表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

6 : 午後の過ごし方

※この作品はフィクションです。実際の人物、団体等とは一切関係ありません※

「ふぅ……ご馳走様でした! もう動けないくらいお腹いっぱいだよ……」


「それは雫ちゃんが調子に乗って追加で頼むからでしょ」


 雫ちゃんは私達が食べ終わるよりかなり早い段階で一皿目を食べ切り、追加でもう一皿追加したのだ。


「一皿目食べ終わった時はまだ余裕だと思ったんだもん!」


「実際一皿目はアタシたちより圧倒的に食べる速度早かったよね、そんなにお腹空いてたの?」


「いや、お腹空いてたってよりは美味しかったからつい……」


「結構食い意地張ってるんだね雫……」


「うん! 食べるのは大好きだからね! 1日5食は食べないとやっていけないよ!」


「1日5食って、仮に三食に三時のおやつ足したとしても4食だけど……どういうスケジュールで食べてるのよ……」


「朝、昼、おやつ、夕、晩!」


 雫ちゃんは何故か自慢げに胸を張って答えた。


「よく太らないねそれで……」


「まあねー! なんか生まれつきそういう体質っぽい?」


「羨ましいなぁ……」


「羨ましいって言ったって、蘭も全然太ってないじゃんか、むしろ細いくらいじゃない?」


「本当だよ! 身長もどちらかと言えば高い方だし、顔もいいんだから読モとかイケるんじゃない?」


「私はそういうのあんまり興味ないからなぁ」


「読モと言えばさ、蘭ってあの子に似てるよね! あの、北海道出身の……あのー、あの子!」


 那緒がうーんと唸りながらその読モの名前を思い出そうとしていると雫ちゃんが思い付いたように口を開いた。


「あっ! 追川 綾乃(おいかわ あやの)?」


「そう! その子!」


 どうやら合っていたらしい。

 名前を聞いたことはあるがどういう子なのか思い出せない。


「確かに似てるよ! いや、最初に見た時から誰かに似てるな〜とは思ったんだよ! 歳も同じだし、見る人によっちゃあ本人と見間違えるんじゃないの?」


 雫ちゃんがそう言いながらこちらをまじまじと見つめてくる。


「流石に間違われたことはないかなぁ」


「えー? ほんとにー?」


 何だか若干ウザい目線で雫ちゃんはこちらを見てくる。


「そ、そういえばその読モの子って北海道出身なんでしょ? 雫ちゃんも北海道出身だったよね? 実際に会ったことあったりする?」


 否定しても『またまた〜』とか言われる気がしたので話題を逸らす。


「うん! 結構な回数見たことあるよ! なんか家が近くだったっぽいんだよね、高校は違かったけど」


「え? 本当に? 北海道でたまたま近所に住んでましたってかなり凄いんじゃない?」


「まあ、広いからね北海道! 実際奇跡だと思うよ」


「なんかちょっと羨ましいかも、読モの制服姿とか生で見たことあるってことでしょ?」


 那緒が自分のコップに水を注ぎながら雫に向かって言う。


「まあね〜!」


 雫ちゃんはまたも自慢げに返す。


「あんま長居しても良くないし、そろそろ出よっか」


 注いだ水を一息に飲んで、那緒が言った。

 周りを見ると、いつの間にかお客さんでいっぱいになっていた。


「そうだね」


 私も鞄を手に取り、店を出る準備をする。

 すると雫も荷物を持ってゆっくりと立ち上がる。


「今日はアタシが奢ってしんぜよう!」


 伝票を持って、那緒が胸をポンと叩いて言った。


「ほんと!? 那緒ちゃん大好き!」


 雫ちゃんはそう言って那緒の腕に抱きつく。意外と現金な子である。


「いや、流石に私は出すよ……」


「いやいや! 2人とも昨日は変なことに巻き込まれて大変だったんだしさ! 今日はアタシに出させてよ」


「そんなに気を使ってくれなくても……」


「気づかいというよりはただのアタシのおせっかいだからさ! ほらほら! 財布しまって!」


 財布からお札を出そうとした手を那緒に抑えられ、仕方なくお札を財布に戻す。


「じゃあ、今日はお言葉に甘えて」


「それでいーの!」


 レジカウンターへ行き、呼び鈴を鳴らす。

 すると、30代くらいのちょっと強面でガタイのいい黒髪オールバックの男性店員が出てきた。


「お待たせしました!」


「お会計お願いします」


 那緒はそう言って男性店員に伝票を手渡し、会計を済ませる。


 三人で『ごちそうさまでした』と男性店員に軽く会釈して店を出た。


 店を出てすぐ、那緒が言った。


「まだ1時過ぎだけどどうする? 買い物とかあるなら付き合うけど」


「私は特にないけど……」


「あ! 私まだ買ってない教科書があるから本屋さん行きたい!」


「おっけー! じゃあ本屋行こっか! 蘭も行く?」


「うん、私も付き合うよ」


「よし! 近くに本屋さんあるから、とりあえずそこで探そっか」


 そう言って歩き出す那緒についていく。


「そういえば、二人とも徒歩通学だよね? 大学の近くに住んでるの?」


 那緒が歩きながら私たちに尋ねる。


「そうだよ! 蘭ちゃんも私も大学の近く! 那緒ちゃんも大学の近くに住んでるの?」


「いや、アタシは電車通学。、3つ隣の駅から乗ってきてるんだ」


「えっ! 電車通学だったの那緒ちゃん!」


「そ、まあ買い物とかは基本こっちの方でするからこっちにいることの方が多いけどね……ってかさ、2人とも一人暮らしでしょ? ちゃんと食べてる?」


「私はちゃんと毎日自炊してるよ! 料理は元々好きだし!」


 雫ちゃんが先に答える。雫ちゃん料理できるんだ……全然家庭的なイメージ無かったな……


「私はこっち来てからはずっとコンビニ弁当とカップ麺ばっかりだなぁ……洗い物がめんどくさくて」


 こっちに来てから箸とコップ以外の食器類を洗った記憶が無い。というか箸とコップだけですら洗うのが少し面倒と感じる。


「ダメだよ蘭ちゃん! 年頃の女の子なんだからちゃんと食べないと!」


「そうだよ蘭、1人暮らし初っ端からそんな風じゃ体壊すよ?」


「でも面倒なものは面倒だし……」


「面倒ったって……そうだ! 今日はアタシ達が蘭の晩ごはん作ってあげよっか!」


「えっ……」


「いいね! それ! それじゃスーパーにも行かなきゃね!」


「ちょ、ちょっと!」


 私抜きでどんどん話が進む。


「何? 散らかってるから部屋入れたくないとか、そういうのはナシだからね!」


「いや、そうじゃなくて……私、料理出来ないから……何も手伝えないよ……?」


「そんなこと? 別にアタシらが勝手に作るだけだから気にしなくていいよ」


「そーそー! 蘭ちゃんはキッチンを貸してくれるだけでいいの!」


 これはいくら止めようとしても無駄な感じがする。

 まあ実際問題、私の食生活はこっちに来てからというもの、お世辞にも体にいいものではなかったし、作ってくれるというのならお言葉に甘えさせて貰おう。


「まあ、それならいいけど……」


 私がそう言うと、2人は顔を見合わせて言った。


「よし! じゃあ決まり!」


「それじゃあ早速スーパーにれっつごー!」


「先に雫、あんたの教科書でしょ!」


 那緒がスーパーの方へ行こうとする雫を捕まえて言った。


「そうだった! それじゃあまず本屋さんから!」




 そうして本屋とスーパーで買い物を済ませ、家に帰る頃には夕方になっていた。


「お邪魔しまーす!!」


 というわけで私の家に2人が元気よくお邪魔してくる。


「はい、いらっしゃい。荷物は適当に置いといてくれていいから」


「しっかしまさか調味料から油から、ほとんど何もかも買わなきゃいけないとは……」


 那緒が苦笑いを浮かべる。


「だって本当に料理しないんだから仕方ないでしょ!」


「那緒ちゃん那緒ちゃん! まな板もフライパンもお鍋も包丁も新品だよこれ! すっごい綺麗!」


「そりゃ使ってないからね……一度も……」


「冷蔵庫もほとんど空っぽだね〜!」


「もういいから! 作るなら作って!」


 何だか恥ずかしくなって顔が熱くなる。


「はーい! じゃあ蘭はゆっくり待っててよ」


「本当に何もしなくていいの……?」


「何もしない分食材代全部出したんじゃ無いの?」


 那緒の言う通り、何も協力できないからというのと、自分の家に置いておくからと言う理由で食材代は全部私が出した。まあ当然といえば当然なのだが。


「と言うわけで、蘭はゆっくり待ってなさい!」


 そして、2人は料理の下準備に入る。


 数十分後、キッチンの方からいい匂いがしてきた。


 様子を見に行ってみると、那緒に『もうすぐできるからねー』と、お母さんみたいなことを言われてしまった。


 それから少しして、那緒と雫ちゃんが紙皿に乗った料理を運んできた。


「ほい! というわけで今夜はロールキャベツと野菜炒めです!」


 雫ちゃんが腰に手を当ててドヤっている。


「その二つっておかずとおかずじゃないの? っていうか買い物の時はロールキャベツだけって言ってたよね?」


「細かいことは気にしない!」


「まあ、野菜炒めっつってもめちゃめちゃ微妙な量余っちゃった肉とキャベツをオイスターソースで炒めただけだけどね」


 那緒が苦笑いで言った。


「さ! 食べよ食べよ! 私もお腹すいちゃった!」


 割り箸を3膳取り出し、紙コップに買った2リットルペットボトルのお茶を注ぐ。


「いただきます」


 3人でいただきますして食べ始める。


「これは……」


 ロールキャベツを最初に一口食べた雫ちゃんがすごく微妙な顔をしている。

 そんな雫ちゃんを見て、那緒が続いてロールキャベツを食べる。


「うん、こりゃ失敗だね! なんかやたら味薄いし、ぶっちゃけ野菜炒めもどきのが美味しい!」


「レシピ通りなんだけどなぁ……コンソメ少なかったかな? あ、でもケチャップとか付けて食べればマシかも!」


 ケチャップを探そうとする雫に那緒が言った。


「ケチャップ買ったっけ……?」


 カゴに入ってた気もしないし袋に詰めた覚えもないので多分買っていない。


「多分買ってないと思う……」


「うっそ……まぁ、友達と食べるってだけで美味しさにはブーストかかるし、それでプラマイゼロってことで!」


 雫ちゃんはそう言ってまた食べ始める。

 箸が伸びているのはほとんど野菜炒めもどきの方のような気がするが、気のせいだろう。


 そして数十分後、食べ終わって後片付けに入ろうかというときに、那緒が言った。


「そういえばさ、2人ともこっち来たばっかりで知らないと思うんだけど、この辺ちょっと怖い噂……っていうかまあ都市伝説みたいなもんがあるんだよね」


「え? なにそれ?」


 雫ちゃんが不思議そうに言った。

 私も聞いたことがない。まあこっちに来てから1ヶ月も経ってないから当然ではあるが。


「いや、ちょっと帰り遅くなりそうだからさ、帰り道気をつけろよ〜的な意も込めて、2人とも知っておいた方がいいと思うんだ」


「ただの都市伝説でしょ?」


「都市伝説ってことになってるけどガチっぽいんだよね」


 そうして那緒はその都市伝説について話し始めた。






人ん家でロールキャベツと野菜炒めを作るくだり、ほぼ実体験です。

 まあ僕は買い出しの帰りにめっちゃ走ったせいでバテてロクに料理手伝いませんでしたけど。



誤字・脱字の報告等積極的にしていただけると幸いです。


Twitter : https://mobile.twitter.com/Hotarubi_tumugi

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ