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3 : 2日目

 入学2日目の朝。

 今日は雫ちゃんと一緒に学校へ向かう。

 昨日携帯で送ってもらった住所のアパートへと赴き、雫ちゃんの部屋のピンポンを鳴らす。


 扉がガチャリと音を立てて開くと同時に、眠そうな目をこすりながら雫ちゃんが出てきた。


「おはよう」


「ん……おはよ……」


 低くかすれた声。よほど眠いんだろう。

 昨日寝たのってそんな遅い時間じゃなかったはずだけど……朝が弱いのだろうか。

 身支度は済ませているようだし、起きてから少し時間はたってるっぽいけど……


「行こっか」


 雫ちゃんもだるそうに出てくる。


「雫ちゃん、朝弱いんだね」


「うん……昔からなんだ~」


 ぽけーっとした顔で雫ちゃんが言った。


「そうなんだ」


「うん、しばらくすればいつもの調子に戻るんだけど、今日はちょっと起きるの遅くてね……まだ起きて30分くらいしか経ってない……」


 そう言って大きなあくびをする雫ちゃん。


 そんな雫ちゃんの手を引いて、とりとめのない話をしながら学校へ向かう。


 講堂に着く頃には、寝ぼけていた雫ちゃんもすっかり目が覚めたようだった。


 少し早く着いてしまったので、講堂内の休憩スペースで2人で話していると、学生であろう2人の女性がこちらへと歩いてきた。


「あ! 君たちだよね! 昨日の事件の!」


 2人の生徒のうち、少し焼けた肌のギャルっぽい金髪ベリーショートの生徒が私たちに話しかけてくる。


「昨日のって……もう情報が出てるんですか?」


 私より先に雫ちゃんが聞き返す。


「いや、アタシらは昨日たまたま現場に遭遇しただけ、とは言っても、犯人が取り押さえられてたタイミングだったけどね」


「あー……なるほど……」


「なんか人が集まってると思って見に行ったら中心にいるのが同じクラスの子だったからびっくりしちゃったよ!

 あ、そうだ、急に話しかけちゃって驚かせちゃったよね!

 アタシは 布留谷 那緒(ふるや なお)!那緒でいいよ! んでこっちの何も喋ってない大人しい美人が 三田 京香(さんだ きょうか)! 無口な子だけど、悪い子じゃないから仲良くしてあげてね!」


 那緒がそう言うと、三田 京香と言うらしい育ちの良さそうな黒髪ボブの女の子が頭を軽く下げた。


「うん、よろしく。私は篠宮 蘭、好きに呼んでくれていいよ」


「私は水橋 雫! 雫でいいよ!」


 私たちも自己紹介を済ます。


「蘭と雫ね! よろしく!」


 そんなやりとりをしていると、いつの間にやらオリエンテーションの時間が近づいてきた。


「おっ、そろそろ行かないとヤバいかもね! みんなで行こ行こ!」


 そう言って那緒は1人で走って行った。


「みんなでって……1人で行っちゃったよ……」


 雫ちゃんが苦笑いする。


「那緒ちゃんはいつもあんな感じですから気にしないで大丈夫ですよ。

 多分誰もいないのに気付けば戻ってくると思いますし、私達も向かっていれば途中で合流できますよ」


 京香さんが上品に笑いながら言った。

 

「それじゃあ私たちも行きましょうか」


 私はそう言って立ち上がると、一緒に雫ちゃんも立ち上がり、京香さんと3人でオリエンテーションの会場へと歩き出す。


 中身の無い長話と履修登録だなんだの説明で私たちの貴重な2時間が奪われた後、雫ちゃんと会場を出るとまた那緒が話しかけて来た。


「ね! このあと2人とも暇? もし暇なら3人でご飯行かない?」


「私はいいけど……」


 まあ別に断る理由も無いしなぁと返事を返す。


「私もいいよ! でも、3人って、京香ちゃんはいないの?」


 雫ちゃんが答えると共に聞き返す。

 確かに、今朝と違って京香さんの姿は見当たらないし、3人でってことは京香さんは何か用事でもあるのだろうか。


「あー、京香はこの後彼氏とどっか出掛けるらしくてさ」


「京香ちゃん彼氏いるんだ! まあ美人だもんね!」


「そ、しかもイケメンの彼氏がね! あ、ほら丁度そこにいる……」


 そう那緒が指差した先には、京香さんと歩く2人の男性がいた。


 片方は特に個性のない黒髪の男性、もう片方は金髪だが大人びた雰囲気の絵に描いたようなイケメン……

 そして京香さんは黒髪の方の男性と楽しそうに話している。


「ねぇ、一応聞くけど、イケメンの方が京香さんの彼氏なんだよね?」


「うん、金髪の方が京香の彼氏の片桐 春(かたぎり はる) で、黒髪のはその片桐の幼馴染の松原 翔(まつばら しょう)

 

「何で京香さんは彼氏そっちのけでその松原くんと話してるの?」


「んー、前にアタシも同じこと聞いたんだけど、京香曰く、片桐は自分には勿体無いくらいのイケメンだから緊張しちゃって、3人以上いるとどうしても他の人とばっかり喋っちゃうって言ってたよ」


「ん? その感じだと告白したのは京香ちゃんじゃなくて片桐くん?」


 無言でリアクションだけをしていた雫ちゃんが口を開いた。


「そ、片桐からの告白だよ」


「いいなぁ〜! 私もあんなイケメンに迫られてみたいもんだよ……」


「雫ちゃん、昨日あんな目遭ったばっかなのに男性恐怖症とかになってないの凄いメンタルだね……」


「相手がイケメンなら別でしょ! 刃物とか持ち出されるのは勘弁だけどね! っていうか昨日の被害者は私ってより蘭ちゃんの方でしょ?」

 

 本当にどういうメンタルしてるんだ……長い間ストーカーされてるとなると普通男性恐怖症とかになりそうなもんだけど。

 まあ確かに殺されかけたのは私の方だし、私も自分でよくもまぁ正気でいられるなぁとは思うけど。


「ま、万が一そんなヤバいのに狙われても片桐と一緒なら安心だけどね! 父親は警察のお偉いさんらしいし、片桐自身も合気道とかかじってるらしいよ?」


「そんな頼りがいのある王子様がいるとは京香ちゃんもなかなかやりますな〜! ところで那緒ちゃんは彼氏いないの?」


「アタシはいないよ?」


「え、意外! 結構遊んでそうなのに……」


 一応今日初めて話した相手のはずなんだけど、結構言うな雫ちゃん……


「それしょっちゅう言われるんだけど、アタシこれでも高校では成績トップだったんだからね? そりゃ遊んでこなかったワケじゃないけどさ、彼氏とかは居たことないよ」


「作らないの? 彼氏」


「うーん、なんて言うかめんどくさいなーって思ってさ、アタシはただ友達と一緒に楽しくやってればそれでいいかなって」


「なるほど〜」


「2人はどうなの? 彼氏とかさ」


「私も蘭ちゃんも居ないよ〜?」


「気になる人は? ほら、昨日ストーカー取り押さえてた男の人とかさ! さっきキャンパス内で見たし、救世主が同じ大学なんて運命じゃない? めっちゃイケメンって訳ではないけどいい人そうだし」


「いや〜私結構面食いだからな〜! まず顔は高水準じゃなきゃ!」


「私はそもそも恋愛に興味がない派だからなぁ」


「なんじゃそりゃ! っていうか早くご飯行こご飯! アタシもお腹すいちゃったし、話の続きはお店でゆーっくりしよ!」


「そうだね! 私もお腹すいちゃった! どこ行くかは決めてるの?」


「アタシに任せなさい! 近くに超美味いジェノベーゼで有名なカフェがあるからさ!」


「えっ! ジェノベーゼ!?」


「どうしたの蘭ちゃん? ジェノベーゼ好きなの?」


「パスタ全般好きなんだけど、ジェノベーゼが一番好きなんだ、私」


「そっかそっか! じゃあ決まりだね! 早速行こ!」


 そう言って那緒が歩き出す。


「……ジェノベーゼ……楽しみだなぁ……」






年内更新できたのでなろう用にTwitterアカウントを作りました。


https://twitter.com/hotarubi_tumugi?s=21


更新のお知らせとかがメインになると思いますが、たまに日常ツイもするかもしれません。

質問箱も設置してあるので、誤字脱字指摘やアドバイスを匿名で送りたい!って方なんかはそっちに投げていただいても大丈夫です。


それでは皆様、良いお年を。

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