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5 : 嫉妬性愛―ゼロフィリア―

※この作品はフィクションです。実際の人物、団体等とは一切関係ありません※

 春さんはきっと不安だろう。

 私の心が松原さんに移っていないか、不安で不安でたまらないだろう。

 不安が続けば人間は悪いほうに物事を考え、ただの杞憂を事実だと思い込むようになる。

 不安は確信へ、友情は嫉妬へ。そこに真実なんて何一つ存在しないのに……


 私が欲しいのはその嫉妬。

 嫉妬は素晴らしい感情だ。相手の想いを確認するのに最も手頃で確実、それでいて人の最も醜い部分を引き出す感情の一つでもある。

 春さんが松原さんに嫉妬すればする程、私は愛されているんだと実感できる。

 私の手を握る力がいつもより少し強い。痛くはないけれど、絶対に離さないという意思を強く感じるほど固く握りしめてくる。

 春さんは松原さんとも付き合いが長いし、友達想いないい人だから、きっと松原さんが本当に私を奪ってしまうなんて思っていないだろう。

 でも私の内側はまだ信じきれていない。私が見せないようにしているから。

 だから少しずつ私の心を探ろうとしてくる。でも私は春さんが私の本心に近づいてくれば近づいてくるだけ距離を取る。

 そうすれば、こんなに優しい春さんも、いつかきっと我慢できなくなって、声を荒げて嫉妬心をむき出しにして、私か松原さんに不安を怒りという形でぶつけてくるだろう。

 私はそれを望んでいる。そうなった時に初めて絶対的な愛を感じられると思うから。


「なぁ京香」


 ずっと無言だった春さんが口を開いた。


「なんですか?」


「京香はさ、俺と一緒にいて楽しい?」


「楽しいですよ、とても」


「そっか」


 春さんの顔は少し曇っているように見える。


「せっかく松原さんが2人にしてくれたんですし、久しぶりの2人きりのデート、楽しみましょう?」


 私は春さんの手を強く握り返した。


「ああ、そうだな……」


 春さんの顔の曇りは少しだけマシになったような気がする。


「……ふふっ」


 あまりにも分かりやすすぎて、少し笑ってしまった。


「どうした?」


「いえ、何でもないです。ただ2人もたまには良いものかもなって思っただけです」


「たまには……か」


「言葉の綾です。そんなに気にしないでください。私はちゃんと春さんと一緒にいられて幸せですから」


「それならいいんだ、俺も京香と一緒にいられるだけで幸せだからさ」


「ふふっ」


 ――本当に、分かりやすい人。






 同時刻、篠宮、水橋、布留谷の3人は目的のカフェに到着。既に注文を済ませ、他愛もない話をしながら料理が届くのを待っていた。


「那緒は京香さんの彼氏の……片桐くん? たちとは遊ばないの?」


「アタシもまぁたまに一緒に遊ぶけど、そんなに高頻度ではないかなぁ」


「じゃあいつもあの3人で一緒にいるの?」


「そうだね、片桐と京香がセットでいるときは基本的にプラスで松原がいる感じかな。そこのプラスがたまーに私になったりするけどさ」


「てことは松原くんと那緒が一緒にいるタイミングはそんなにない感じ?」


「そうなるね」


「なんだか特殊な関係ね」


 3人グループで1人は入れ替わり……あまり見ないし聞かない関係性だ。


「ねぇねぇ、なんで4人では遊ばないの?」


 黙って横で水を飲んでいた雫ちゃんが口を開いた。


「単純にアタシが性格的に松原と合わないからかな、松原もそれは分かってるっぽいし。嫌いとかじゃないんだけどね」


「ふーん……蘭ちゃんの言った通りなんか特殊だねぇ」


「ま、そんなもんよ」


 那緒はそこまで気にしてないっぽいけど、松原くんはどう言う気持ちなんだろうか……


「お待たせいたしました」


 そうこう話していると料理が来た。

 私たちの前にジェノベーゼが並ぶ。


「あれ? もしかして鮎喰さん?」


 那緒が店員さんに話しかける。鮎喰さん……知り合いだろうか?


「え、あ、はい……私は鮎喰ですけど……」


「やっぱり!」


「那緒ちゃん、知り合い?」


 私が聞く前に雫ちゃんが那緒に尋ねた。


「え!? 同じ学科じゃん! 鮎喰 穂乃果(あくい ほのか)ちゃん! 自己紹介してたじゃんか!」


 140cmほどの小さい背丈にグレーアッシュのフワッとしたボブ、そしてとろんとした垂れ目。確かにこんな子クラスにいた気がする。


「えっ! ごめん……昨日はちょっと色々気が気じゃなかったからさ……」


 雫ちゃんはとっさに謝る。


「い、いや、わ、私もまだみんなの事……ちゃんと覚えてないし……気にしないで!」


 やたらとおどおどしながら鮎喰さんが答える。

 自己紹介の時も声が小さかったような気がするし、あまりコミュニケーションが得意な方ではないのだろうか。

 

「っていうか鮎喰さん、バイト何でここ選んだの?」


 妙な間が空いて変な感じになる予感がしたので、私はすぐに適当な話題を鮎喰さんに振る。


「えっと、このお店、私の叔母さんのお店なんです。私がこの大学に来るって言った時に、叔母さんから『大学から近い場所だし、色々お金も必要になるだろうから、バイトするには丁度いいんじゃないか』って勧められて、そのまま……」


「なるほどねぇ……っていうか学校終わって1時間も経ってないけど、学校終わってすぐにバイト直行って大丈夫? 疲れない?」


「確かに、ほんとにアタシたちと終わった時間一緒だよね? ちゃんと大学にはいたし……」


「あ、あんまり接客とかが得意じゃなくって、叔母さんに『ランチタイム前のこのくらいの時間ならお客さんもそんなに多くないから慣れるまではこういう時間にちょっとだけ接客して、お客さんが増えてきたら厨房に回ればいいから』って言われて、それで……」


 なるほど、確かに今は私たちの他にお客さんはいない。ド平日の11時前なんてこんなもんだろう。


「あら? 何だか騒がしいと思ったらお友達?」


 声の方へ目をやると、いつの間にかカウンターテーブルの方にふくよかな女性が立っていた。30代後半くらいだろうか。


「あ、叔母さん……」


 どうやらこの人が鮎喰さんの叔母さんらしい。

 何と言うか、すごく『おせっかいなお母さん』という感じがする。


「あ、すみません! 仕事中なのに話しかけちゃって!」


 那緒がとっさに謝る。


「いやいや、いいのよ。今は他にお客さんもいないし、何より穂乃果ちゃんにこんなに早くお友達が出来て嬉しい限りだわ。

 この子、内気だからちゃんとやっていけるのか不安で不安で仕方なかったのよ。

 でもこんなに明るい感じの友達がいるようで安心したわ。可愛い子ばっかりだし! 穂乃果ちゃんも可愛いし、類は友を呼ぶってこういうことなのかもねぇ」


「叔母さん、色々喋りすぎだから……」


 そう言う鮎喰さんの顔は耳まで赤くなっていた。


「あらやだごめんなさいね」


 当の叔母さんは反省の色ナシと言った感じだ。


「ま、仲良くしてやってね」


 そう言って叔母さんは上機嫌で厨房へと戻っていった。


「わ、私も厨房戻るね……」


「うん! バイトがんばってね穂乃果!」


 そそくさと戻ろうとする鮎喰さんに那緒が声をかける。すると鮎喰さんは軽くこっちに会釈して厨房の方へと足早に帰っていった。


「さ、話し込んじゃったけど、冷めきっちゃう前に食べよ食べよ!」


「そうだね、いただきます」


「いただきまーす!」


 普通にお喋りして、みんなとご飯を食べる。

 昨日の事件のことなんて忘れてしまいそうになるほど楽しい時間。

 このまま普通の、充実した大学生活が続くといいな。






 あまり後書きでこういうことばかり書くのはアレかもしれませんが、あくまでアマチュアの文章力ですので不自然な箇所等ございましたら遠慮なくご指摘いただけると幸いです。

 評価や感想などもいただけると非常に励みになるので是非よろしくお願いします。


 話は変わりますけど3/5は僕の誕生日なんですよね、これっぽっちも何か評価とか感想が欲しいとかではないんですけどね?


 この作品に関しては、まだ山場らしい山場もなく、風呂敷を広げている段階ですが、今後ともよろしくお願いいたします。

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