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7 : 都市伝説のようなモノ

※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件等とは一切関係ありません※

「で、その都市伝説の話をする前に、央城地区連続不審事件って知らない? ちょこちょこネットで話題に上がってる時もあるんだけど……」


「私は聞いたことないかな」


「私も~」


「うーん、確かに知ってたらわざわざそんな事件が起きてるような場所にある大学には来ないか……まぁその央城地区連続不審事件ってのが本当は連続殺人事件なんじゃないかって噂が立って都市伝説化してるんだよね」


 本当に都市伝説なのかそれは? 口ぶりから察するに殺人事件ではないだけで央城地区連続不審事件とかいうのは起こっちゃってるっぽいけど……


「へぇ、『本当は殺人事件なんじゃないか』ってことは実際には殺人事件として扱われてないってこと?」


 とにかく那緒から詳細を聞こう。


「まあそうだね、実際は殺人とは一度も言われてない。ってことでその都市伝説の発端なんだけど、3年前にこの辺で血まみれの浮浪者の死体が見つかってさ、当時は全国的にもニュースになったけど、最終的には近くに落ちていた包丁を使った自殺ってことで落ち着いたし、どのニュース番組もこの事件をそこまで深く掘り下げることは無かった。

 でもその半年くらい後、またこの辺で死体が見つかった。

 しかも同じような浮浪者の死体。でもこれも同じように自殺として処理された。

 そしてこの事件を最後にこの辺で死体が見つかることは無くなって、ニュースに取り上げられるような事件も起きてない……ってことになってる。

 でもその事件の大体5ヶ月後、突然この辺に結構な数の警察が来て、一部の路地が封鎖された。

 アタシは、当時興味本位で警察の人に『何かあったんですか』って聞いたんだ。

 そしたら、『爆弾みたいなものがあるって通報があった』って答えが返ってきて、その時は『ああ、そういうやつか、人が死んでるとかではないんだな』って、ちょっとだけ安心したんだ。

 いやまあ爆弾でも十分物騒だし怖いんだけどさ。

 とくにその事件はニュースに報じられることはなかったから、何かを爆弾と見間違えたかだろうってなって、大した事件じゃなかったんだな~ってことで特にアタシ達も気にしてなかったんだけど、問題はその1ヵ月後! 爆弾騒動は実は殺人だったって噂が出始めたんだよ」


「えっ? でも警察の人は……」


 黙って聞いていた雫ちゃんが聞き返す。


「そ、警察の人は『爆弾みたいなものがあるって通報があった』って言ってた。これはアタシが直接聞いたことだから間違いない。でも、通報者を名乗る人が『人の死体を見つけたから通報した』って主張してるって噂が流れてきたんだ。

 最初は『そう言い始めた人が居る』って情報だけが回ってきて、まあ、誰かのイタズラというか、何か事件とかがあるとそういう噂が流れてくるもんなんだろうなって思って、最初は適当に流してたんだけど、またその5ヶ月だか半年後くらいに同じように警察が大勢この辺をうろついててさ、今度は河川敷の高架下が封鎖されてて、ビニールシートで封鎖されてる場所は見えないようになってた。

 それを見て、今度は人の死体が見つかったんだろうなと思った、と言うかほぼ確信した。

 カマをかけるってわけじゃないけど、また警察の人に聞いてみたんだ、『何かあったんですか』って。

 そしたら、『高架線下に大量に動物の死体があるって通報があったんだ』って言われてさ、でもどう考えても通報内容に対して警察の数が多すぎるから、アタシも疑問に思ったワケ。

 でもその事件もニュースや新聞で報じられることは無くってさ、それからしばらくしたら、案の定『あれは実は人の死体だった』って噂が流れ始めた。そういう事件がまた数ヶ月経った頃に起きて、そういうのがずーっと続いてる。

 ただアタシが1番気になってるのはそのスパンが少しずつ短くなってること。

 最初は一年、次は半年、そこから一ヵ月ずつくらいスパンが短くなってるんだよ、ちなみに直近だと先週、三月の末だね、24日とかそんくらい、で、その前が1月の末」


「え? 最後の事件そんなに直近なの?」


 雫ちゃんがまた聞き返す。


「そ、このままのペースで行けば次の事件は4月の末から5月の半ばくらいだろうって感じだし、アタシも連続殺人じゃないかって考えてるから、一応注意するようにね」


「確かに気味は悪いと思うけど、それだけで連続殺人だって言いきれるかって言われると……」 


 ずっと変な事件が連続してることは確かに気持ち悪いし、那緒が不審がるのも分かるが、これを連続殺人だと言い切るのは早計な気がする。


「あ、そうだ! 片桐くんのお父さんに聞けば何かわかるんじゃない?」


 確かに、雫の言う通り片桐くんの父親は警察官のお偉いさんらしいし、息子の友人が不安がっているとなれば何か教えてくれるかもしれない。


 しかし那緒は首を横に振った。


「いや……一連の事件に不信感を覚えたのは片桐も同じだったみたいで、前に父親に尋ねたことがあったらしいんだけど、何も教えてくれなかったらしくて」


 警察組織のルールに詳しいわけではないし、機密事項とか色々事情があるのかもしれないが、自分の息子に、かつ本当に大した事件でないのなら少しは何か教えてくれそうなものだけれど……


「何か後ろめたいことがあるのか、外部に無闇に話しちゃいけないってルールがあるのかは分からないけれど、何も教えてくれないとなると確かに変な感じするね」


「でしょ? だから一応気を付けた方がいいって」


「分かった、気をつけるよ。

 ……でも那緒は怖くないの? 自分の住んでる場所でそんなことが起きてるのに」


「そりゃ怖いよ、でも……だからこそ事件の全貌が知りたい。アタシだけじゃなく、家族や友達、同じ地区に住んでる大事な人たちが少しでも安心できるように。もちろん蘭や雫にも危険な目には遭って欲しくない」


「……那緒ちゃんがそこまで気負う必要はあるの?」


 ……雫の言う通り、直接事件に巻き込まれたわけでもない那緒がここまで気負う理由がわからない。


「アタシだけじゃないよ、京香も本当は何が起きているのかを突き止めようとしてる。

 この辺で育ってきたアタシたちにはどうしても央城地区連続不審事件が実は連続殺人だってのがただの都市伝説だとは思えない、それに例え本当にただの都市伝説で、殺人なんかなかったとしても、ちゃんとそれが事実だってことを確認しないとこの町で暮らす人たちは安心して暮らせないだろうからさ」


「なるほど……那緒ちゃんは正義感の強いコなんだね」


「そんなんじゃないよ! ただアタシがみんなが安心できないのが嫌なだけだからさ、それにそう思ってるのはさっき言った通りアタシだけじゃないし……本当に正義感が強い人っていうのは京香とか片桐みたいな人たちだよ」


「えっ? 片桐くんは確かにお父さんが警察官だからそういうところもあるかもしれないけど、京香ちゃんはなんで?」


 警察官の息子だから正義感が強いという雫の主張は分かるようで分からない気もするが、京香さんは確かに何故那緒からそういう評価を受けているのか謎だ。


 雫が聞いた後、少し間をおいて那緒はまた話し始めた。


「……大学の裏の方の道を少し行くと、央城交番って交番があるんだけどね、昔、もう10年以上前かな? にそこにいた中宮 徹(なかみや とおる)さんって若い警官の人がいてさ、私や京香はその中宮さんと家が近所だったのもあって、一緒に遊んでもらったり、中宮さんが仕事の時も、外で立ってる時は交番の前でよく話したりしてたんだ」


「……? 小さいころに警官の人とよく一緒にいたから影響されたってこと? でもそれなら那緒ちゃんも……」


「……いや、死んじゃったんだ、中宮さん」


「えっ?」


 思わず声が出て、雫と顔を見合わせる。


「ごめん那緒ちゃん、話しにくい話なら無理にしなくても……」


「いや、大丈夫、もう昔の話だし、アタシより京香の方が辛かっただろうから……京香の前ではこの話はできないけれど、知っておいてほしい話だから」


「そっか……那緒ちゃんがそういうなら……」


「……うん、じゃあ続けるね。

 ある日の朝、急に知らない警官の人が家に来て『この人を見てないか』って言って中宮さんの写真を見せられてさ、アタシは前の日に交番で話したばっかりだったからそのことを伝えたら、『突然連絡がつかなくなって、家にもいないし交番にも来ていない』って言われて、京香の家にも同じように警官が来たらしくて、二人で幼いながらに心配になって、この辺一帯走り回って必死に探してさ……日が傾いたころ、見つかったのは川で浮いてる中宮さんだった。

 アタシは見つけた瞬間叫んで、パニックになってた。京香は叫びこそしなかったけど、パニック状態だっただろうと思う。アタシの叫び声を聞いて来てくれた人たちが通報して、少しして親や警察が来てさ、その日のことはそこからあんまり覚えてないけど、それから何日か経って、中宮さんは自殺だったって報道がされてさ……アタシ達は中宮さんとよく一緒にいたから、間違っても自殺するような人じゃないって知ってたし、どうしても納得できなかった。納得はできなかったけど、アタシはその報道をそのまま受け入れれば、『この町に人殺しなんかいない』ってことになるし、犯人を探そうものなら自分も危険な目に合いかねない、それならそのまま受け入れてしまおうって思っちゃってさ……でも京香は違った、『中宮さんは自分から死ぬような人じゃない! 誰かに殺されたんだ!』って言って……そんな京香を見たらなんか自分が情けなくなっちゃって……アタシは心の底では自分の都合のいい方に逃げてるんだなって分かってさ」


「そんなことないよ、少なくとも今起きてる事件には立ち向かおうとしてる。那緒は逃げてなんかないよ」


「そうだよ! 私と蘭ちゃんにこうやって注意喚起もしてくれてるわけだし!」


「……ありがと。なんかネガティブな感じのこと言っちゃってごめんね! とにかく物騒だから気を付けてねってことで! 終わり! 片付けしよ!」


「あ、うん!」


 皿を持って那緒が立ち上がると同時に、私たちも片付けを始める。

 那緒と雫が皿洗いまでしてくれたから、私はほとんど何もしてないが。

 そんなこんなで片付けが終わった後、3人でテレビを見たりしていると、いつの間にか時計の針は10時を回ろうとしていた。

 ……これは2人ともうちに泊まる流れなのでは?





めっちゃ遅くなってすみませんでした! 今後はこんな感じにならないといいなと思います!




誤字・脱字の報告等積極的にしていただけると幸いです。


Twitter : https://mobile.twitter.com/Hotarubi_tumugi

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