入試試験
入学試験当日。彼方は【軍】のパーティーメンバーと軍本部に来ていた。
「俺達は現在軍に所属していて国籍も軍のものだから入試は軍本部であるってさ。まあ、実際は俺らの力で学校が壊れないか心配なんだろうけど」
【学院】の入試はそれぞれの国にある学院付属学校で行われる。中等部から成績のいい結果を残しているものには推薦枠もあるがそんなものを取れる人は滅多にいない。
「なるほどね。まあ、確かに僕らの力だと学校ごと破壊してしまうかもしれないしね。」
赤い髪に赤眼の少年、閏真一は笑ってそう答えた。身長はそれ程高くなく一般的に可愛い顔と言われそうな見た目だがどこか威圧感のようなものを感じる。
「私なんかがこっちのグループで良かったんでしょうか?」
金髪に碧眼の少女、睦月美冬は心配そうに言う。誰がどう見ても美少女と言えるその見た目は一種の芸術作のようだ。
彼方たちは今回二つのグループに別れて入試を受ける。13人もいる為時間がかかるからだ。そして彼方達のグループは力が強いもののグループで美冬はその事を気にしていたのだ。
「何言ってんだよ。軍序列4位の美冬がここにいちゃダメならこのグループにいていいのは彼方と真一だけだぞ?俺だって軍序列5位だ。4位がそんなに自信ないならこっちも自信なくしちまうだろ。もっと自信持てよ。」
蒼髪に蒼眼の少年、葉月蒼介は嘲笑ぎみにそう言った。細身だが高身長で威圧感はとてもある。
「まあ、謙虚なのはいい事さ。でも蒼介も言うように自信もっていいと思うよ!」
茶髪に黒目の少年、弥生和人は人の良さそうな笑顔でそう言った。彼ははとにかくイケメンで【軍】の中でも大人気だった。外見から滲み出るほど優しい性格でそれも人気の後押しをしている要因の一つだ。
「ごめん遅れた。寝坊しちゃって」
黒目黒髪の少年、水無月優翔はアホ毛を付けて走って来ていた。とても軍人とは思えない程ダラけた顔をしている。
「これで全員揃ったね。それじゃ行こうか」
真一が全員揃ったのを確認すると本部の中に入っていった。
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「今回の入試監督を務めるイリーナです。よろしくお願いします」
教卓の前に立つお姉さんはイリーナと言うらしい。ピシッとした姿勢で立つその姿は長い間、訓練されているのが一目で分かる。
「入試試験に着いては既に知らされていると思いますが改めて説明させていただきます。」
「まずは筆記試験を行います。数学、魔法学、歴史、兵学、武学の5教科の平均点が筆記試験の点数となります。制限時間は各教科1時間で間に10分の休憩を挟みます。ここまででなにか質問は?」
イリーナはまわりを見渡し挙手をしているものがいないと判断すると説明を再開した。
「いないようですので次の実技試験について説明させていただきます。知っての通り【学院】は魔法科、武術科、普通科の3つのコースがあります。ここにいる6名は全員普通科希望ですので普通科の試験のみ説明させていただきます。」
「普通科は魔法と武術の両方を見させていただきます。魔法の実技試験では的がありますのでそれに攻撃魔法をあてていただきます。その的の欠損具合で点数をつけることになります。当たらなかった場合は0点となりますのでお気をつけください」
真一が手を挙げた。質問があるらしい。
「魔法が的に当たらず別の場所にあたりその爆風等で的が欠損した場合、点数はつきますか?」
真面目な真一らしい質問だ。こういう細かい所まで確認しておくのは後々有利になることが多い。
「はい。その場合も点数はつきます。」
「ありがとうございます。」
真一は笑顔でお礼を言うと静かに着席した。
「他に質問はございませんか?、、、ないようですので説明を続けさせていただきます。魔法の試験が終わったら次は武術の試験です。軍総司令官のダグラス様と模擬戦を行います。点数はダグラス様がおつけになります。模擬戦で勝利した場合は満点ですので勝利できるように頑張ってください。」
ダグラスに勝てば満点らしい。これは勝つしかないな。
「なお、武術の試験中は身体強化魔法以外の一切の魔法を禁止します。また、能力のしようも禁止します。筆記試験と武術試験の合計点数が180点以上のものが合格となります。」
能力の使用は禁止か。気をつけないとな。
この世界には魔法と武術以外に能力というものが存在する。殆どが先天性で能力持ちは【軍】の中でも10数人しかいない。使用するとペナルティがある能力もあるが殆どノーリスクで強い力が手に入るので能力持ちは重宝されている。
「では、早速筆記試験を開始致します。まずは数学から。では、、、始め!」
入学試験が始まった。
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「筆記試験難しすぎじゃない?」
「お前が勉強してなかっただけだろ」
入学試験が終わり彼方達は帰路に就いていた。優翔と蒼介が筆記試験についての感想を述べあっている。どうやら優翔はあんまり出来がよくなかったらしい。
入試の結果が出るのは明後日だ。それぞれの家に封筒が配達されその中に合格したかしてないかが書かれた紙が入っている。
「彼方と真一はまあ、大丈夫だろ。美冬も大丈夫だとして、和人はどうだった?」
「多分大丈夫だと思うよ〜」
「脳天気だな相変わらず。」
そんな他愛もない話をしている時だった。
前方の森からおぞましい獣の咆哮が聞こえてきた。
「この声は、、グレーターベアだ。しかも戦闘中だな」
真一が魔獣に分類されるグレーターベアだと言う。グレーターベアはAランクに相当する魔獣で軍序列2桁以上ないと命を落としかねないほど危険な生き物だ。もし一般人が遭遇していたら救出に向かわなければならない。
「行ってみよう」
彼方達はグレーターベアがいると思われる場所へ向かった。