭くなってくる。あっいけねぇ!
さすがに信号無視はするな。と、私の理性が足をとめた。体が前に倒れそうになる。あっいけねぇ!はそのときのものだ。
時間を無駄にするまい。私は食パンを口におしこむ。思ったより私は空腹だったらしい。優しい甘味が口の中に広がった。うん、何もつけないでも美味しい。
信号が青になる。横断歩道を走り抜け―――――
「あ」
トラックの運転手のうつろな目と正面から目があった。